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筋トレってどれぐらい休んだら筋力が壊滅しちゃうんだろう?を調べたメタ分析の話

 

こないだスパルタンレースってのに参加したら、肩を痛めたんですよ。雲梯に挑んだ際に思い切り肩が抜けて、Tシャツを自分で脱げないレベルの激痛が走りまして。

 

 

おかげでレースから2週間が過ぎた今も痛みが去らず、筋トレがほぼできていなかったりします。いやー、肩をいわすと辛い……。

 

 

筋トレをどれだけ休んだら、筋力は取り返しがつかなるなるのか?

ってことで、そんな私に参考になったのが、ポアティエ大学などのチームが行ったメタ分析(R)です。この研究がなにを調べたかと言うと、

 

  • 筋トレをどれだけ休んだら、筋力がガタガタに低下しちゃうのか?

 

みたいになります。ケガや旅行などで筋トレを休まねばならない場面は誰にでもありましょうが、それによってどれぐらい筋力が下がるのかをチェックしたわけですね。

 

 

具体的には、チームは「筋トレを中止したら筋力はどうなる?」って問題を調べた過去のデータから103件をピックアップし、大きな結論を出してくれてます。メタ分析としてはかなりデータ量が多めでして、これは信頼できそうな気がするわけです。

 

 

ここでチェックしたポイントは、筋トレを止めたあとで、以下の3つがどう変化するかです。

 

  1. 最大筋力(1-5RM筋力またはダイナモメーターで評価)

  2. 最大パワー(ジャンプの高さ、スプリントテストなどで評価)

  3. 筋持久力(6RM以上の筋力、等速性疲労テストなどで評価)

 

筋肉量の変化がチェックされてないのが残念ですけども、筋力も十分に気になるポイントなので、まことにありがたいことですなぁ。

 

 

 

筋力、意外と低下しないらしい

で、分析の結果は、以下のようになりました。

 

 

  • 筋トレ中止が筋力の低下に与える影響

    • 最大筋力は、最大28日間のトレーニング中止後もほとんど影響を受けない(g < 0.2)

    • しかし、トレーニング中止が28日を過ぎると、筋力の低下はどんどん加速した。

    • 上半身と下半身の筋力は同じぐらいの割合で失われていき、男性も女性の筋力低下スピードも同じぐらい。

    • 高齢者(65歳以上)は、若年者(65歳未満)に比べ、約2倍のスピードで筋力を失っていく(高齢者の効果量はg= 0.76で、若年者はg= 0.31)。

 

 

  • 筋トレ中止が最大パワーの低下に与える影響

    • パワーの低下は、最大筋力の低下よりも小さい。その影響力は、トレーニングの停止期間が長い場合(113~224日)ほど顕著になる。

    • トレーニング中止後の最大パワーの低下に、上半身と下半身、男性と女性の違いはなかった。

    • 高齢者の最大パワーの低下は、若年者よりはるかに大きかった(高齢者の効果量はg= 0.46で、若年者はg= 0.18)。

 

 

  • 筋トレ中止が筋持久力の低下に与える影響

    • 最も悪影響が大きいのは筋持久力で、そのレベルは筋力や最大パワーよりも大きかった。

    • トレーニング中止後の筋持久力の低下に、上半身と下半身、男性と女性の違いはなかった。
    • 齢者の筋持久力の低下は、若年者よりはるかに大きかった(高齢者の効果量はg= 0.85で、若年者はg= 0.48)。

 

 

ということで、こうやって見てみますと、65歳以下であれば、1ヶ月までならトレーニングを中止しても、筋肉のパフォーマンスは大きく低下しないって感じですね。もちろん、ジムにもどって数回はかなり苦労するかとは思いますが、わりとスピーディにパフォーマンスはもどると考えていいんじゃないでしょうか。

 

 

ちなみに、高齢者の場合は判断が難しいんですが、だいたい2週間ほどトレーニングを休んだあたりから、筋肉のパフォーマンスは激しく低下するような印象です。やっぱ歳を取るほど定期的な筋トレが必要になるんでしょうなぁ(それだけケガに気をつけねばなりませんな)。

 

 

 

マッスルメモリーでどこまで筋肉は復帰する?

さらに余談ですが、このようなテーマを目にすると、誰もが気になるのが「マッスルメモリー」でしょう。いわゆる筋肉に刻まれた記憶のようなもので、過去にちゃんと筋トレをしていれば、ちょっと運動を休んだとしても、運動を再開すればすぐに取り戻せるよ!って考え方です。

 

 

かつては「マッスルメモリーなんて疑似科学だ!」と言われた時代もありましたが、近年はわりと支持するデータが増えているのがうれしいところ。くわしくは「マッスルメモリーの効果はどこまで続くのか」をご覧いただければと思うわけです。

 

 

ただし、残念ながら、マッスルメモリーのおかげで、どれぐらいの期間で筋肉がもどるのかは、まだよくわかっておりません。たとえば、1ヶ月ほどトレーニングを休んで、1年かけて鍛えた筋肉を失った場合に、どれぐらいの筋トレで元のレベルにもどせるかは、なかなか判断しづらいんですよ。

 

 

もっとも、いちおう一部の研究(R)では参考になる結果も出てまして、参加者に「7週間の筋トレ→7週間の休憩→7週間の再筋トレ」ってプロトコルを指示したら、最初のトレーニングが終わった時よりも、再トレーニングが終わった時の方が、大幅に体力と筋力が向上してたそうな。要するに、7週間で失った筋肉量と筋肉を取り戻すのには、7週間もかからないってことですね。

 

 

このほかにも、24週間の休憩で失われた筋肉は、12週間の再トレーニングでもどったって研究(R)もありまして、個人的には「筋トレを休んでも、思ったよりスピーディに元の状態に復帰できるんだなぁ……」とか思っております。非常にざっくりした感想ですけど。

 

 

いずれにせよ、上記のデータを見た結果、「筋トレは1ヶ月を超えて休まないようにしよう……。もしそこまで休んでも、まぁ2週間ぐらいやれば取り戻せるだろう……」ぐらいに考えております。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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