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「人生はやるかやらないかだ!」と思ってるとメンタル病むんじゃないすか?みたいな話

 

「やればできる!」「人生はやるかやらないかだ!」みたいなアドバイスはよく聞くところでしょうが、「その意識が高めな考え方が若者を病ませてないか?」ってデータ(R)が出てておもしろかったです。

 

 

これはアリゾナ州立大学などのチームによるレビューで、どんなことを調べたのかと言いますと、

 

  • 高学歴で裕福な学生ほど意外と問題が多いのはなぜなの?

 

ってポイントです。貧困にあえぐ若者に問題行動が多いって話はよくありますが、近年の研究では、実は裕福で頭が良い学生もヤバいケースが多いよねーって話をよく聞くので、それはなんでだろう?という問題ですね。

 

 

具体的に、いまの時点でどんな傾向が見られるかと言いますと、

 

  • 高学歴で裕福な生徒がみんな問題を抱えているわけではないが、全国的な基準と比較すると深刻な不適応を示す割合がかなり高い

 

  • 社会と経済的な地位が高い学生は、タバコ、アルコール、マリファナ、ハードドラッグの使用率が高い

 

  • 教育水準が高くて高所得な家庭が多い地域では、アルコールとマリファナの使用量が多いことが報告されている

 

  • 社会と経済的な地位が高い学生は、社会のルールを破りやすい傾向も報告されている

 

  • クラスメートから「最も人気がある人」と支持された少年ほど、ドラッグの使用量が多い傾向もある

 

みたいになってます。全体的に見ると「高学歴で裕福な学生はメンタルがつぶれやすく、そのせいで依存性がある物質に手を出す確率が高い!」って感じがあるみたいですね。

 

 

こうなると、なんで裕福で学歴もあるのに、そんな大変なことになっちゃうの?ってのが気になりますが、研究チームはこんなことを言っておられます。

 

 

大きな問題は、やる気や忍耐力の欠如ではない。むしろ、不健康なまでの完璧主義や、達成に向けてのモチベーションが頂点に達したときに、あきらめて身を引くことができないことが問題なのだ

 

 

完璧主義の問題についてはブロマガでもさんざんに述べてきましたが、頭が良くて金があるがくせいほどこのトラップにハマりやすく、そのせいで不可能な目標に対しても「やればできる!やるかやらないかだ!」ってメンタルを持ってしまい、結果として心が折れてしまうのではないか、と。いかにもありそうな話ですな。

 

 

実際、チームはこんな指摘もしておられます。

 

  • 近年の若者は、特にソーシャルメディア上などで、自己の完璧なイメージを示す傾向がある

  • また、日常生活においては、心の安らぎや支え、本当の自分を肯定してくれる重要な人間関係への投資をためらう傾向もある

  • ついでに、「俺っちはいつも完璧だけど、別に努力してないんだぜ!」と振る舞う若者が増えている証拠もある

 

「やればできる!」って考え方が悪いとは言わないものの、それが完璧を目指すマインドまで育ってしまうと、不安感や自己批判の温床となり、さらには「どんなに努力しても十分な成功、魅力、人気、賞賛を得ることはできな……」みたいな気持ちを生むらしい。んー、これまた辛い。

 

 

研究チームいわく、

 

大人も学生も、「幸福への道は有名大学に入ることだ」という共通の信念を暗黙のうちに支持している。(中略)そのため、高学歴で裕福な学生の間では、このようなプレッシャーが特に強くなり、つねに「目標を達成しなければならない」という切迫感に追われてしまう。

 

若者の努力はもはや個人的な願望や意志によるものではなく、現代の若者はプレッシャーに動かされている。(中略)このプレッシャーは、日常のストレスと合わさって圧倒的なものとなり、不安や抑鬱の高まり、演技的な行動、さらには苦痛からの解放を目的とした物質乱用を引き起こす。

 

私たちは、全国にはびこるできるのだから、しなければならない」という生き方が、短期的にも長期的にも、個人にも社会にもどのような影響を及ぼすかを真剣に考えた方がよいだろう。

 

とのこと。「目標に向かってがんばるぞ!」って心意気は良いものの、現代では多くが外部からのプレッシャーがモチベーションになってるケースが多く、そのせいでどんどんメンタルを病んでいく若者が多いんだってことですね。

 

 

ちなみに個人的には、この文献の中盤で紹介されている「現代の遊びはストレス解消に役立ってない!」ってあたりが心に残りました。ざっと引用すると、

 

いまの遊びは堕落している。子供たちの遊びはプロ化されており、チームスポーツは楽しい時間を過ごすことではなく、スキルを身につけることや勝ち負けにこだわる行為になってしまっている。

 

現代ではスポーツも競技性が強くなりすぎ、シンプルに自分の体を動かす歓びや、遊び場で友人とコミュニケーションを取る要素が失われてるぞ!って話でして、これは「最高の体調」で強調したポイントと似てますね。

 

 

もっとも、以上の話は「目標を持つのが悪い」って話ではなく、実際に過去のデータでも「目的を持っている青年は、人生の満足度が高く、強いアイデンティティを持ち、心理的に成熟している」って報告のほうが多いんで、そこはご注意ください。あくまでも「やるかやらないかだ!」イズムに巻き込まれると危ないよ!みたいな話なんで。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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