「男らしさ」はオワコン!そんなもんにこだわってると鬱病と不安に取りつかれるぞ!というアメリカ心理学会の話
「現代を生きる男のガイドライン」って文書をAPAが出しておりました(1)。APAはアメリカ心理学会のことで、世界でも最大級の学会であります。
もともとAPAでは「いろいろ状況が変わった現代では、みんな今までどおりには生きられないよねー」って問題意識がありまして、これまでも「女性版ガイドライン」(2)や「LGBTQ 版ガイドライン」(3)などを公開してきたんですよ。で、今回は晴れて男性版が発表された次第です。
さて、では今回のガイドラインの骨子はシンプルで、
- 伝統的な”男らしさ”はオワコン!
のひとことにつきます。APAが定義する「伝統的な男らしさ」ってのは、
女性らしさへの対抗心、達成への欲望、弱さを見せることへの忌避感、冒険心、リスク選好、暴力といった基準が集まった価値観。
だそうで、いわばジェームズ・ボンド的な価値観や行動基準みたいな感じっすね。「男は強くあらねば」やら「男は動じない」やら、そういった昔ながらの価値観が、現代の男性のメンタルを激しくヘコませてるんだ!って話ですな。
事実、先のリーマンショック以降は世界的に男性のうつ病が増え、女性よりも自殺率が高い傾向が見られたんですが、これなどはまさに「昔ながらの男らしさ」の弊害ではないか、と研究チームは考えておられます。
「伝統的な男らしさ」とは、ストイシズム、競争的、支配的、攻撃性などの特徴を持った価値観のことだ。しかし現代の研究では、これは全体的に害が大きいことがわかっている。
「男らしさ」は心理的に悪影響が大きく、男性同士がコミュニケーションを取る際に、互いの感情を抑圧させる方向に働き、内から外からダメージをあたえる。
自分の感情を偽ると、風邪は引きやすくなるし人間関係も悪くなるぞ!みたいな研究は昔からありましたが、そこに伝統的な価値観が一役買ってるんだって話ですね。
さらに、伝統的な男らしさの価値観は、男性の心理的な発達を阻害し、行動を制限し、性的な役割に衝突をあたえ、メンタルにもフィジカルにも悪い影響をもたらす。
ってことで、「男らしさ」をフルボッコにしておられます。実際のところ、少年を対象にした研究などでは、男らしさを重視する人ほど同性愛を嫌悪し、いじめを行い、セクハラに手を出す確率が非常に高かったそうな。「美女と野獣」のガストン的な
が、とはいえ、このガイドラインは、「男らしさ」に対する考えを根っこから変えようと言ってるわけではなかったりします。
男らしさの定義には、力強さや勇気などもふくまれる。これらの要素をすべて取り除きたいわけではない。
なので、とりあえず「男らしさ」がもたらす悪影響をやわらげる方向で考えようぜ!ってことでして、具体的には、
- 「男らしさ」は不安の素だと考えたほうがいいよ!
って視点が強調されております。確かに「男らしさ」は有害なんだけど、ただディスってててもしょうがないから、「私たちを不安にさせる要素」のひとつだととらえたほうが健全だよ、という。ざっくり言えば、
- 「男らしくあらねば!」と思う
- しかし「男らしくできない自分」に意識が向かう
- 不安が生まれる!
みたいな流れでして、ここで生まれた不安が暴力や鬱病のもとになるんだなーってメカニズムを押さえておくのが第一歩となりましょう。まぁ若い人ほど「男らしさ」へのこだわりは少なくなった気がしますが、私と同世代だと、まだまだ悪影響は大きい気がしますからねぇ。