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金より時間を大事にするだけで年間100万円も得をする?というハーバード・ビジネス・スクールのお話


  

タイム・スマート」って本を読みました。著者はハーバード・ビジネス・スクールのアシュリー・ウィランズ教授で、「時間と幸福」の問題について長らく研究してきた行動学者さんです。ウィランズさんの仕事についてはこのブログでも何度か触れてまして、

 

 

といった研究はいずれも博士が筆頭著者になってます。「時間とお金はどちらが最終的に私たちを幸せにしてくれるのか?」みたいな疑問はよくありますけど、一貫して「時間だ!時間こそがヒトを幸福に導くのだ!」って結論を出してる方ですね。

 

 

本書はウィランズ教授の仕事をガッツリまとめた内容になってまして、まずおもしろかったのが「お金よりも時間を大切にすると、いくら稼いだ場合と同じ幸せが得られるのか?」を算出してるとこです。経済学でよく見かけるやり方ですね。

 

 

その結論をざっとまとめると、こんな感じ。

 

  • 「お金よりも時間が大切だ!」と心から思う人の幸福度は、毎年4,400ドル以上を追加で稼ぐことに相当する
  • 嫌いな作業を外部の人にまかせたときに得られる幸福度は、毎年10,000ドル以上を追加で稼ぐことに相当する

 

ということで、金より時間を重んじることで、メンタル的にはかなりの利益が得られるみたいっすね。アウトソーシングで年に100万円近い幸福感が得られるなら安いもんかもしれませんな。

 

 

さらに、ウィランズ教授の研究では、以下のような傾向も確認されてたりします。

 

  • お金よりも時間を大切にする人ほど、新しい人間関係を構築するのがうまい
  • 時間を大切にする人は休憩もうまいので、より生産的で創造的なケースも多い

 

こうして見ると、結局は時間を大切にしたほうが生産性が高まり、最終的には経済的にも潤うんじゃないか?とか思っちゃいますな。私もつい休憩せずに仕事をしちゃいがちな人間なので大きなことは言えないですが。

 

 

が、それにもかかわらず多くの人がお金を追いかけてしまう理由としては、

 

  1. いまの社会では金が生活必需品なので、必要以上に重要性が大きく見えてしまう

  2. 「お金と成功はイコールだ!」って物語が世間に広まりすぎてる

  3. お金は数字として客観的に把握しやすいので、得たときの実感を想像しやすい

 

といったあたりが述べられておりました。確かに「10万円」と言われると価値を判断しやすいですが、「休日の1時間」ってのは本人の使い方で価値が変わりますしね。

 

 

また現代では「成功=金」のイメージが大きいので、いまいちそれ以外の成功を想像できないんだけど、例えば狩猟採集社会とかだと「富を持っていないみすぼらしい人間ほど尊敬される!」みたいな現象も確認されてたりしますからねぇ。先進国とは成功のイメージがまったく違う社会も、普通にあったりするわけです。

 

 

ではどうすればいいのか?ってことで、ウィランズ教授は以下のような提案をしております。

 

  • プロアクティブ・タイムを作る
    自分の人生には重要なんだけど必ずしも緊急じゃない作業をピックアップし、そのタスクに使うための時間をスケジューリングせよ!ってことです。アイゼンハワー・マトリクスでいう「重要だが緊急ではない」タスクっすね。私の場合だと「小説を読む」とか「テコンドー」とかが当てはまる感じですね。

    これについては、だいたい毎週ごとに30分かけて「自分の人生で重要だが緊急ではないことは?」と考えて、だいたい週に2時間×2コマをそのタスクに割り当てるといいっぽい。これは自分でもやらないとな……。

 

  • 小さな決断で「大事なのは時間と金のどちらだ?」と問う
    せっかくの週末なのに、仕事のメールをチェックしたり、もう少しで終わりそうな書類仕事に手をつけたりと、つい仕事に寄った行動をしちゃう人は多いもの(私もそうですが)。そういった小さな決断を行うたびに「大事なのは時間と金のどちらだ?」と自問してみるわけっすね。

    言われてみれば、日々の決断の多くは「時間か?金か?」の二択を選んでるケースが多いので、あらためて考えてみるとおもしろいかもしんないすね。

 

  • 時間を買うのは他人への利益だ!と思う
    慣れないとなかなか「時間を買う」ってとこに抵抗を感じる人も多いんですが、その場合は「自分の仕事をまかせることで、その人の利益になるのだ!」と思考をリフレーミングしてみると吉。「時間を買う」というと、「怠け者」やら「自己本位」といったイメージもつきまといますが、実際には利他的な行為だと考え直してみるわけっすね。

 

そんなわけで大まかなアウトラインだけ紹介しましたが、もちろん本書には詳しい実験の概要やさらに細かなティップスが出てますんで気になる方はどうぞ。おそらく翻訳されるでしょうから、それを待つのもありですが。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。