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ピューリッツァー賞ジャーナリスト「人間の能力は50代以降から本当に最高になっていくんだぜ!」


  

ナー・カントリー」って本を読みました。著者のスティーブン・コトラーさんはサイエンス系のジャーナリストで、「超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験」「ZONE シリコンバレー流 科学的に自分を変える方法」などで有名な方です。人間のパフォーマンスに関する世界的な専門家の一人ですね。

 

 

で、本書はタイトルだけだと意味がわからんですが、ひとことで言ってしまえば、

 

  • 昔は「歳を取ったら衰えるだけ」と思われてたけど、実際にはそんなことはないどころか50代以降からピークになるよねー

 

みたいになります。かつては人間の能力は30代から衰えていく一方だったと言われてきたんですが、実際はそんなことないんじゃない?ってのがコトラーさんの主張で、本書でも、著者自らが50代を超えた肉体をガンガン追い込んでいく姿を描いてるんですね。その点で、私のようなアラフィフには、かなり勇気をもらえる一冊ではないでしょうか。

 

 

ということで、本書から個人的に勉強になったポイントをピックアップすると、以下のようになります。

 

 

  • 伝統的な考え方では、私たちの能力は時間とともに低下し、その進行を止めることはできないとされてきた。しかし、私たちの心身の能力は不可逆的なものではない。人間の能力は大半が30代から低下し始めるが、近年の神経科学では、これらの能力はすべて「使わないとダメになる」系のスキルであり、ひたすら使い続ければ、人生の後半まで能力を伸ばせることがわかってきた。つまり、晩年のトレーニングが重要になる。

 

 

    • この問題に立ち向かうための第一歩は、老化に対する考え方を変えることである。加齢に対してポジティブな考え方、たとえば「人生の後半は可能性だらけだ!」「歳を取ったほうが最高の日々が待っている!」と思うことで、寿命は7年半ぐらい伸びることがわかっている。この発見はかなり強固なもので、加齢に対する考え方を変えることは、禁煙やダイエットと同じぐらい長寿に影響を与える。

 

 

  • 加齢に対するネガティブなステレオタイプは世界中に存在するが、これは恐怖と誤った情報に基づく偏見でしかない。歳を取った人たちを衰えた人のように扱うと、それが精神に内面化されてしまい、全体の幸福に直接的な悪影響を及ぼす。

 

 

  • 近年の研究によると、人生の晩年は新たな成長段階であり、脳に3つのポジティブな変化が起こることが分かっている。

    第一に、ある種の遺伝子は経験によってのみ活性化する。つまり、脳は時間をかけて自己を改造し続け、晩年からさらに人格に深みと知恵を加えていく。

    第二に、脳が若いころに使われていなかった部位を使うようになり、加齢による認知機能の低下を補うことができるようになる。

    第三に、脳の情報処理能力は60歳から80歳にかけて最大の密度と高さに達し、脳の両半球の情報流通がどんどん改善する。

 

 

  • 以上3つのポジティブな変化は、歳を取ってもトレーニングを重ねることで年齢とともに向上し続け、以下のような思考が身につくようになる。

    ・相対思考:絶対的な真理はほとんどなく、ほとんどの現象は相対的であり、白黒をつける思考には惹かれなくなっていく。

    ・非二元思考:対立する意見をすぐにジャッジするのではなく、同じコインの両面を見ることを学び、そこに寛大な心が生まれる。

    ・体系思考:大局的に考えることが得意になり、木だけでなく森も見られるようになっていく。

 

 

  • 以上をふまえると、歳を取った人間の能力は「年齢を重ねてもできる」ではなく「年齢を重ねたからこそできる」ものだと考えられる。

 

 

  • このような能力を育てていくためには、大きく以下のような段階を経ていくのが望ましい。

    1. 30歳までに、自分がどのような人間なのかを把握し、アイデンティティを固めておく。

    2. 40歳までに、好奇心、情熱、目的、自律性、達成感という5つの内発的動機を満たしながら生きる方法を考えておく。

    3. 50歳までに、昔の恨みやネガティブな感情を忘れ、感情の整理をする。

 

 

  • 晩年になってもさらに能力を伸ばすための最良の方法は、つねに挑戦的な活動、社会的な活動、創造的な活動をくり返し、意図的にフロー状態に入り込む作業を続けることである。フロー状態は、最高の気分で最高のパフォーマンスを発揮できる意識状態を意味し、これにより新たなニューロンが形作られていく。



  • また、当然ながら身体の健康も重要で、筋力、スタミナ、バランス、敏捷性、柔軟性をすべて鍛えておく必要もある。これらはすべて「使わないとダメになる」系の能力の典型なので、年齢を重ねるにつれて定期的に鍛えねばならない。

 

 

  • もうひとつ重要なのは、「意図的な遊び」と呼ばれる考え方で、自意識や恥ずかしさを捨てて、真新しい環境のなかで本気で遊ぶことを意味する。このようなダイナミックな遊びを続けたときも、新しいニューロンの誕生がうながされ、認知機能の低下を防ぐことにもつながる。つまり、海馬に新しいニューロンを生み出させる最も簡単な方法は、新しい環境で感情を揺さぶるような経験をすることである。

 

 

ってことで、以上のような知見をふまえ、コトラーさんは「人生の後半は最もスリリングで成功しやすい時期だ!」と言っておられます。確かに、個人的にも歳を取るほど相対思考と非二元思考あたりが自然と育って気がしてまして、そのぶん生きるのが楽になったとしております(それを人は「丸くなった」と呼ぶのかもですが)。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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