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昼寝で記憶力や言葉づかいが上がりまくるのでは?みたいな観察研究の話

 


  

昼寝で脳の力が上がりまくる!……かも?」みたいなデータ(R)が出ておりました。昼寝の効能についてはいろいろ書いてますけど、今回は脳力アップの話っすね。

 

 

この研究は60歳以上の健康な中国人2,214人が対象で、そのうち定期的に昼寝をしてたのは1,534人で、昼寝をしないのは680人だったとのこと。ここでいう「昼寝」の定義ってのは、

 

  • 少なくとも5分以上連続しているが、トータルの睡眠時間は2時間以内
  • 昼寝のタイミングは昼食後で、週に1回から毎日までの範囲で行う

 

ぐらいになってます。2時間の昼寝となるとほぼ熟睡しちゃう感じですけど、それでもとりあえず昼寝の範囲に含めてるみたいっすね。

 

 

でもって、参加者には認知症の有無を調べるためのテスト(MMSE)や健康チェックを行いまして、いつもの睡眠時間なんかも調べてます。その上ですべてのデータをまとめたら、こんな結果になりました。

 

この研究では、3つの大事なポイントが示された。

 

第一に、午後に昼寝をする高齢者は、昼寝をしなかった人と比較して高い認知パフォーマンスを示した。

 

第二に、昼寝をしている高齢者は中性脂肪のレベルが高かった。

 

最後に、午後の昼寝を行う高齢者は、場所認識、言語機能、記憶の改善と強く相関していた。

 

ということで、昼寝は全体的に脳機能の改善と結びついてたらしい。一方では中性脂肪が高くなってるのが気がかりですが、ここらへんのメカニズムはちょっと謎(まぁ昼寝好きは運動不足な傾向があるのかもしれませんが)。とりあえず、この調査だと中性脂肪は正常値の範囲でして、そのおかげで認知機能には悪影響が出なかったのかもですな。

 

 

さらにチームいわく、

 

午後の昼寝は、眠気の軽減に加えて、記憶の定着、その後の学習への準備、実行機能の強化、情緒的安定性の向上など、さまざまな利点がある。ただし、これらの効果はすべてのケースで観察されたわけではない。

 

また、長くて頻繁な昼寝は、逆に認知機能の低下と関連していたので注意が必要である。短くて(30分未満)頻度の高い(週4回)昼寝の場合は、逆にアルツハイマー病発症リスクの84%低下と相関する。

 

とのことでして、昼寝は30分以内におさめつつ1週間あたりの回数を増やした方がいいのではないか、と。確かに、「長すぎる昼寝は死亡率アップと結びついてるよー」ってのは昔から言われてることなんで、そりゃそうだよなーってとこですね。

 

 

なんで昼寝でこういうメリットが確認されたかは謎なんですけど、とりあえずここでは「体内の炎症がやわらぐからじゃない?」って推測がなされておりました。そもそも睡眠は体の免疫システムを調節する役割を持ってるんで、昼寝ってのは炎症に対して人体が備えた進化的な反応じゃないのか?みたいな話っすね。

 

 

実際のところ、体内の炎症レベルが高い人ほど昼寝の量も多いって傾向も確認されてるそうで、簡単に言えば研究チームは「昼寝は炎症を鎮めるために進化した!……のかも」みたいな仮説を立ててるわけっすな。まぁありえる話じゃないでしょうか。

 

 

そんなわけで昼寝にはやはりメリットがあるのかなーって感じがしますが、注意するポイントとしては、

 

  • あくまで横断研究なので因果関係はわからないし、決してデータの質が高いわけでもない

 

  • 高齢者が対象の研究なので、若い人たちが昼寝で同じ効果を得られるかはよくわからん

 

  • 一般的に、年をとるほど夜の睡眠時間が短くなり、午後の昼寝が増える傾向がある

 

といったあたりでしょうね。高齢になるとたいていは昼寝の量が増えるんで(おそらく炎症レベルが高くなるから)、「昼になっても別に眠くないなー」っていう若い方がわざわざ昼寝をすべきかというと疑問ですかねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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