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寝る直前の夕食で睡眠が33分減る?夕食は何時間前までに済ませるべきか問題

 

「夕食は寝る3時間前までに終えましょう!」みたいなアドバイスがあります。俗に「寝る直前に食べると太りやすい」とか「夜は血糖値が上がりやすい」などと言われてまして、「夜遅くに食べる人ほど肥満や糖尿病のリスクが高い!」って観察研究もたくさんありますからね。

 

が、実際のところ、夕食の時間をずらすと体にどのような変化が起きるのかは、意外とハッキリしてなかったりするんですよ。なぜならば、夜食のデメリットを示した研究の多くは、夜食が原因なのか、それとも、

 

  • 睡眠時間が短い
  • 食事の質が悪い
  • 運動量が少ない
  • 生活時間が不規則
  • 摂取カロリーが多い

 

といった別の要因が影響しているのかを、切り分けるのが難しいもんですから。

 

そんな状況のなか、新しい研究(R)では、「夕食を寝る1時間前に食べると、5時間前に食べた場合と比べて、睡眠や血糖値はどう変わるのか?」って問題を調べてくれてて参考になりました。

 

これは東京工科大学の健康な若い女性13人を対象にしたランダム化クロスオーバー試験で、参加者の平均年齢は21歳、平均BMIは21ほど。実験では、全員に約700キロカロリーの同じ夕食を食べてもらい、

 

  • 就寝の5時間前に夕食を食べる
  • 就寝の1時間前に夕食を食べる

 

という2つの条件を、それぞれ4日間ずつ体験してもらったんだそうな。いわゆるクロスオーバー試験ってやつでして、このやり方をすると個人差の影響を減らしやすくていいんですよね。

 

さらに研究チームは、

 

  • 脳波による睡眠測定
  • 持続血糖モニターによる血糖測定
  • 翌日の経口ブドウ糖負荷試験

 

などを行ってまして、睡眠をアンケートだけで判断せず、脳波で測っているのは良いところですな。

 

で、結果はどうだったかと言いますと、寝る直前の夕食は、血糖値よりも睡眠に悪影響が出ておりました。どういうことかと言いますと、

 

就寝5時間前の夕食と比べて、就寝1時間前に食べた場合は、

  • 睡眠時間が約33分短くなった
  • 睡眠効率が低下した
  • 夜間の睡眠の乱れが増えた

 

って違いが確認されたんですよ。「食後すぐに寝ると、なんとなく眠りが浅い気がする」という感覚には、それなりの根拠があるのかもしれませんな。

 

一方で、夕食後3時間の血糖値や、翌日に行ったブドウ糖負荷試験の結果には、明確な差が見られなかったのも面白いところ。つまり、この実験の範囲では、「寝る直前に夕食を食べると、ただちに血糖コントロールが大きく悪化する」とまでは言えなかったわけですね。

 

いちおう、このあたりのデータを細かく見ると、遅い夕食を始めた初日には食後血糖が高くなる傾向があったので注意したいところではあります。しかし、この差は3日目と4日目には見られなくなり、遅い夕食の条件でも、初日より後半のほうが食後血糖は低くなってるんですよね。なので、やはり食事時間を遅らせた直後は血糖コントロールが乱れるものの、数日で新しいリズムへの適応が進むんでしょう。

 

この結果について、研究チームは、食事の時間に合わせて「末梢時計」が適応した可能性を考えておられます。どういうことかと言いますと、人間の体内時計には、脳の視交叉上核にある「親時計」と、肝臓や筋肉、脂肪組織などにある「子時計」のようなものがあるんですよ。

 

ここで、親時計は主に光によって調整されるのに対して、子時計は食事のタイミングにも影響されるのがポイント。そのため、いつもより遅い時間に夕食を食べると、最初は体内時計とのズレが起きるものの、数日たつと食事時間に体が適応する可能性があるわけですな。

 

ここで注意したいのは、「遅い時間に食べること」と「自分の体内時計から外れた時間に食べること」が、必ずしも同じじゃないところです。普段から深夜に寝て朝も遅く起きる夜型の人にとっては、夜9時の夕食が特に不自然とは限らないですからねぇ。反対に、早朝に起きる人が夜11時に夕食を食べれば、体内時計とのズレは大きくなるでしょうし。

 

実際、過去の研究でも、睡眠と食事をまとめて遅い時間にずらした場合、最初は食後血糖が上がったものの、数日後には体内時計が新しいスケジュールに適応したと報告されております。また、朝型の人は夜に食べると血糖値が上がりやすかった一方で、夜型の人では朝と夜の差が確認されなかった、という実験もありますからね。なので、「夜8時以降に食べたらアウト!」のように、全員に同じ時刻を当てはめるのは少し乱暴でしょう。

 

なので、私の考え方としましては、ここで問題になってくるのは、食事の時刻そのものよりも、

 

  • 起床時刻は早いのに夕食だけが遅い

  • 平日と休日で食事時間が大きく変わる

  • 夕食の時間が毎日バラバラ

  • 眠る直前まで大量に食べる

 

といった、生活リズムと食事リズムの食い違いなんじゃないかと。

 

ってことで、いろいろ書いてきましたが、結論を言えば、今回の研究だけで「就寝前の食事は絶対にダメ」とは言えない感じっすね。なにしろ参加者は若い女性13人だけだし、過去の介入試験では、夕食の時間を遅らせても睡眠に明確な悪影響が出なかったケースもありますんで。

 

それでも、今回の実験で、寝る1時間前の夕食によって睡眠時間が約33分も減ったってのは気になるポイントでしょう。毎晩これだけ睡眠を失うなら、無視しにくい数字ではありますな。

 

なので、現時点では、

 

  • できれば夕食は就寝2〜3時間前までに終える

  • 難しければ、就寝直前の夕食を軽めにする

  • 毎日の食事と睡眠の時間をなるべく一定にする

  • 夜型なら、起床・食事・就寝をまとめて後ろにずらす

  • 食事時間より先に、食事の質、運動、体重、睡眠時間を整える

 

あたりをやっとくのが無難な対策でしょう。夜遅くに食べたからといって、それだけで代謝が壊れるってことはなさそうなんですが、寝る直前の夕食で睡眠時間が削られる可能性はあるため、「血糖値や肥満のため」というより、「よく眠るため」に夕食を少し早めるのが良さそうであります。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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