アイコンタクトをすれば本当に会話は盛り上がるのか?問題
コミュニケーションにおけるアイコンタクトの重要性を否定する人はおらず、過去にこのブログでも「他人と目を合わせるのが苦手で……を解決するにはどうすればいいのか?問題」みたいな話を書いております。
でもって、新しくダートマス大学などから出た研究(R)では、「アイコンタクトは会話にどんな役割を果たしているのか?」ってあたりを調べてて有用でした。
これがどんな研究だったかと言いますと、
- 大学生のペアに研究室に呼ぶ
- アイトラッキンググラスをかけて向かい合って座り、10分間の会話を指示
- しばらく自然な会話をしてもらった後、その会話のビデオを見て「この話をしているときは夢中になった!」みたいなコメントをリアルタイムで行ってもらう
- アイコンタクトが行われている時間、会話中の注意の楽しさなどとどのように関係しているかをチェックする
みたいになってます。アイコンタクトの時間やタイミングと、会話の内容やら盛り上がりにつながりがあるのかを調べたわけっすね。
その結果、なにがわかったかと言いますと、
- 会話中にアイコンタクトが起きているとき、ふたりのあいだには注意力の共有が起きている(つまり、会話への没入レベルが高い)
- ただし、そのままアイコンタクトが続くと注意の同期性は低下していく。これは会話がマンネリ化するのを防いでいる可能性がある
- アイコンタクトの頻度と、会話への参加度の高さには相関関係がある(つまり、アイコンタクトが何度も起きる人ほど、自分からガンガン発言しやすい)
みたいになります。アイコンタクトには没入感があり、ふたりが会話をしているときには「注意力の共有」レベルの高さ、つまりお互いの意識が同期をしていることを示しいるんだそうな。
ただ、これは「アイコンタクトをすれば会話が盛り上がる!」って話ではなく、研究チームは「アイコンタクトってのは、必要に応じて注意の共有を中断する(同期性を低下させる)役割を果たしているのでは?」と推測しておられます。
これまでは、アイコンタクトがふたりの同調性を生み出すと考えられてきたが、今回の発見は、事実はそんな単純なものではないことを示唆している。
私たちは、すでに同調しているときにアイコンタクトをとるが、どちらかというと、アイコンタクトはその同調を崩すのに役立つようだ。アイコンタクトは、新しい考えやアイデアを得るために、一時的に同期を崩すのに有効なのかもしれない。
ちょっとわかりにくい話ですが、要するにこういうことです。
- ふたりの注意が同期すると、ふたりのあいだに「つながり」が生まれ、会話が楽しい感じになっていく
- しかし、そこで注意が同期したままだと、ふたりの発想が同じようなものになり会話がマンネリ化して、つまらない感じになっていく
- そこでアイコンタクトが行われることで注意の同期が低下し、新しいアイデアを生み出すための思考スペースが確保される
ってことで、アイコンタクトってのは、会話のなかで提示された独自の思考や知識などをまとまりのあるものにし、発展させるために必要なメカニズムなのかもしれないって考え方ですね。
さらに研究チームいわく、
会話とは、アイデアを生み出したり、交換したり、規範を磨いたり、絆を築いたりするために心が出会うプラットフォームだ
アイコンタクトの瞬間は、共通の理解が得られたあとで、それぞれの独立した知識を提供する必要を示すシグナルのようだ。
とのこと。本当に会話を盛り上げるためには、シンプルにアイコンタクトをすればいいってもんではなく、常に会話の同期と解除を意識しなければならないのではないか、と。
こう考えると「アイコンタクトをしなければ……」とか意識するよりも、「いま会話が同じ意見ばかりになったから、ちょっと別の意見をぶち込んだ方がいいのでは?」みたいなポイントをモニタリングした方がいいような気がしましたね。