カロリー制限をすると、あなたの体はどれだけ脂肪が燃えにくい体になるのか?
カロリー制限で体には何が起きるのか?
「パレオダイエットの教科書」にも書いたとおり、私たちの体はカロリーを減らすと脂肪が燃えにくくなるようにできてるわけです。このシステムがないと人間は適切な体脂肪を維持できなくなっちゃうんで、進化の過程で自然に備わったメカニズムなんですな。
ここで、さらに具体的に「カロリー制限で体にどんな変化が起きるの?」ってとこを調べてくれた論文(1)がおもしろいです。
過食とカロリー制限を交互に行うと…
これはクリスティアン・アルブレヒト大学の実験で、32人の健康な男性を対象にしております。年齢は20〜37歳で、肥満体型でない人だけを選んだそうな。
まずは実験が始まる10週間前に、専門の機器で全員の基礎代謝をみっちりチェック。そのうえで、以下の3つのフェーズをもうけております。
- 過食期:最初の1週間は、普段の食事量に50%上乗せした
- カロリー制限期:次の3週間は、普段の食事量の50%までカロリーを減らす
- リフィード期:最後の2週間は、再び普段の食事量に50%上乗せした食事にする
ってことで、数週間おきにカロリー摂取量を大きく変えて様子をみたわけっすね。
実験中、参加者は朝8時〜午後6時まで大学で過ごすように指示され、つねにカロリーと代謝をチェックされたそうな。これは信頼性が高くていいですね。
カロリー制限スタートから3日で代謝はガツンと落ちる
さて、それでは実験中の変化をグラフで見てみましょう。
一番上のグラフが体重の変化で、真ん中が脂肪量の変化、一番下は筋肉量の変化を表しております。
全体的に見ると、カロリー制限を始めてから3週間で体重が6kg減ってまして、安静時の代謝は1日266kcalほど低下。全体のうち6割は、カロリー制限を始めて3日以内に代謝が激減しだしたとのこと。
いっぽうで、食事の量を再び増やした直後から、体重、体脂肪、筋肉のいずれもが急激にリバウンドを始めて、2週間で元どおりになってるのもポイント。そう考えると、短期間のダイエットにともなう代謝の低下は、長期的な体重や体脂肪の増減には大した影響がなさそう。
カロリー制限で活力系のホルモンが減りまくり
さらに、カロリー制限中に起きた変化を見てみると、こんな感じ。
- 体脂肪は1日114g減る
- 筋肉は1日159g減る
- 肝臓の総量は13%減
- 腎臓の総量は8%減
- 心臓の総量は4%減
- 血圧は7%低下
- ウォーキングをした時のカロリー消費量が22%低下
- 交感神経の働きが38%低下
- レプチン(食欲を抑えるホルモン)が44%低下
- インシュリンレベルが54%低下
- アディポネクチン(痩せるホルモン)レベルが49%低下
- T3ホルモン(代謝を上げるホルモン)レベルが39%低下
- テストステロンが11%低下
ってことで、全体的には人間に活力を与えるホルモンの低下が目立ちますねー。
カロリー制限で痩せにくくなる原因の35%は代謝の低下
いろいろ書いてきましたが、いったん話をまとめると、
- カロリーを減らすと体脂肪が減りにくくなる原因のうち、およそ35%は代謝の低下が理由(いわゆる適応熱産生)
- 代謝の低下はホルモンの変化や心臓と腎臓の機能低下が原因で起きる
って感じです。つまり、この代謝の低下を食い止められれば、腹筋を割りたいときなんかにも非常に良いわけですが、残念ながらいまのとこ適応熱産生をハックする方法は見つかっておりません。
いまのところできるのは、
- カロリー制限中でも筋トレと軽い有酸素運動を続ける
の2つぐらいでしょうなぁ。特にタンパク質は必須なんで、限界まで増やしていくのがベストかと思われます。