大食いの人と一緒に食事をするだけでも食欲は暴走する
飲み会で食べ過ぎた!って経験は誰にでもありましょうが、そのあたりの心理を調べたおもしろい論文が出ておりました(1)。
これは、食欲研究で有名なレニー・ヴァルタニアン博士が、過去に行われた食事習慣に関するリサーチをメタ分析したもの。ぜんぶで38件の論文をまとめて大きな結論を出してまして、科学的にはかなり証拠レベルが高いデータだとお考えください。
で、結論から言えば、ヒトの食欲を左右する一番大きな要素とは、料理の美味しさでも量でもなく、周囲の人たちがどれだけ食べているかなんだ、と。確かに、大食いの相手と食卓をかこめば、つい自分も食事のスピードが速くなってしまうのは、感覚的にも理解しやすいところです。
もっとも、この現象は周囲に人がいなくても起きるそうで、たとえばケーキの食べ放題に出かけたとして、店員から「たいていのお客さんは最低でも10個は食べちゃいますね」と言われただけでも食欲はアップしてしまうらしい。やっぱりヒトは周囲に合わせたい生き物なんですねぇ。
研究者いわく、
ハーマンらの2003年論文によれば、ヒトはつねに「食べ過ぎ」と思われない範囲で、食事の摂取量を可能な限り最大にしようとする。会食の場における「食べ過ぎ」の定義は、他人よりも食事の量が少ないかどうかで決まる。
周囲の人間が少ししか食べていないなら、許容される食事量のリミットは低く設定され、1人で食事をするときよりも摂取量は少なめになる。逆に、周囲の人間が大量に食べていた場合、いつもより自由に食べてもよいという許可を自分に出してしまう。
とのこと。とにかく、本当は人間はできるだけ胃に食事を詰め込みたがる生き物なんだけど、つねに周囲にあわせて食欲を自動で調整しているわけですね。ちなみに、同じ席に「大食い」と「超少食」の2人がそろった場合は、共感力(心の知能指数)と表現力(アサーション)が高いほうの影響がデカくなるケースが多いそうな。おもしろいですねぇ。
そんなわけで、本研究の教訓をまとめると「ダイエット中は大食いと食事に行くな」って感じでしょうか。なんか、そのまんまですが。
credit: daniellehelm via FindCC