今週半ばの小ネタ:アロマで不眠改善? 家族が痩せれば同居人も痩せる? サウナで病気は防げる?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
アロマで不眠症を解消できる?
アロマで不眠が改善するのでは?って話はよくあって、たとえば最近も「ラベンダーで睡眠の質が上がるかもよー」みたいなデータを紹介しましたね。
ただ、アロマピー全体が不眠に効くかどうか?を全体的にチェックした研究はまだなくて、具体的な効果がどうなのかはよくわかってなかったんですよ。そこで、新しいデータ(R)は「アロマテラピーで眠れるようになるか?」をガッツリ調べたメタ分析になっていて、現時点ではかなり参考になります。
この研究は、アロマと睡眠の質の関係を調べた16のRCT(および19の比較試験)をまとめたもので、全体的なテストの質は割と高め。不眠症に悩む1,346人を対象に、PSQI(定番の睡眠テスト)のスコアがどう変わるかを調べてます。
で、結果はこんな感じでーす。
- おおまかな結論としては、アロマは睡眠の質を改善したが、かなりの異質性が検出された(つまり個人差が大きいっぽい)
- アロマごとの違いをチェックすると、ラベンダーやローズに睡眠の質の改善が見られ、ローズが最も大きな効果を示した
- アロマの使い方をチェックすると、吸入が睡眠改善に効果的で、アロママッサージは効果がなかった。アロマの使用期間は、2週間未満、2~4週間、4週間以上のすべてで同じような効果が見られた
というわけで、不眠にお悩みの方はラベンダーとローズのアロマセラピーを試す価値があるかもしれません。なにせデータごとの効果の違いが大きいので「絶対に試すべき!」とは言いづらいのですが、別に副作用もなさそうですしねー。
家族が痩せれば、その同居人も自然と痩せる?
ある人がダイエットに成功すると、その家族や同居人も痩せ始めるって現象は、多くのデータで確認されているところです。俗に「ハロー効果」と呼ばれる現象で、家族がダイエットを始めたおかげで、同居人も自然とライフスタイルが変わっていく心理を表しております。
で、新たな研究(R)では、さらに具体的に「食事と運動を変えたらどうなるか?その変化は家族にもおよぶのか?」ってところを深掘りしてておもしろかったです。これまでの研究は、食事だけを変えたり、肥満手術をした場合の変化しかチェックしてないので、食事+運動について調べたものは珍しいんですよ。
これは2年間におよぶ長期研究で、6,874人の男女に「低カロリーの地中海食+運動」か「何も変えない」って2つのパターンへランダムに割り当て、さらにその家族148人のライフスタイルがどう変化したかを調べたんだそうな。そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- 「地中海食+運動」をした人の家族は、別に食事と運動の改善を意識しなくても、1年後に体重が1.25kg減り、2年後には3.98kgまで体重が減少していた(逆に何もしなかったグループの家族は、1年後に3.30kg、2年後に1.90kgほど体重が増えていた)
- 「地中海食+運動」をした人の家族も、やっぱり地中海食を続けている可能性が高かった
ということで、やはり食事と運動を改善した人の家族は、本人は意識しなくても同じようなライフスタイルを採用し、結果として健康レベルが改善したらしい。そう考えると、「うちの家族はライフスタイルが健康じゃないなー」とかお悩みの場合は、まずは自分が率先してライフスタイルを変えるのが良さそうっすねぇ。
サウナで病気は防げるか?のメタ分析
「不老長寿メソッド」にも「サウナはいいよー」って話を書いてますが、新たなメタ分析(R)でも「心血管の病気リスクにサウナが効く!」って結論で良い感じでした。この問題についてはかなりの量のデータが溜まってきてまして、すべてをまとめて大きな結論を出せる感じになってきたんですよね。
この研究は、心血管の病気を持っている人、または心血管の病気になりそうな人(喫煙、高血圧、肥満など)を対象にしたテストを集めたもので、
- 対象となったのは16の試験で、そのうちRCTが7つ、ランダム化されてない試験が9つ。実験の参加者は、最小で10、最大で102
- それぞれの試験では、1回15分間のサウナを週に5~10回、2~4週間ほど実施した結果を示している
- サウナを続けることにより、参加者の体温、心拍数、血圧、心臓と血管の機能にどんな違いが出たかをチェックしている
みたいな感じになってます。週に5~10回のサウナって割と大変な作業っすね……。
で、結果をざっくりまとめると、こんな感じです。
- サウナはすぐに体温と心拍数を上昇させ、血圧を低下させる効果がある
- サウナを数週間にわたって使用した場合、心臓の機能には改善が見られたが、最高血圧は有意に低下したものの、血圧の差は統計的に有意ではなかった
ということで、そこまで劇的な変化とは言えないものの、心臓と血管の健康を改善するパワーはそれなりにあるかなーってとこですね。
ただし、全体的な傾向を見てますと、ここで採用されたデータの大部分はバイアスのリスクが大きめだし、議論の多い統計手法(固定効果モデル)を使ってるんで、サウナのメリットが大きめに出てる可能性もあったりはします。もちろん重大な欠陥ってことはないんですけど、サウナの効果についてはもうちょい様子見なとこもありますかね。個人的にはサウナ好きなので、今後も機会があれば続けるつもりですが。