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「人は金で性格が変わる!」のまとめ


 

「金持ちは性格が悪い!」みたいなイメージがあったり、「人間は金で性格が変わる!」みたいなイメージがありますが、データではどんな傾向が確認されているのかをまとめるエントリです。なんで急にこんなことを書いているのかというと、たんにいま執筆してる本のために情報を集めてたら、金と性格に関するデータが集まったからというだけの理由です(でも、たぶん本には使わないので、ここで放出する)。

 

 

 

1. 金のことを考えると、我々は人を助けなくなるし、自分でも助けを求めなくなる

イェール大学経営大学院の研究(R)では、参加者を「お金を連想させるもの」が置かれた部屋に入るように指示(モノポリーのお金とか、お金に関する文章など)。そのうえで、みんなに難しいタスクを与えたところ、

 

  • 金を連想させた部屋に入った人は、できるだけ1人で作業を終わらせようとした(金を連想させなかったグループは、すぐに他人に助けを求めた)。

 

  • 金を連想させた部屋に入った人は、無関係な人が物を落としても、助けようとしなかった。

 

って結果だったそうな。どうに人間ってのは、お金のことを考えると自立心が高まり、そのせいで他人を助けようとする気力がなくなるのかもですな。

 

 

 

 

2. 金持ちになると共感力が下がる

カリフォルニア大学などの研究(R)では、参加者に「自分がどれぐらい金持ちか? 社会で尊敬されているか?を考えてねー」と指示。その後、みんなに架空の就職面接に参加してもらったところ、

 

  • 「自分は貧しいし尊敬もされてないし……」と答えた人は、「俺は金持ちだし社会のステータスも高いぜ!」と答えた人よりも、インタビュー相手の感情をより正確に判断することができた。

 

って結果だったそうな。もちろん、金持ち&ハイステータスグループが、なんにも相手の気持ちがわからないってわけじゃないものの、確実に他人の感情を読み取り、共感するのが下手だったそうな。

 

では、なんで金持ち&ハイステータスで共感力が下がるのかと言うと、おそらく次に取り上げる3つ目の変化が関わっているのかもしれません。

 

 

 

 

3.金持ちになるとナルシストになる

アリゾナ州立大学などの研究(R)では、みんなに「自分のことをどれぐらい裕福だと思います?」と尋ね、これを「平均以上効果」と比べたんだそうな。平均以上効果ってのは有名な認知のゆがみのひとつで、実際の能力やスキルとは関係なく「俺は平均よりは上でしょ!」と感じる心理を意味しております。

 

でもって、分析の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 自分は金持ちだ!と思っている人ほど自己愛が強く、自分は平均的な人よりも能力があり、スキルがある!と考えがちだった。

 

  • 客観的な所得や学歴は平均以上効果とは無関係で、とにかく自分で自分のことを金持ちだと思っているかどうかが重要だった。

 

だったそうな。実際にはそこまで金がなくても、自分で「俺は周りより裕福だ!」と思っている人は、それにつられて自分の能力やスキルも高いと思いこむ傾向があるわけですね。

 

こう考えると、やはり人間ってのは、金を持つと「俺は能力者だ!」って気持ちが強くなり、それゆえに他人の気持ちに気を払わなくてもよい感覚になるのかもですねー。

 

 

 

 

4.金持ちは傲慢さが上がる

カリフォルニア大学の調査(R)では、サンフランシスコでドライバーの動きを観察したところ、

 

  • BMWのような高級車のドライバーは、安価な車のドライバーに比べて、いったん横断歩道で停止して歩行者に道を譲る傾向が4倍も低かった。
  • それと同時に、高級車のドライバーほど、他のドライバーに割り込む可能性も高かった。

 

って結果だったそうな。この結果をもとに研究チームは「富の象徴を持った人は、自分が上流階級にいると認識し、非倫理的な行動をとる傾向がある」と指摘しておられます。これもおそらく上記の「平均以上効果」から生まれる現象かもですね。

 

ちなみに、この研究チームは、金持ちが取った行動を「自己利益最大化」と名付けております。要するに、お金持ちな人ほど「自分にとって何が得なのか?」をベースにしてものごとを考えるため、上記のようや行動が結びつくわけですな。

 

もっとも、ここで研究チームは、このような自己利益最大化の傾向が強い人は、「契約や仕事から最大の利益を得るために最も努力することが多いので、優れたビジネスリーダーになりやすい」とも指摘してますんで、そこらへんは痛し痒しってとこでしょう。

 

 

 

 

雑感

ってことで、ざっくり「人は金で変わる」問題を見てみましたが、全体的には「ナルシシズムによる共感力の低下」が、いくつかの変化につながってる印象ですかね。このような変化が起きるのは、たんに「金を持ったから人を見下すようになる」って話ではなくて、

 

  • お金を持つと、ある程度まで自分の環境を自分でコントロールできるため、他人に依存せずに自分の目標に集中することができる。そのため、「共感性」や「思いやり」の能力が下がる。

 

  • 逆に、お金がないと、自分の環境を自分でコントロールしづらいため、自分のニーズを満たすために他人と依存し合わなければならなくなる。そのため、「共感性」や「思いやり」の能力が伸びる。

 

みたいなことだと考えられております。「使わない能力は低下する」ってのは世の常ですが、この法則が共感力においても発動してるってことなんでしょうなぁ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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