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今週半ばの小ネタ:低脂肪でテストステロン低下、子供を持たない夫婦は幸せか、シナモンやっぱすごいかも?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

低脂肪はテストステロンが下がるから気をつけよう!というメタ分析

脂肪を減らした食事ばかりしているとテストステロンが下がっちゃうぞ!って研究は昔からあるんですが、具体的に「どこまで低脂肪はテストステロンによくないのか?」を調べたメタ分析が出ておりました(R)。脂肪ってのはテストステロンの材料になるんで、減らしすぎたら数値が下がっちゃうのは当然なんですよね。

 

 

具体的なデータの内訳を並べておきますと、

 

  • 平均年齢46歳の男女206人をふくむ6つの試験を分析している(すべての試験はクロスオーバーで、6試験のうち5試験は無作為化されていない)

  • 試験期間は2週間から10週間で、高脂肪食と低脂肪食の違いは平均で20%(580kcal)だった

 

って感じでして、全体的なデータの質は低めながら、それなりに参考になる結論は得られるんじゃないかと。

 

 

で、結論はこんな感じです。

 

  • 全体的に見ると、低脂肪食を続けるとテストステロンはやや低下する(SMD:-0.38)
  • 欧米人だけの参加者に限った場合は、低脂肪食によってそこそこテストステロンが低下する傾向があった(SMD:-0.52)

 

そんなわけで、基本的には「低脂肪食はやはり良くない!」と言えそうですが、欧米じゃない人たちはなぜか高脂肪食でもテストステロンの低下が見られているのが謎っすね。おそらくベースラインとなる食事や遺伝的背景も重要なんだろうなーって感じですが。

 

 

ちなみに、その他にも得られた知見としては、

 

  • 多価不飽和脂肪と飽和脂肪のバランスもテストステロン値に関係するっぽい(飽和脂肪酸はテストステロンの増加と相関している)

  • 高炭水化物の食事は、高タンパク質の食事と比較してテストステロンのレベルが高くなるっぽい(脂肪の摂取量が同じ場合)

 

なんてのもありまして、結局のところ「三大栄養素のバランスが取れた食事が大事!」という実に平凡な結論に落ち着きそうっすね。

 

 

 

子供を持たない夫婦は幸せなのか?問題

子供を持たない夫婦は幸せなのか?を調べたデータ(R)が出ておりました。私も別に子供を持つ気持ちがまったくないので、気になるところであります。

 

 

これはミシガン州の成人1,000人を対象にした調査で、みんなの「生活満足度」や「性格」などを調べたうえで、子供を持たない夫婦と子持ちの夫婦の幸福度を比較したんだそうな。生活満足度ってのは、瞬間ごとに感じる幸せじゃなくて、自分の人生に対する総合的な判断を意味してます。「自分の人生は悪くないよなー」と思えれば、「生活満足度」は高めだと申せましょう。

 

 

似たようなテストは過去にもあったんですけど、今回の調査が前よりも良いのは、以下のような事情があるからです。

 

過去の研究では、子供を持たないことを選択した人と、それ以外のタイプの子供を持たない人を区別するために必要な質問をしていない。

 

子供を持たない人のなかには、「子供を持つことを計画しているのに『まだ親になっていない人』」や、「不妊や環境のせいで子供を持てなかった人」もふくまれる。それなのに、これまでの研究では、単純にすべての子供を持たない親をひとくくりにしていた。

 

やむにやまれぬ事情で子供が持てなかったら、生活満足度が下がっちゃうのは当然。にも関わらず従来の研究はすべてを同じように扱っていたので、ここでは「私は子供はいらないのだ!」と自分で決めた人だけを対象にしたわけっすね。これはナイスですなぁ。

 

 

で、結論をざっくりまとめると、

 

  • 子供を持たない!と選んだ夫婦も、子供を持つ夫婦と同じぐらい生活満足度は高い!
  • 子供を持つ人と持たない人に性格特性の差はほとんどなかった(やや子供がいない人の方がリベラルなぐらい)

 

ということで、子供がいようがいまいが生活の満足レベルに違いはなかったらしい。ちなみに、世界22カ国を調べた別の調査(R)だと、「実は子供のいない夫婦の方が幸せかも?」みたいな結果が出てまして、特にアメリカではその傾向が強いとのこと(これは、おそらく家族の支援精度が少ないのが原因だと思われる)。ここらへんもふくめて考えると、

 

  • 少なくとも長期的な幸福については、子供がいるかどうかはあんま関係なさそう

 

って感じになるんでしょうかねー。

 

 

 

シナモン、やっぱすごいんじゃないか説

シナモンは体に良い!って話はいろいろありまして、割と優秀なスパイスだよなーとか思っているわけです。で、新しいメタ分析では、「シナモンがいろんな病気をやわらげてくれるのでは?」って結論になってて参考になりました(R)。シナモンの有効性についてはまだ論争が続いているんで、非常によろしいですね。

 

 

本研究は、過去のシナモン調査から35件のRCTをまとめていて、過去の類似データのなかでは最大級。糖尿病 · 肥満 ·リウマチなどに悩む2,282名の男女を対象にしていて、追跡期間は6~26週間、投与量は1日あたり0.12~12gだったそうな。

 

 

で、すべてをひっくるめて、脂質、血糖値、血圧などのをチェックしたところ、

 

  • シナモンは、代謝性の疾患を持つ男女のコレステロールや中性脂肪、血糖値、血圧、ウエストサイズを改善する

 

  • シナモンの投与量が1日1.5g以下で、試験期間が8週間以上の場合は、コレステロールや中性脂肪、血糖値が改善するっぽい

 

  • 血圧とウエストサイズについては、シナモンの投与量と試験期間の影響を受けなかった

 

ということで、全体的に良い成績が得られております。細かい数値の紹介はひかえておきますが、ざっくり言えば「ちゃんと効果を実感できるレベルの変化は得られそう」って印象でして、なかなかのもんですな。

 

 

まぁ、全体的にデータのバラつきがデカいので、これでシナモン論争に蹴りがついたとは言えないものの、現時点ではかなりポジティブな結果が得られてますよーってことで。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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