【質問】抗酸化サプリを使うと筋トレの効果がなくなっちゃうってホント?
https://yuchrszk.blogspot.com/2023/06/blog-post_614.html
こんなご質問をいただきました。
運動のパフォーマンスをあげるために、抗酸化物質を積極的にとるようにしています。いま使っているのはビーツパウダーやザクロジュー スなどです。
そうしたら、このあいだジムのトレーナーから「抗酸化物質を使うと筋トレの効果がなくなる」と言われました。これは本当なのでしょうか?
とのこと。確かに「運動の際に抗酸化物質を使うかべきか?」って問題は、よく議論されるところでして、大きく2つの考え方があるかと思います。
- 抗酸化物質は血流を適度に高め、運動ダメージの回復を早めてくれるので、トレーニングの質が上がるのだ!
- 抗酸化物質は、身体の機能を高めるのに必要な酸化ストレスを消しちゃうから、トレーニングの成果を消しちゃうのだ!
ご存じのとおり、筋トレの効果を出すためには、ある程度の酸化ストレスを肉体に与えなきゃいけないんですが、そのメリットを抗酸化物質が消しちゃうかもしれないんだよーって話ですな。
このような「トレーニングに抗酸化物質は悪影響」って考え方は、2000年代の前半から出てきたもので、いくつかのデータが抗酸化物質の問題を指摘しはじめたんですよ。具体的には、
- 2005年のラット実験(R)では、抗酸化物質を使うことで、持久力トレーニングの適応に関連する複数のシグナル伝達経路が変化したとのこと。簡単に言えば、ミトコンドリアへの刺激が薄まって「持久運動の効果が鈍っちゃうかもよー」ってことですな。
- 東大の研究(R)でも、ビタミンCを使ったラットは、筋肉の成長に関わるシグナル伝達経路がジャマされる事実が示された。
これを見ると、やっぱり抗酸化物質は運動のメリットを消しちゃうのかなーって気がするわけですけど、実際にヒトを対象にした研究では、そこまで明確な害が出ているわけでもなかったりします。いくつか事例をあげてみましょう。
抗酸化物質は有酸素運動に悪いのか?
- ノルウェー・スポーツ・サイエンス・スクールなどの研究(R)では、ビタミンCやビタミンEのサプリを使っても、4~12週間の持久力トレーニングにおけるVO2maxの改善は変わらなかった。
- マクマスター大学などの研究(R)でも、抗酸化物質を使ったところで、トレーニング後の耐久力は別に下がらなかったとのこと。
- 2020年に行われた最近のメタ分析(R)でも、 「ビタミンCとビタミンEの研究をまとめてみたけど、VO2maxや持久力への悪影響は一貫して見つけることができなかったよー」との結論。抗酸化物質はミトコンドリアの反応をジャマするけど、持久力の向上をさまげるレベルじゃないっぽい。
抗酸化物質は筋トレに悪いのか?
- ニューカッスル大学などが行った最近のメタ分析(R)(2019年)では、実際には、ビタミンCとEのサプリを使ったグループのほうが筋力に良い影響が見られた(といっても効果量=0.15だし、統計的に有意ではないので、たいしたもんでもないですが)。これを見ると、抗酸化物質の問題を心配する理由はほとんどなさげ。
- また、このメタ分析では、ビタミンCやビタミンEのサプリを飲んでも、筋トレによる筋肉量の増加にも目立った影響を与えないと報告されている。
- ノルウェー・スポーツ・サイエンス・スクールなどの研究(R)でも、32人の男女(平均25歳)に週3のペースで筋トレしてもらいつつ、ビタミンC(1000mg)とE(400IU)飲むように指示。 10週間後の変化をチェックしたところ、特に筋肉の量やサイズに目立った悪影響を与えなかったとのこと。
って感じでして、ここらへんの話をもとに、超ざっくりまとめると、以下のようになるでしょう。
- 抗酸化物質のサプリを飲んでも、有酸素運動と筋トレの発達はジャマされなさそう。
- もしかしたら、抗酸化物質で筋肉の成長がジャマされる可能性はあるけど、その心配を裏づける証拠は小規模だし、実際の影響を調べてみると「問題ない!」ってデータのほうが多い。
- ちなみに、高齢者(60歳以上)を対象にした研究では、ビタミンCとEなどのサプリを使っても、運動への悪影響はないか、「メリットが出た!」と報告したもののほうが多い。そう考えると、普段から酸化ストレスのレベルが高い人は、抗酸化物質を使ってトレーニングしたほうがいいのかもしれない。
そんなわけで、個人的には、「抗酸化物質を飲んでもトレーニングへの悪影響はない!心配しないで使おうぜ!」ぐらいの感覚でおります。どうぞよしなにー。