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脳を若く保つのに役立つ3大栄養素はこれだ!みたいな系統的レビューの話



年齢を重ねれば脳の機能が下がるのは当たり前。とはいえ、昔に比べれば「認知症は避けられない老化の一部!」って考え方にも変化が生まれてまして、多くの科学者は認知症の約40%が予防可能だと考えてたりします。以前に考えられていた「避けられない脳の低下」は、実際には、その多くがライフスタイルリスクの改善でリスクを下げられるって話になってきたんですよね。

 

ってことで、近ごろ出た系統的レビュー(R)では、「脳機能を保つのに役立つ栄養ってどんな感じ?」って疑問に焦点を当てて、脳機能の低下を防いでくれそうな栄養をまとめてくれていて良い感じでした。

 

このレビューは、過去20年間に実施された33の研究をピックアップし、65歳以上の高齢者には「どんな栄養素が大事なのか?」ってあたりをチェックしたものです。そこでどんな知見が得られたというと、だいたいこんな感じになります。

 

  • 脳の改善効果が期待できる栄養素

    • ビタミンD:抗炎症作用や血液脳関門(BBB)の保護効果が報告されている。

    • プロバイオティクス:「腸脳軸」を通じて腸内環境が脳に影響を与え、認知機能を改善する可能性がある。

    • PUFAs(特にオメガ3脂肪酸):神経細胞の構造維持に必須で、認知機能低下リスクの軽減が示唆されています。

 

  • 脳の改善効果が限定的だと思われる栄養素

    • ビタミンA、C、E(抗酸化物質):酸化ストレス軽減が期待されたが、明確なエビデンスは不足している。

    • ビタミンB群:脳の萎縮を抑える可能性がある一方で、効果は個人差が大きく、特にオメガ3脂肪酸との併用が鍵になることが示されている。

 

ということで、脳を守りたいならビタミンD!プロバイオティクス!オメガ3!って結論ですね。今までも似たような傾向は報告されてましたが、あらためて精度が高い知見が出てきたのが良いですねー。

 

これらの栄養素が脳に良い理由をもうちょい掘り下げておくと、だいたい以下のようなデータが根拠になっております。

 

 

ビタミンD:脳を守る多機能ビタミン

ビタミンDの効果として注目されているのが、炎症を抑える作用や血液脳関門(BBB)の保護。アルツハイマー病をはじめとする認知症の発症には、酸化ストレスや慢性炎症が深く関わっているんですが、ビタミンDがこれらを抑制して、脳の健康を保つ可能性が示されているんですな。

 

レビューでは、ビタミンDに関する複数の研究を取り上げていて、特に注目すべきポイントはこんな感じでしょう。

 

  • 軽度認知障害(MCI)のある高齢者に800IUのビタミンD3を12か月間投与した結果、認知機能の改善が確認された。
  • アルツハイマー病患者では、アミロイドβ関連の酸化ストレスを減少させる効果が見られた。

 

ただし、ビタミンDの効果は投与量や個人の基礎疾患によって大きく異なっていて、ある研究では25(OH)D濃度が低い高齢者にビタミンDサプリを飲んでもらったら認知症リスクが低下した一方、十分な濃度がある場合では追加の効果は見られなかったそうな。なので、ビタミンDを使うときは、血中濃度を測定しないと意味がなさそうっすね。

 

 

プロバイオティクス:腸内環境が脳を変える?

「腸は第二の脳」なんて言うように、腸内環境と脳の健康に密接な関係があるのは有名な話。いわゆる「腸脳軸」ってやつで、腸内細菌が生成する代謝物が神経炎症を抑えたり、神経伝達物質の生成を促したりすることがわかっているんですな。

 

その点で、プロバイオティクスが脳に効くかもしれないのは当然で、具体例として以下の研究が挙げられておりました。

 

  • B. breve A1菌株を16週間投与した研究では、軽度認知障害を抱える高齢者の記憶力が改善している。B. breve A1ってのは、森永の記憶対策サプリとかに入ってるやつ。

  • 複数の菌株を含むプロバイオティクスを12週間摂取したグループも、脳灰白質の萎縮を抑える効果が観察された。

 

こちらもなかなか良い傾向が見られてまして、個人的にもプロバイオティクスは使っていこうとあらためて思いました。ただし、今のところ、使用する菌株の種類や投与期間によって効果にばらつきがありすぎるので、ここらへんは課題っすね(私はとりあえずビフィズス菌と乳酸菌を飲むぐらいにしてますが)。

 

 

PUFAs(多価不飽和脂肪酸):脳細胞の守護者

PUFAsの中でも、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は脳の健康に欠かせない成分。これらは神経細胞膜の主な素材なので、炎症を抑えたり、神経伝達を助けたりする役割を果たしてくれるんですよ。

 

レビューによると、PUFAsの摂取が認知機能低下リスクの軽減に効果的であることが示されてまして、特に以下の結果が報告されております。

 

  • 血中DHA濃度が高い被験者では、脳の萎縮率が約30%低下した。
  • 長期的な観察研究では、魚由来のDHAとEPAを多く摂取している高齢者で、認知症リスクが顕著に低下することが確認された。

 

ってことで、研究チームは、サプリメントだけでなく青魚やクルミなどの食品からオメガ3脂肪酸を摂取するように推奨しております。これも重要なポイントですなぁ。

 

 

ってことで、上記の研究を踏まえると、脳を保護するためには以下のガイドラインを守ってみるといいんじゃないでしょうか。

 

  • ビタミンDを適切に補給する:血中25(OH)D濃度が低い場合、1000〜3000IU/日の補給が目安。日光浴も効果的。

 

 

  • PUFAsを食品とサプリメントから摂取する:DHAとEPAを多く含む青魚(サバ、サケなど)を週2回以上食べる。サプリメントを使用する場合は1日1g程度を目安にする。

 

もちろん、これらを単独で摂取するだけじゃ十分ではないので、運動や睡眠の改善を行いつつサプリもお試しいただければと。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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