長寿の秘訣は“人生の目的”にあり!みたいな研究の話
「長生きしたいなら、“満足できる人生”より“目的のある人生”を求めよ!」みたいな研究(R)がおもしろかったので、内容をメモっておきます。
これはフィンランド・アールト大学などの研究で、まずは大きな結論から言ってしまえば、
- 「人生の目的」と「人生の満足感」の違いが、私たちの寿命にまで影響を与える!
みたいになります。「人生の目的を持つこと」が「人生の満足感」を上回るほど、長寿において重要だって話でして、これはなかなかグッとくる話ではないかと。
「目的」と「満足感」、寿命にとってどちらが重要?
研究の詳細を見てみましょう。研究チームは、アメリカの大規模な調査データ(MIDUS)を使い、約6,000人の中高年を対象に、健康状態や生活満足度、人生の目的意識、喫煙や飲酒習慣などを含むさまざまな情報を収集。これに加えて、1994~1996年の調査時点から2022年までの生存データを追跡し、「目的」と「満足感」が寿命に与える影響を分析したんだそうな。
「目的」と「満足感」ってのは、それぞれ以下のようなイメージです。
- 人生の目的:人生全体の方向性や目標を示すもので、個人にとっての生きる意味や価値観に基づいている。たとえば、「子どもが健やかに成長するサポートをする」「研究や開発を通じて、世の中を少しでも良くする」「毎年新しいスキルや趣味を習得する」みたいなやつですね。
- 人生の満足:現在の生活や状況に対する感情的な評価を指し、どれだけ幸せや充足感を感じているかを示す。たとえば、「ペットと過ごすリラックスした時間が楽しい」「現在の仕事にやりがいを感じている」「適度な運動や食生活で心身が充実している」みたいなやつですね。
こんな感じで、「目的」が 未来志向で行動や人生の方向性に影響を与えるのに対して、「満足感」は 現在志向で今の状況に対する評価や感情を表しているわけですな。
その結果、だいたいこんなことがわかったんだそうな。
- 「人生の満足感」は、寿命に直接的な影響を与えなかった。モデルによって統計的に有意ではない場合もあり、これは特に健康状態を考慮した場合に顕著だった。
- 一方で、「人生の目的意識」が高い人ほど、長生きする傾向があった。具体的には、「人生の目的」を持つことは、早期死亡リスクを約25%減少させる。
ということで、単に「生活に満足している」だけでは、決して長生きには役立たないのではないか?って推測ができるわけです。昔から人生に何の目的も持たない(というか、目的を持つのが苦手)な私には、ちょっと嫌なデータですなぁ。
一方で、「人生に目的がある」と感じている人は、その感覚自体が健康や寿命を守る力を持つようでして、なんらかの長期目標があるような方には嬉しいニュースじゃないでしょうか。
具体的なデータが示す「目的」の力
さらに深掘りしてみましょう。研究チームは、「人生の満足感」と「目的意識」が寿命に及ぼす影響を、いくつかの観点から分析しておられます。
- 健康状態との関係:調査対象者の中には、喫煙や慢性疾患などのリスクを抱える人もいたが、それでも「人生に目的がある」と答えた人たちは、そうでない人たちに比べて長生きする傾向が強かった。
また、「満足感」は健康状態に左右されやすい傾向もあった。これは当然で、たとえば病気で苦しんでいるときに「今の生活に満足していますか?」と聞かれても、ポジティブな答えを出すのは難しい。一方で、「目的」は健康状態に左右されず持ち続けられる性質があるため、寿命への影響が一貫していると考えられる。 - 年齢や性別による違い:「目的」は、どの年代においても寿命に良い影響を与えていた。ただし、高齢者ほどその恩恵を受けやすい傾向が見られ、これは「目的を持つことが老後の孤独感を軽減し、生活に活力を与える」というメンタルヘルス上の利点が関係しているのかもしれない。
- 能動的な特性:「目的」が「満足感」を上回る理由の一つとして、目的を持つことの「能動性」が挙げられる。研究チームいわく「目的を持つことは、何か意味のある目標に向かって努力する姿勢を生む」とのこと。これが、人生の困難に直面したときに、回復力やストレス耐性を高める効果を持つと考えられる。
ってことで、性別や教育レベル、結婚の有無などでデータを調整しても、「人生の目的」は寿命の強力な予測因子であり続けたらしい。「人生の満足感なんて健康あってのものなんだから、目的のほうが強力なのは当然でしょ!」って考え方は、確かにおっしゃる通りですね。
「目的」を見つけるための具体的な方法
というわけで、アンチエイジングのためにも「人生の目的」は必須のようなんですが、私をふくめて「大きな目的なんて思いつかない!」って方もおりましょう。ただし、先行研究なども見ていると、人生の目的ってのは決して壮大なものである必要はなく、日々の小さな行為から探していくのが基本っぽいんですよね。ざっくり申し上げますと、
- 小さな目標から育てる:目的は日常生活の中で育てることができるケースが多く、たとえば「毎日10分間ストレッチをする」「週末に新しいレシピに挑戦する」など、具体的で達成可能な目標が、やがてドデカいゴールにつながっていくことはよくある。
- とりあえず「他者のため」から考える:「誰かの役に立ちたい!」ってのは人間のモチベーションをブーストさせる最大の要素なので、ここから掘っていくと大きな目的が見つかるケースが多め。「友人や家族、地域社会のために何かできないかねぇ」とか考えてみると、自然と目的が見つかるかもしれない(目的がない私が言うこっちゃないですが)。
みたいになります。いずれにせよ、研究結果からすれば「目的」を持つことで寿命が延びる可能性は高そうなんで、50代を目前にして、あらためてなんか探してみるか……。