今週半ばの小ネタ:人生が36分短くなる食品、ナッツで頭が良くなる説、もはや腸内細菌も臓器だ説
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
ホットドッグ1個で人生が36分短縮される?説が出てた件
ホットドッグ1個で人生が36分短縮されるのでは?って研究(R)が出ておりました。これはミシガン大学などの調査で、どういう研究だったかと言いますと、
- アメリカ人がよく食べる5,853種類の食品を分析する
- それぞれの食品が、どれだけ健康的か不健康かを「健康栄養指数(HENI)」で測定
- それぞれの食品が「寿命を延ばすか延ばさないか」を比較
みたいになります。もちろん、寿命が延びるかどうかは推定するしかないんですが、研究チームいわく、
HENIは、さまざまな障害や死亡の原因を調べた「世界疾病負荷調査」における、15の食事要因を考慮している。
これらのデータでは、牛乳、ナッツ・種子、果物、カルシウム、魚介類、食物繊維、多価不飽和脂肪酸(PUFA)をふくむ食品に関する健康上のメリットと、加工肉、赤身肉、トランス脂肪酸、砂糖入り飲料、ナトリウムを含む食品に関連する健康上のデメリットがカバーされている。
これらの食事要因のそれぞれについて、摂取した食品1グラムあたりに失われる、または得られる健康上の分数を推定した。
とのこと。あくまで推定値ながら、ちょっとおもしろい研究ですね。
で、その結果をざっくり見てみると、
- 加工肉1gあたり0.45分の寿命が失われるっぽい
- 果物1gあたり0.1分が寿命にプラスされるっぽい
- 加工肉、ナトリウム、トランス脂肪酸が多い一般的なホットドッグは、人生を36分短くする計算になる
- その他の寿命を縮める可能性がある食品としては、ベーコン(1食あたり6分30秒)、ピザ(7分8秒)、ダブルチーズバーガー(8分8秒)などが挙げられる
- 寿命を延ばす食品としては、サーモン(1食あたり13分5秒)、バナナ(13分30秒)、アボカド(2分8秒)などが挙げられる
- 魚介類は10分〜70分程度の寿命を延ばす効果があるかもしれない(時間が幅広いのは、魚によってオメガ3系脂肪酸の含有量が違うから)
みたいになります。基本的には、パレオダイエットや地中海式ダイエットのガイドラインを守ってれば、そうそう問題はなさそうっすね。こう考えると、アメリカのフードファイターとか大変なことになってそうな気がしますなぁ……。
くり返しになりますが、これらの推定値はめちゃくちゃ大まかなものなので、健康的な食生活を送るためのガイドラインとかモチベーションアップ用に使うのが正解でありましょう。もちろん、ホットドッグを食べるたびにビクビクする必要もなくて、あくまで全体的な食事の方向性を決めるよすがにしていただければとー。
ナッツをよく食べる人は頭がいいんじゃない?仮説
ナッツをよく食べる人は頭がいいんじゃない?みたいな話(R)が出ておりました。ナッツ類には、多価不飽和脂肪酸、植物ステロール、ポリフェノール、マグネシウムなどが多くふくまれているんで、昔から「ナッツを食べると認知機能の低下防止に役立つのでは?」と言われてきたんですよ。
これがどんな研究だったかと言いますと、20歳以上のカタール人1,000人を、過去の健康調査データからランダムに抽出。アンケートの回答をもとに、みんなのライフスタイルと食習慣のデータを収集。これに加えて、全員の病歴や健康状態などを調べたうえで、コンピュータテストで認知の平均反応時間(MRT)を測定したんだそうな。
でもって、どんな結論が出たかと言いますと、
- 参加者のうち21.1%がナッツ類を週の4〜6回以上摂取していると回答した(高摂取グループ)一方、40.2%が月に1回以下の摂取だと回答した(低摂取グループ)
- 全体として、ナッツ類の消費が多い人ほど認知の反応速度がはやく、その傾向は主に50歳以上で見られた
だったそうです。ナッツ類を習慣的に多く摂取すると、特に高齢者の場合は、認知機能を高めてくれるかもしれないんだ、と。まぁMRTでしか認知機能を測定してないし、観察研究としてはサンプル数が少なめだし、具体的なナッツ類の量や種類もわからないって問題もありますんで、あくまで参考レベルの話だよなーって印象ではありますが(認知機能とナッツ類の摂取量に関連性がないとする研究もいくつかありますし)。
とはいえ、ナッツが栄養価の高い優良食材なのは間違いないので、認知機能に良い影響があればいいなーぐらいの気持ちで食事に取り入れるのはアリでしょうね。
薬の成分が腸内細菌の活動を変えて、薬の効きを悪くするかも?
よく使われる薬が腸内細菌を乱して、そのせいで薬の効果が薄れるかもだぞ!みたいな話(R)が出ておりました。
これはケンブリッジ大学MRCの研究で、どんな話だったかと言いますと、
- 25種類の一般的な腸内細菌を培養する
- よく使われる15種類の薬をそれぞれの細菌株に与える
- どんな反応が出るかを見る
みたいになってます。合計で375パターンの細菌-薬剤テストを実施して、一般薬によって腸内細菌に影響が出るのかどうかをチェックしたわけですね。チェックされたのは、鬱病、糖尿病、喘息の薬などで、日本でも普通に使われる処方薬が多めであります。
でもって、その結果がどうだったかと言いますと、
- 細菌と薬剤のあいだに70の相互作用が確認され、そのうち29はこれまでに報告されていないものだった
- 抗鬱薬のデュロキセチンや抗糖尿病薬のロシグリタゾンなどは、バクテリアに蓄積される傾向があったす。モンテルカスト(喘息治療薬)やロフルミラスト(慢性閉塞性肺疾患治療薬)などは、ある種の細菌には蓄積され、他の細菌には活動のパターンを変える傾向が認められた
みたいになります。簡単に言えば、一般的な薬が腸内細菌にたまっちゃって、そのせいで細菌の機能が変わり、最後には薬の効果が低下するかもしれないんだよーってことです。
もちろん、これはまだ基礎的な分子研究の段階なので、実際の人体にどんな反応が出るかはわからんのですけど、研究チームの方々は、
マイクロバイオームを臓器のひとつとして扱うことが求められている。
と発言してまして、「あー、良いコメントだなー」とか思いました。