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今週末の小ネタ:運動しても頭は良くならない? 頭が良くなる運動は「中程度」がベスト? 虚弱な肉体を改善させる2つのフルーツ?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

虚弱な肉体を改善させる2つのフルーツ

フラバノールでフレイルが抑えられる!って研究(R)が出ておりました。「フレイル」は近年のアンチエイジング研究で盛んに言われるようになったワードで、厚生労働省の定義だと、

 

加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態。

 

みたいになります。歳をとるとともに起きるあらゆる心身の低下を意味していて、こいつが起きると、

 

  • 体重がなぜか年に4〜5kgぐらい減っちゃう
  • ほぼ毎日ぐらい「何をするのも面倒だ!」みたいな気分になる
  • 歩くスピードがめっちゃ遅くなる
  • 全身の筋肉がヘタヘタになって、階段をのぼるのもおっくう
  • モチベーションが下がるので、何もしたくなくなる

 

といった問題に悩まされることになるんですよ。こうなると人生の質が激減しちゃうので、どうにか防ぎたいところなんですよね。

 

 

ってことで、研究チームは、約12年間にわたって1,701人を調査したデータを分析。研究が終わったころにフレイルの症状が出ていた人と、無事だった人の違いをチェックしたらしい。

 

 

その結果をざっくりまとめると、こんな感じになります。

 

  • 参加者の10~15%が、老年期にフレイルを経験するっぽい。
  • しかし、1日に少なくとも10ミリグラムのフラバノールを摂取すると、フレイルの確率が20%減少する。

 

このブログをお読みの方には説明不要でしょうが、フラバノールはポリフェノールの一種で、植物に自然に存在する成分。抗酸化物質として機能し、紫外線や大気汚染などによる日常的なダメージから細胞やDNAを保護してくれることがわかっております。

 

 

1日に少なくとも10ミリグラムのフラバノールってのは、中くらいの大きさのリンゴ1個を食べればOKってレベル。これだけでフレイルの確率がガッツリ下がるなら、楽勝で続けられるラインじゃないでしょうか。

 

 

ちなみに、フラバノールってのは、ほぼすべての果物や野菜にが含まれてますけど、この研究では、「リンゴとブラックベリーが特におすすめ!」ってところが強調されてました。ブラックベリーは日本だと手に入りづらいんで、リンゴを食べるのが手っ取り早いですかね。

 

 

また、研究チームは、フラバノールのなかでもケルセチンを賞賛していて、「薬物毒性による組織傷害から保護してくれるよ!」とも言っておられました。ケルセチンはタマネギに豊富ですけど、サプリとして摂取するのもありだなーといったところです。

 

 

 

運動しても頭は良くならない説が出てきた件

このブログでは、よく「運動をすると頭が良くなる!」って話を書いているんですけど、新しいデータ(R)では、「運動が脳にもたらす効果は、思ったより小さいかもよ!」という恐ろしい結論になってました。

 

 

この研究は、健康な男女11,266人のデータを検討した24のメタ分析をレビューしたもの。過去のデータでは、大半が「運動で頭が良くなる!」と結論づけていたものの、それがどこまで事実なのかをチェックしてくれたんですよ。ありがたいぜ……。

 

 

では、この研究で何がわかったかを簡単にまとめてみましょう。

 

  • このレビューに含まれる24のメタ分析のほぼすべてが、「運動が認知機能にプラスの効果をもたらす!」と結論づけていた。

 

  • しかし、これらの研究の大半は、分析の方法が最適ではなかった可能性がある。例えば、ベースラインの身体活動レベルで調整していなかったり、出版バイアス(ポジティブな結果のみが公表される傾向)が考慮されていないものが多い。

 

  • 上記のような問題を調整してみたところ、運動によって頭が良くなるかどうかは、これまでのメタ分析で推定されたものよりも実際には小さく、なかには無視できるものである可能性もなくはない

 

これらの結果にもとづいて、研究チームは、「より信頼できる科学的な根拠が蓄積されるまで、身体活動が認知健康、学業成績、実行機能を改善することを表明すべきではない 」と主張しておられます。

 

 

とはいえ、一方では、「運動は脳にめっちゃいい!」との結果を出した良質なデータがあるのも事実でして、今回のレビューをもって「『運動=脳の改善』説が否定された」って話にならないのは当然のこと。「この食い違いを、どう解釈すればいいかなー」と思っていたら、参考になるデータがもうひとつ出ていたので、次に紹介しておきましょう。

 

 

 

頭が良くなる運動は「中程度」がベスト?

ということで、次のデータ(R)も「運動による脳の改善」について調べたもので、こちらはまず結論から申し上げますと、

 

  • 運動で頭が良くなるかは、運動の強度がめっちゃ重要なのでは?

 

みたいになります。シンプルにどんな運動でも脳に良いわけではなく、運動の強度がかなり重要かもよ?という新しい知見であります。

 

 

この研究は91,084人のデータをまとめたもので、手首に着けるモーションセンサーでみんなの運動量を測定。ここから、身体活動の違いに関連する遺伝子変異を特定したんだそうな。

 

 

ここから、さらに257,854人の男女を集め、今度は日々の身体活動に関する遺伝子変異が認知機能に影響を与えているかどうかを検証。その結果、やはり「日ごろの運動が脳の昨日に影響しているよー」ってのがわかったらしい。

 

 

って、ここまでの説明を読んでも、いまいちポイントがわかりづらいかもですが、私たちにとって最も重要なのは、以下のようなポイントです。

 

  • 中程度の身体活動(早歩きとかサイクリングとか)が脳に与える効果は、激しい身体活動(ランニングとかサッカーとか)が脳に与える効果の1.5倍だった。

 

  • すべての種類の身体活動(ちょっとしたウォーキングとか)をまとめて分析した場合、認知機能への影響は見られなくなった

 

そんなわけで、ここで覚えておきたいところは、

 

  • 運動で頭を良くするためには、あんま激しい運動をするよりも、中程度の運動を維持するほうが大事である可能性がでてきた。

 

ってところですね。これがどこまで正しいかは謎ですが、運動で頭を良くするためには、疲れきらなくてもよいかもしれないわけで、これは良いニュースじゃないかと。

 

 

個人的には、心肺機能を上げてアンチエイジングするには高強度の運動を行い、BDNFを増やして頭を良くするには中程度の運動をするのがいいのかなー、とか思いました。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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