メンタルの安定に役立ちそうなデータいろいろ#4:明るい光、フィッシュオイル、プロバイオティクスの効果やいかに?
「過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたので無視するのももったいないケース」をまとめて取り上げてみるシリーズです。今回は「メンタルの改善に役立ちそうなデータ」を、すごーくざっくりとまとめて3つほどお送りしまーす。
明るい光で気分も明るくなる……かも?
体内時計は光に影響される!ってのはよく聞く話ですが、新たなメタ分析(R)では「光セラピーでメンタルは改善するの?」ってとこを調べてくれてました。対象にされてるのは季節性情動障害(SAD)で、秋から冬にかけて気分が沈みがちな人に明るい光を当てたらどうなるか?をチェックしてます。
ここでは19のRCTをまとめてまして、SADと診断された成人を対象に、
- 薄暗い光(500ルクス未満)を当てた場合
- ニセの光治療器を使った場合
- 明るい光(1,000ルクス)を使った場合
で比べたところ、
- 18のデータ(610人)において、明るい光はうつ病のスコアが改善しやいと報告された
- 16のデータ(559人)では、明るい光への反応率がコントロール群よりも高かった
みたいになってて、やはり「人間は明るい光に当たらないとダメなんだろうなぁ」って気がするわけです。
まぁこのメタ分析は必ずしも精度が高いわけでもなく、11の試験はバイアスのリスクが高いことが報告されてますんで、余談は禁物って感じでもあります。とはいえ、バイアスリスクが高いテストを除いて感度分析を行ったら、すべての試験を計算に含めた場合よりもうつ病の改善度が大きかったそうなんで、期待もできそうだなーってとこですね。
フィッシュオイルで若者のメンタルが改善する……かも?
フィッシュオイルが成人のうつ病のサポートにいいのでは?ってのは昔からよく言われるんですけど、新たに「子供とか10代にも同じことが言えるの?」を調べたデータ(R)が出ておりました。
これは12週間のランダム化比較試験で、うつ病や不安に悩む58人の若者(平均年齢15.7歳)を対象に、
- 抗うつ薬治療+フィッシュオイルサプリ(EPA 1000mg、DHA 750mg)を飲む
- 抗うつ薬治療+オメガ6脂肪酸(E2467mg)を飲む
のいずれかを投与。メンタルにどんな違いが出るかをチェックしてます。
すると、結果はこんな感じになりました。
- オメガ3グループは、4週目から12週目までオメガ6グループより抑うつ症状が減少した(4週間のウォッシュアウト後にはグループ間の差は消失)
- 血液検査では、血中のEPAレベルが低く、オメガ6の量が多い人ほど抑うつ症状が重い傾向があった(DHAとうつ病のスコアの間に相関関係は見られなかった)
ということでして、やはり子供にもフィッシュオイルは効くのではないか?と思わせる結果になってますね。EPAにのみ改善が見られたってのはちょっと新しい知見でして、どんなオメガ3でもいいわけじゃないのかな?って感じっすねー。
うつ病にプロバイオティクスはどこまで効くの?
「腸と脳はつながってるんだから、うつ病にも効くはずだ!」って考え方がありまして、そこらへんを調べたデータ(R)が出ておりました。大うつ病性障害に特化した研究データはまだ少ないんで、ちょっとありがたいですね。
これは28日間のランダム化比較試験で、うつ病に悩む男女61人を2つのグループに分けて、
- 9つの菌株を混ぜたプロバイオティクスブレンド3gを飲む+ビタミンB7125mgを飲む
- プラゼボサプリ3gを飲む+ビタミンB7125mgを飲む
って感じにわけてどんな違いが出るかをチェックしてます。ちなみに、実験の期間中は、どちらのグループも標準的な抗うつ薬治療を続けたとのこと。
そこで何が分かったかと言いますと、
- どちらのグループも抑うつ症状が改善し、どのテストを使ってもグループ間の差はなかった
- プロバイオティクスを飲んだグループは、炎症の改善に関わるシステムが活動していた
みたいな感じです。プロバイオティクスを飲んだグループは体内に良い兆候は見られたものの、具体的にメンタルが改善するとこまでは行かなかったみたいですねー。
この試験をどう解釈するかは難しいんですけど、過去にはプロバイオティクスで抑うつ症状の改善が見られたって報告も少なくないんで、ここらへんの食い違いは気になるところです。いま考えられるところでは、
- シンプルに28日だと変化が出るまで十分ではない?
- 被験者に喫煙してる人が多いので、それが影響してる?
- 使われた菌株がいまいち適してなかった?
ってとこですけど、腸内細菌の話は複雑すぎて何とも言えないっすな。とりあえず、今回の被験者には炎症の面でよい変化が出てるんで、そこは期待できるとこですけどねー。