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睡眠お役立ちデータいろいろ:睡眠不足を運動で挽回? アスリート向け快眠アドバイス? 呼吸法で睡眠改善?


 

「過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたので無視するのももったいないケース」をまとめて取り上げてみる」シリーズです。今回もまた「睡眠の改善に役立ちそうなデータ」を3つほど、ざっくりとまとめてお送りしまーす。

 

 

睡眠不足のダメージを運動でどうにかできるのか?問題

睡眠が足りないと、人体は糖質をうまく処理できなくなっちゃうのは有名な話。その理由はよくわかってないものの、「ミトコンドリアがおかしくなるのでは?」とか「体内時計が乱れるからでは?」などと言われております。

 

 

そこで、新しいデータ(R)は、「負荷の高い運動をすれば睡眠不足で起きる問題をどうにかできるのでは?」みたいなポイントを調べてくれてておもしろかったです。負荷が高い運動はミトコンドリアの機能や体内時計にプラスの影響を与えられるんで、睡眠不足の問題にも使えるんじゃないか?と考えたわけっすね。

 

 

これは18~40歳の健康な男性24人を対象にした非ランダム化比較試験で、いつも平均7時間の睡眠を取ってる人を選んだそうな。でもって、実験では全員を3つのグループに割り振りまして、

 

  1. いつも通り眠る
  2. 睡眠を制限する
  3. 睡眠を制限+運動をする

 

って感じで5日ほど過ごしてもらったらしい。睡眠を制限したグループは一晩の睡眠を4時間まで削り、さらにエクササイズを行なったグループは、

 

  1. 3分間のウォームアップ
  2. 60秒ほど全力で運動
  3. 75秒の休憩
  4. 2〜3のステップを10回くり返す

 

っていう高負荷な運動を行なったとのこと。4時間睡眠でこんなキツい運動するのイヤだなぁ……。

 

 

でもって、結果はこんな感じになりました。

 

  • 睡眠を制限したグループは、血中グルコースの22%増加、インスリン反応の29%悪化、ミトコンドリアの機能低下が見られた

 

  • が、睡眠を制限+運動をしたグループには、同じような糖代謝の機能低下が見られなかった

 

ということで、どうやら負荷が高い運動には、当代謝のダメージをやわらげる働きがあるかもしんないみたい。もちろん、睡眠が足りないときはよく寝るのが基本ですけど、どうしても睡眠が取れなかった場合は運動してみるのも手かもしれませんね。

 

 

 

専門家がお勧めするアスリート向けの睡眠アドバイス

アスリートに良い睡眠が欠かせないのは当たり前の話。そこで、新たにリヴァプール・ジョン・ムーア大学などのチームがアスリートの睡眠に関する文献のナラティブレビューを行い、具体的なアドバイスをまとめてくれておりました(R)。私たち一般人にも十分使える内容なんで、概要をメモっとくとこんな感じになります。

 

  • 「アスリートの睡眠が悪化する要因」としてもっともありがちなのは、旅行、慣れない寝室、高いトレーニング負荷、早朝トレーニング(午前8時前)、夜のトレーニング(午後6時以降)、競技前夜のストレスなどがある

 

  • スポーツ以外の不眠の原因として最も一般的なのは、家族の協力がない、社会的な機体によるプレッシャー、ライフスタイル(カフェインとか)、思考や感情(不安とかネガティブ思考とか)、年齢、性別(高齢者と女性は睡眠問題のリスクが高い)

 

  • アスリートの睡眠を改善するためには、以下の方法が推奨される。

    • 30分未満の昼寝

    • 睡眠衛生の改善(涼しく、暗く、静かな部屋で寝る)

    • 睡眠モニターの使用(Apple Watchとか)

    • スリープバンキング(睡眠不足が予想される期間の1週間以上前から、毎晩通常よりも長い時間睡眠をとる)

    • カフェインナップ(15~20分の短い昼寝をする直前に150~200mgのカフェインを摂取する)

 

ってことで、個人的には「スリープバンキング」と「カフェインナップ」の2つについては、「専門家も推奨するレベルになってきたんだなー」って感想を持ちましたね。まぁ結局は「睡眠衛生の改善」がもっとも影響度は高いと思いますけど、カフェインナップなどもついでに実践してみるとよいかもしれません。

 

 

 

呼吸法で術後の睡眠問題は改善するか?

「手術をしたら眠れなくなった!」みたいなお悩みはよく聞く話。特に高齢者は術後の痛みで睡眠障害が起きちゃうことが多いんですよね。そのせいで鎮痛剤をたくさん使った結果、さらに眠れなくなっちゃう悪循環が起きたりするんですよね。

 

 

ってことで新しいRCT(R)は、「痛みによる睡眠の問題は呼吸法とガイド付きイメージ法で解決できるか?」ってのを調べてて有効でした。

 

 

これは腹部手術の準備をしている90人(60歳以上)の高齢者さんを2つのグループに分けていて、

 

  1. 手術前日から96時間後まで、1日2回ずつガイド付きのイメージ法と呼吸法でリラックスする
  2. なにもしない

 

って感じで両者の違いを見てます。「ガイド付きのイメージ法」ってのは「穏やかな風の音」とか「美しい森の中」とかをイメージするストレス対策法で、「寝たまんまヨガ 簡単瞑想」が使ってるようなやつです。「呼吸法」は一定のペースでゆっくり腹式呼吸を行う方法っすね。どちらもリラクゼーション技法の定番ですな。

 

 

でもって、結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 手術前と48時間後、96時間後の睡眠の質は、いずれもイメージ法と呼吸法を使ったグループの方が高かった(何もしないグループは睡眠の質が悪化していた)

 

だったそうです。細かい数値を見てるとそこまで劇的な違いではないものの、呼吸法とイメージぐらいなら副作用もないでしょうから、お試しいただく価値は十分にあるのではないかと。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。