「住む場所」によってあなたが不幸になってしまう理由とは?
大気汚染が悪い人間を生み出す?
大気汚染が体に良くないのは言わずもがな。自然が多い場所で暮らす人の総死亡率が低いのも、一説には大気汚染が大きな原因のひとつと考えられております。
が、新しく出た論文(1)は「大気汚染で人間の良心が下がる!」って結論になっててちょっと驚きました。
大気汚染と犯罪の発生率をくらべた
これはコロンビア大学の研究で、アメリカの9360の都市から過去9年のデータを集めて、大気汚染と犯罪の発生率をくらべたもの。大気汚染の種類は、
- 一酸化炭素
- 二酸化窒素
- 二酸化硫黄
- 微小粒子状物質(PM2.5とか)
などなど。これらの要素を、
- 殺人
- 暴行
- 強盗
などの発生率とくらべてみたわけですね。
それで何がわかったかといえば、
- 大気汚染がひどい地域ほど犯罪の発生率も高い
- 人口、雇用率、警官の数、貧困率、法律、住民の年齢、性別の分布といった要素を調整しても、大気汚染と犯罪率の関係は残っていた
だったそうな。わりと徹底的に関係しそうな要素をコントロールしても、大気汚染と犯罪の相関は生き残ったわけですな。
大気汚染の写真を見るだけでも人間はズルをしやすくなる
といっても、これだけでは証拠として弱いんで、研究チームはいくつかの実験もしております。具体的には、256人の参加者を2つのグループに分けまして、
- 大気汚染の画像を見せる
- きれいな都市の光景を見せる
って作業を指示したあとで、クイズに正解すると賞金がもらえるゲームに挑戦してもらったんですね。
ただし、ここで研究チームは、わざとクイズの答えが盗み見できるような状況を設定。どれだけ参加者がルールを守ってゲームに参加するかを調べたんだそうな。
ちなみに、この実験で使われた画像はこんな感じ。
大気が汚れたイメージが、人間の行動にどんな影響を与えるのかを調べたわけっすね。
その結果は予想どおりで、
- 大気汚染の写真を見た参加者の方がズルをする確率が上がった!
って感じだったんですな。つまり、実際の大気汚染がメンタルを左右するのではなくて、「空気が汚れてるなー」と思うだけで、人間は倫理的な心が低下しちゃうんだ、と。
こういった現象が起きる理由として、研究者は「大気汚染が不安を引き起こすからじゃない?」と推測しておられます。というのも、過去のデータでも「不安になった人はズルをしがち!」って結果が出てるんですよ。
まとめ
研究者いわく、
今回の研究は、大気汚染が倫理的なコストをはらんでいる可能性を明らかにした。大気汚染の問題は、環境や健康だけではないのだ。
現代では、大気汚染は数十億の人間を悩ませる問題だ。アメリカだけに限っても、約1億4千2000万人がひどい大気汚染のなかで暮らしている。
とのこと。あらためて自然の中で暮らしたくなる結論ですな。
余談ですが、「ウソをつかない人」は、ビッグファイブでいう調和性が高いケースが多め。この調和性ってのは、幸福度が高い人生を送るためには不可欠な性質だったりします。その意味でも、大気汚染による不安はヒトの幸福に悪影響なのかなー、とあらためて思わされましたねぇ。