運動はダイエットには効かない!しかし、ダイエットの健康効果を倍にしてくれるぞ!
「運動ではダイエットできない!」って結論を示したデータは少なくないわけです。
それもそのはずで、運動によって消費されるカロリーは予想以上に少なくて、30分歩いても150キロカロリーぐらいなので、軽くお菓子とかエナジードリンクを飲んだら終わっちゃうレベル。実際、カロリー制限をせずに運動だけを続けても、体重が大幅に減ることはなく、むしろ増えちゃうケース(R)も報告されてたりしますからね。そのため、個人的には、「ダイエットのために運動しなきゃ!」とおっしゃる方には、「その前に食事の改善でしょう!」ってのをくり返し言ってきたわけです。
が、だからといってダイエット中に運動をしなくても良いのかと言われれば、もちろんそんなことはないわけです。「ネイチャー・メタボリズム」に掲載された研究(R)で、ワシントン大学医学部の先生方は、こんなことを言っておられます。
減量プログラム中の定期的な運動は、食事療法だけを行った場合と比較して、代謝に大きな付加的なメリットがある。
要するに、カロリー制限だけでも体重は減るんだけど、そこに運動を加えることで、減量による健康アップ効果が倍増するよーという話です。運動は体重の増減とは関係がないが、ダイエットのメリットを激増させてくれるわけですな。
この研究は、26人の成人を対象に複数の実験を行ったもので、そのうちのひとつでは、肥満で糖尿病の予備軍で運動もしていない男女たちに、低脂肪で植物中心の食事を続けてもらい、少しずつ体重の10%を落としてもらったそうな。
一方で、同じく肥満&糖尿病の予備軍である別の男女には、上と同じような食事を摂ってもらいつつ、これに週6回の運動を加えるように指示。運動の内容を具体的にまとめておくと、
- 週に2回、トレッドミルを使って「軽いジョギング」ぐらいの中等度の有酸素運動を約1時間
- 週1回のペースで筋トレをし、全身の筋肉をくまなく鍛える
- 週1でインターバル・トレーニング
- 残りの2日間は、自宅で各自が考えたトレーニングを行う(内容はよくわからん)
このプログラムは、参加者の体重が10%減るまで続けられ、大半の人が目標達成までにかかった期間は約5ヵ月ほど。その前後に、研究チームがいろんな健康測定を行ったところ、結果はこんな感じになりました。
- カロリー制限だけのグループと、カロリー制限+運動のグループは、どちらも体重の減り方は同じぐらいだった。
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しかし、カロリー制限+運動のグループは、体重の減り方は同じぐらいだったにもかかわらず、インスリン感受性は2倍改善していた。
- さらに、カロリー制限+運動のグループは、筋力が約13%、持久力が10%向上していた。一方で、カロリー制限だけのグループは、研究がスタートした時に比べて筋力が約2%低下し、体力も6%低下した。また、筋肉内の新生血管とミトコンドリアの数も多かった(ミトコンドリアは細胞に電力を供給するパワープラントであり、通常は多ければ多いほど良い)。
ということで、端的に言えば、カロリー制限+運動のグループは、ただのダイエッターの2倍も健康になったわけです。んー、素晴らしい。
研究チームいわく、
減量中にわざわざ運動する必要があるのだろうか? そう考えるのは当然だ。結局のところ、ほとんどの場合、身体活動は体重にあまり影響しない。
ほとんどの人にとってが、体重を落とすために運動を始めるよりも、カロリーを減らす方がよほど簡単だ。しかし、今回の研究で、運動がどれほどの効能を持つのかを知り、あらためて驚かされた。
とのこと。カロリーを減らしながら運動をすることのメリットの大きさは、研究チームにとっても意外なレベルだったみたいですね。
もちろん、これは小規模な試験だし、すべての参加者は肥満と糖尿病の予備軍だったので、健康な人でも結果が同じような結果が出るかは不明でしょう(さすがに2倍の違いは出なさそう)。とはいえ、健康な人にもカロリー制限+エクササイズの組み合わせは良いハズですんで、今回の結果を、あらためて運動のモチベーションアップにお使いいただければと思うわけです。
ちなみに、ミトコンドリアの重要性については過去にもいろいろと書いてまして、
といったあたりが参考になるんじゃないでしょうか。特に私のようなアラフィフは、どんどんミトコンドリアの総量が減り出す傾向がありますんで、ご同輩はぜひご注意ください。