スマホを1日1時間より多く使うと鬱になる!はどこまで本当か?
スマホを使いすぎると鬱になる?
ネットとメンタルに関するご質問をいただきました。
「スマホ依存」で米・中高生の「自殺率」が急上昇!という記事を読んで怖くなりました。スマホやパソコンを使うと自殺率が上がるそうです。ネットはそんなに心によくないのでしょうか?
とのこと。記事の内容をちょっと引用しますと、
スマホやパソコンなどのデジタル端末を使用する時間が1日当たり1時間未満の中高生では29%に対して、2時間だと33%、そして5時間以上になると48%と、明らかに上昇している。
抑うつ症状の経験者の割合も、端末の使用時間が長くなるほど高まることも明らかになった。
とのこと。まー、確かに恐ろしげな話ですわな。
データの怖そうなところだけを抜き出してる疑惑
このデータの元ネタはサンディエゴ州立大学の論文(1)で、アメリカに住む50万人のティーンを調べたもの。2つのデータセットを使って、鬱症状とネット利用の関係を調べたら上のような結果が出たというんですな。
では、実際はどうかと言いますと、正直この論文だけだとなんとも言えない感じですね。と言いますのも、「スマホ依存で自殺率が急増!」って記事は、データの怖そうなとこだけを抜き出してるもんですから。
たとえば、記事にあるように「抑うつ症状を経験した女子の割合が激増!」って傾向があるのは確かなんですが、いっぽう男子のデータを見てみると、2010年から抑うつ症状の数は全く増えてないんですよ。さらに言えば、自殺につながる経験については、逆に2010年から減少傾向にあったりもします。いやー、これはどうなんでしょうか。
データを見るとスマホと抑うつ状態にはほぼ関係がない
もうひとつ問題なのが、「スマホの利用で抑うつ症状にどれだけの関係があるのか?」って数値をまるっと無視しちゃってること。具体的な数字で言いますと、
- スマホやの利用時間で抑うつ状態がどれだけ予測できるかと言うと……
- 女子の場合=0.36%
- 男子の場合=0.01%
ぐらいなんですよね。つまり、この数字を逆に言うと、
- 女子の場合、99.64%はスマホと抑うつ状態には関係がない
- 男子の場合、99.99%はスマホと抑うつ状態には関係がない
ってことです。いやー、これは弱い。あまりにもリンクが貧弱すぎじゃないでしょうか。
まとめ
つまり、論文から言えるのは以下のようなことです。
- 2010年から若い女子の自殺や抑うつ状態は増えているが、男子には変化がない
- しかし、その原因にはスマホやパソコンはほとんど関係がない
そんなわけでして、このデータを見てもたいしたことはわからないんですよねぇ。
もちろん、過去にはSNSがメンタルに良くないってデータはいくつかあるんですけど、いっぽうでフェイスブックが幸福度を増すなんてデータもありますからねぇ。要は使い方しだいなんで、ネットを自分と他人の比較の場にさえしなければよろしいのではないかと。