今週末の小ネタ:抗酸化サプリでうつが減る? タンパク質でメンタル強化? 男らしさにこだわると寿命が縮む?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
抗酸化サプリででうつ病や不安の症状が減るかもよー
抗酸化物質が脳に良いのはほぼ確実で、このブログでも脳を劣化させたくなきゃポリフェノールなんかを摂ろうぜ!って話を何度かしているわけです。
で、新たなメタ分析(R)も「抗酸化物質と脳の関係」に焦点を当てたもので、
- 抗酸化物質でうつ病や不安の症状は減るか?
を掘り下げてます。酸化ストレスが多い人ほどうつ病や不安障害が起きやすいことは昔から有名なんで、抗酸化物質を飲めばメンタルが改善するのでは?と考えるのは当然なんですよ。
これは52件の過去データをまとめたメタ分析で、合計4,049人の参加者(平均年齢9~76歳)を対象に、抗酸化物質サプリがうつ病(52試験)と不安(21試験)にどのような効果があるかを調べたものです。
研究の対象になった抗酸化物質は、
- 亜鉛(9試験)
- マグネシウム(8試験)
- セレン(4試験)
- コエンザイムQ10(5試験)
- 茶/カフェイン(6試験)ロディオラ(3試験)
- クロシン(4試験)
- レスベラトロール(2試験)
- カロテノイド(2試験)
- アントシアニン(1試験)
- 以上の抗酸化物質の組み合わせ(8試験)
みたいになってます。実験の期間は2週間から2年にわたってまして、そこそこ大規模な研究ですね。
では、結論を見てみましょうー。
- メインの分析では、抗酸化物質のサプリを飲むことで、うつ病の症状と不安が改善しされることがわかった(どちらも中程度の効果量なので、悪くない結果だと思う)。
- サブグループ分析では、亜鉛、マグネシウム、セレン、コエンザイムQ10、茶/カフェイン、クロシン、または抗酸化物質の組み合わせが、うつ病に対する効果が有意になった。
ってことで、亜鉛、マグネシウム、セレン、お茶あたりは、手軽に摂取できてメンタルにも良い(かもしれない)サプリとしてアリかもしれません。
ただ、全体的に見るとデータのバイアスは高めで、17試験でリスクが高めと判定されているのあたりは注意を。私としては、「まぁ抗酸化物質を飲むのは脳に良いだろうな」と思ってますけど、追試で覆るかもしれないんで。
タンパク質をよく食べる人ほどメンタルが強い?
タンパク質を多く摂取している人はメンタルが強いぞ!ってデータ(R)が出ておりました。
こちらは134名のアスリートを対象にしたテストで、まずは参加者に「3日間で食べたものをすべて記録してね!」と指示。この記録をもとにみんながどれぐらいの栄養を摂っているのかを分析し、これを全員のメンタルの状態と比較したんだそうな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 研究スタート時の調査では、13.9%の参加者が、中等度から重度の抑うつ症状を訴えていた。
- 約1年後に行った2回目の評価では、上記の割合が11.4%(11名対9名)になっており、タンパク質の摂取量が多い人ほど抑うつ症状のレベルが低くなっていた。
- 脂肪と糖質の摂取量には、抑うつ症状との関連がなかった。
ということで、研究チームは、「この研究でわかった重要なポイントは、思春期のアスリートは、タンパク質の摂取量が多いほど、その後の抑うつ症状が軽いことを予測できるという事実だ」とコメントしておられます。
もちろん、「3日間のみの食事評価で、本当に正しい栄養量を評価できるの?」という問題はありますし、「なんでタンパク質がそこまでメンタルと関係するの?」って疑問の答えは出せないわけですけど、「やっぱ日々の食事はタンパク質を優先しよう……」とあらためて思わせる結果じゃないでしょうか。
男らしさにこだわると寿命が縮むぞー
「男らしさはオワコン!」って話は何度もしていて、
みたいなエントリを書いてるわけです。
現代においては、「男らしさ」にこだわる態度がメンタルの悪化をもたらしており、「弱みを見せない」だとか「恐れず勇敢に戦う」みたいな昔ながらのマッチョイズムにとらわれていると死ぬぞって話です。まー、「弱みを見せないぞ!」「男はタフでなければ!」みたいな態度がつねに成功するはずはないので、マッチョイズムが失敗するたびにメンタルが損なわれてしまうのは当然でしょう。
で、新たな研究(R)も「男らしさ」の問題を扱っていて、まず結論から申し上げますと、
- 「男らしさ」にこだわる社会で暮らす男ほど寿命が短い!
って感じです。従来の「男らしさ」研究はメンタルの問題に焦点を当てたものが多かったですが、ここでは健康被害をあつかってるわけですね。
具体的には、この研究は、世界62カ国で集めた33,417人の大学生を対象にしたもので、当然ながら日本人もふくまれております。調査ではみんなのジェンダーの信念や態度を調べ、各国の「男らしさをどれだけ信じているかスコア」を作ったそうな。
ちなみに、ここでは「男らしさ」を以下のように定義してます。
- 「男らしさは、タフネス、コントロール、優位性を示すことによって獲得され、つねに維持しなければならないものである」という考え方
いかにも疲れそうな考え方ですけど、こういう信念を持っている人は、いまも少なからずいるでしょうな。
でもって、以上のデータを、各国の健康データとくらべたら、結果はこんな感じになりました。
- 男らしさの信念を強く持っている国ほど、男性は喫煙や大量飲酒のように健康リスクの高い行動の量が多い。
- ついでに、肝硬変や交通事故などで命を落とす確率も高かった。
- さらには、男らしさの信念が強い国ほど、男性の一般的な寿命や健康寿命が短く、男らしさの信念が低い国に比べて男性の平均寿命が6.69年短く、健康寿命が6.17年短かかった。
「男らしさ」にこだわるだけで寿命が7年も縮むかもしれないという、実に恐ろしい話であります。思ったよりもすごい差が出るもんですな。
ってことで、無駄に寿命を縮めないためにも、自分の内面をモニタリングしつつ「男らしさにこだわってないか?」と考えてみるのは良い習慣かもしんないですね。