今週末の小ネタ:空腹感の解消に効くアミノ酸、乳製品は痩せる?、アロマセラピーと「痛み」
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
空腹感の解消に効くアミノ酸ってどれ?
タンパク質には満腹効果がある!という話はよく聞くところですけど、果たして「どのアミノ酸が空腹感の改善に効いているのか?」を調べたデータ(R)が出ておりました。周知のようにタンパク質は体内でアミノ酸に分解されるわけですが、具体的にどのアミノ酸が満腹をもたらしているのか、と。
これはランダム化クロスオーバー試験で、肥満に悩む女性8名を集めて、
- 45gのホエイプロテイン
- マルトデキストリン飲料(糖質)
のどちらかを飲むように指示。もちろん、どちらもカロリーレベルは同じになるように調整したそうです。
でもって、ドリンクを飲む前、60分後、120分後という3つのタイミングで血液サンプルおよび空腹感を評価したところ、
- グルタミン酸はPYYと正の相関があった(PYYは満腹感を左右するホルモン)
- イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、チロシン、バリンは空腹感と負の相関があり、満腹感およびGLP-1と正の相関があった(GLP-1も満腹感を左右するホルモン)
ってな傾向だったらしい。まだ仮説の段階ながら、「イソロイシン、ロイシン、リジンなどが消化管の細胞を刺激してGLP-1を分泌させるのでは?」と考えられるんだそうな。
まぁ「長期的に見たらプロテインには体が慣れちゃう」って話があるんで、どんな場面でもタンパク質で食欲が減るとは言えないものの、とりあえず短期的に痩せたい場合は1回45gの高タンパクを使うのも良いのかも?ってとこですね。
乳製品、痩せるか太るか
続いて、「乳製品で体重は減るか?」を調べたメタ分析のお話です(R)。乳製品は一般に高脂肪食品ですけど、果たして減量に役立つのかどうなのか、と。
実はこの問題には長い論争の歴史があって、一部のメタ分析では「乳製品の摂取量が多いと体重が増える!」って結論したものがあれば、他のメタ分析では「カロリー制限をしてるときの乳製品は体重をより多く減少させる!」みたいなことも言われてたりします。
で、新たなデータは58のRCTを調べたメタ分析で、おもに乳製品の消費と体脂肪や筋肉の関係性をチェックしてくれてます。そこで結論だけをピックアップしてまとめると、こんな感じ。
- カロリー制限をしている状態で乳製品を増やすと、筋肉が増加する一方で、脂肪量、ウエスト周囲、体重などは減少する
- カロリー制限なしの状態だった場合は、乳製品の摂取が脂肪量、除脂肪量、ウエスト周囲径に及ぼす影響は認められなかった。ただし、体重を増加させる傾向は確認された
というわけで、ざっくりまとめれば、
- カロリーを減らしてる時は乳製品を飲むと体型が改善しやすい!普通に食事をしてるときは乳製品は体型を悪化させるかも!(そこまでのダメージでもなさそうですが)
ぐらいの感じになりますね。カロリー摂取量によって乳製品がおよぼす影響は違ってくるのかもしれないわけっすな。
まーこの研究には注意点もありまして、
- カロリー制限を使った研究は過体重および肥満の参加者を対象に実施された
- カロリー制限なし研究には、幅広いBMIの参加者が含まれている
って差があるとこにはご留意ください。ここらへんの要素が数値に影響を与えてる可能性はかなり大きいもんですから。
アロマセラピーで「痛み」はやわらぐか?
「ラベンダーって良さそうだよなー」みたいな話はよくしてますが、新たに「手術後の痛みにもいいかも?」みたいな話(R)が出ておりました。
これは心臓手術を受けた160人の患者さんを対象にしたもので、全体を4つのグループに分けてます。
- 標準的なケア+ラベンダー精油をかぐ
- 標準的なケア+ローズ精油をかぐ
- 標準的なケア+水のにおいをかぐ
- 標準的なケアのみ
その上で、冠動脈バイパスグラフトなどの手術を行ってから15分ごとに、痛みや不安のレベルをチェックしたとのこと(人工呼吸器を使用している間は30分ごと)。この手の手術は人体への負担が大きいので、痛みや不安に苦しめられる人が多いんですよね。
それで、どんなことがわかったかと言いますと、
- ラベンダーもローズも、不安感の改善は確認されなかった
- ただし、ラベンダーとローズのどちらとも患者さんの主観的な痛みを減らし、人工呼吸器が外れるまでの時間が短かくなった
って感じだったそうです。不安に有意差が見られなかったのが意外ながら、主観的な痛みはそこそこ減ったようで、これは試してみてもいいかなーってとこですね。もちろん手術以外の問題に効くかは謎ですけど、副作用もないでしょうから、私もなんらかの痛みに悩んだら試そうかと思う次第です。