金で幸せは買えないが、金で幸福度が上がる数少ないケースがこれだ!みたいなメタ分析の話
「金で幸せは買えない!」みたいな説はよく聞くところで、「科学的な適職」でもポイントのひとつに取り上げております。
ただ、新しく出たメタ分析(R)では「金を儲けて幸せになれるケースもあるよ!」って結論になってておもしろかったです。
これはシンガポール・マネージメント大学などの調査で、年収や所得と幸福感について調べた357の異なる研究をまとめた内容になってます。ここでどんなところをチェックしたのかと言いますと、
- みんなの主観的な幸福感はどれぐらいか?(人生の満足感と日常的なポジティブ感情の有無)
- みんながどれぐらい社会経済的地位があるか?
って感じで、全体で230万人以上のデータを分析してます。その際に最大のポイントになったのは、
- みんな、”他人と比べて"どれぐらい自分のことを金持ちだと思ってるの?
って点です。具体的には「マッカーサー尺度」っていう定番の調査方法を使ってまして、たいてい参加者に10段階のはしごのイラストを見せつつ、以下のように尋ねます。
このはしごは、あなたの国に住む人たちの位置を表すものだと考えてください。はしごの一番上には、もっとも裕福な人たちがいます。この人たちは一番のお金持ちで、学歴も最高で、もっとも尊敬される仕事についています。
はしごの一番下には、もっとも貧しい人たちがいます。その人たちは、お金がなく、学歴も低く、尊敬されない仕事についているか、または仕事がありません。
あなたが豊かな生活を送っているなら、はしごの上に近い位置にいることになります。あなたが貧しい生活を送っているなら、はしごの一番下に近い位置にいることになります。
いまのあなたは、このはしごのどこに位置すると思いますか。この国に住む他の人たちと比べて、自分が位置すると思う位置を選んでください。
ってことで、「この参加者は世界で何番目に裕福か?」みたいなとこを調べたんじゃなくて、「私はたいていの人より裕福だ!」と思っているか、それとも「私は他人より貧しい……」と思っているかという、あくまで主観的な感覚を調べたわけですね。
でもって、すべてのデータをひっくるめて何がわかったかと言いますと、
- 主観的に「俺は他人より裕福だ!」と思えている人はそれだけ幸福度が高くなるし、逆に「自分の地位が他の人と比べて低い……」と思うほど幸福度は下がる
- 他人との比較による幸福度アップの効果は、シンガポールのように人口密度の高い国でより強くなった
だったそうです。つまり、お金で幸福になれるのは他人と比較したときであり、もし現時点で年収が上位に入っていても、もっと上の人たちとばかり付き合ってたら幸福度は下がっちゃうかもしれないわけっすね。もちろん逆もまたしかりで、一国の水準からすれば貧しい所得だったとしても、周囲よりも裕福だと思えれば幸せは上がるんじゃないか、と。
そう考えると、人口密度の高い国ほど効果が強いのも当たり前で、周囲に人が多ければそれだけ比較の対象も増えることになりますもんね。研究チームいわく、
今回の調査結果は、過去よりも物質的に裕福になるだけでは、幸福度を高めるには不十分であることを示唆する。
現代人が親よりも高い賃金を得たとしても、あるいは10年前と比べて教育レベルが上がったとしても、いまの時点で他人より良くなければ、幸福への影響は限られたものになってしまうだろう。
なんだか人間の嫌ったらしさを示すような研究ですけど、まぁ確かに現実はそんな感じでしょうな。