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2023年3月に読んでおもしろかった4冊の本と、その他の4本の映画と1本のライブ

 

月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2023年3月版です。今月は25冊ぐらいの本を読んだのと、わりとそのなかからおもしろかったもののご紹介です。

 

ちなみに、ここで取り上げた以外の本や映画については、TwitterInstagramのほうでも紹介してますんで、合わせてどうぞー(IFTTTのTwitter転送が失敗することが多いので、基本はInstagramがメインになってますが)。

  

 

彼らはどこにいるのか

 

「宇宙人って本当にいるの?」という素朴な疑問に関する、最先端の知見を教えてくれる本。

 

といっても、銀河を探索する最新テクノロジーを掘り下げるだけでなく、進化論や神経科学の知識まで使いつつ、「そもそも人間とはどのような生き物なのか?」を掘り下げていくあたりに激しくうなずかされました。地球外の知的生命体とガチでコンタクトを取りたいなら、もっとも身近な知的生命体であるヒトを知らねばならないのだ!ってことですね。

 

というわけで、宇宙人研究の先端を学びつつも、読み終わったあとは人間そのものの理解も深まるナイスな一冊じゃないでしょうか。

 

 

 

もっとホワット・イフ?

 

前作もおもしろかった「ホワット・イフ?」の続編。「酔った人の血を飲んだらどこまで酔っぱらう?」とか「世界中の冷蔵庫の扉を空けたら気温は下がる?」といった「パネェ質問」に真面目に答えていく本で、今回も楽しく読めました。

 

が、楽しいだけの本ってわけでもなく、ここで使われてる思考法は、多くの科学者が意識せず日常的に使っているものなので、身につけておくと何かと便利だったりするんですよ。本書は、「パネェ質問」のおかげで、科学者が使う推論の手順がわかりやすくなってまして、役立つ思考法を学ぶためにも使えるなーと思った次第です。

 

 

 

習慣と脳の科学

 

習慣化が大事なのは誰でもわかってるけど、「そもそも習慣化が起きるときの脳のなかでは、どんな変化が起きてるの?」を掘り下げてくれる本。みんな「習慣」って簡単に言うけど、それって記憶とは別物なの? シナプスや神経伝達物質はどう関わってるの? などの疑問に取り組んでくれるわけですね。

 

もちろん、「この本を読めば習慣化が楽に!」ってわけにはいかないんだけど、根本的な脳の仕組みを理解することで、「あー、だから環境の設計が大事なんだな」とか」「習慣化はトリガーの調整が重要ってのはそういうことか」といったあたりが腑に落ちるのは間違いなし。小手先のテクニックよりも、ここらへんの知識を押さえておくほうが長期的には有用だったりしますんで。


 

 

 

おいしいごはんが食べられますように

 

第167回芥川賞受賞作。平凡な職場で起きた平凡なトラブルを描く群像劇なんだけど、各自が表明する利害が食い違いにより、少しずつ問題が大きくなっていく様子を「食事」に仮託して描いていて、「なんてうまいんだ!」と思いながらの読書でありました。

 

読み終わったあとに「みんな美味しい料理を食べたいだけなのに、それが問題の種になるんだよなぁ……」と思わせるタイトルも絶妙ですね。

 

 

 

イニシェリン島の精霊

 

ある島に住むおじさんが、ある日、親友のお爺さんから理由もなく絶交される話……と聞いても全くおもしろくなさそうですが、私のなかでは現時点で今年のベスト。ひとことで言えば「世の争いはなぜ起きて、いかにエスカレートするか?」を描いた寓話で、その点では「おいしいごはんが食べられますように」に近いところもありますね。

 

見た目ほど辛気臭い作品でもなく、最初から最後までダークなユーモアが展開する作りが超好み。やや陰惨な話にもかかわらず、最後まで笑いっぱなしでありました。

 

 

 

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

 

マルチバースに放り込まれた初老の女性がカンフーで世界を救う、第95回アカデミー賞受賞作。といっても堅苦しさはゼロで、全編にわたって下ネタとくだらないギャグが続く作りで、おバカ系SFエンタメとして楽しめました。

 

情報の密度が特濃なので、最初は「何を言おうとしてるんだろ?」って感じでしたが、つまるところ「世の中には無限の可能性があるけど、やっぱ愛する人がいる世界を選ぶでしょ!」みたいな話だとわかってからは、エモさ全開でよかったですね。にしても、ミシェル・ヨー姐さんが主演女優賞を取るんだから、良い時代になったもんです。

 

 

その他もろもろ
  • フェイブルマンズ:スピルバーグ先生が撮った「映画についての映画」。映画作りのメリデメを複数の視点から表現したウェルメイドな作品で、なんらかの表現活動をしている人なら、響くものがあるんじゃないでしょうか。最後まで洒脱な演出もいいですねぇ。

 

  • バビロン:「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル先生が撮った「映画についての映画」。「映画の基本は猥雑だ!」「映画の根源は見世物だ!」って考え方をベースに、映画黄金期のムチャクチャを描くパワフルな作品でした。ずっと下品な映画なんだけど、私は好き。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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