ポジティブ心理学の専門家「幸福のパラドックスにハマると死ぬぞ!」
「幸福のパラドックスにハマると死ぬぞ!」というデータが面白かったので、内容をチェックしときましょう(R)。
これはカリフォルニア州立大学などの研究で、「幸福のパラドックス」ってのがどのようなものかと言いますと、
- 自分のスキルをトレーニングし、そのスキルを実際に使ってみることで、私たちは真に気分の高揚を得ることができる。このシンプルな事実がわかっているにもかかわらず、たいていの人は、できるだけ努力を必要としない簡単なアクティビティを選択する傾向がある。
みたいな現象を意味してます。私の場合ですと、本当はピアノの練習をしたほうが良い気分になれるのは間違いないのに、ついミスタードリラーで遊んじゃう……みたいな事態が典型的ですね(なので、結局はニンテンドースイッチを押し入れにしまいこんだ)。
この現象は多くの先行研究で裏付けてられてまして、ほとんどの人は、あまった時間を過ごすときに、積極的なことよりも受動的なアクティビティを選びたがるものなんですよね。言いかえれば、たいていの人は、努力を費やすことに対して「嫌悪感」を抱き、余った時間の過ごし方を考えているときは長期的な結果を考えないってことですな。
なぜ、精神的に辛い活動のほうが幸福を得られるかと言えば、こちらの方が、ご存じ「フロー体験」が発生しやすいからです。フローについては、「あなたのパフォーマンスが激増する『フロー状態』にすぐ入るための2つのポイント」を呼んでいただければ幸いですが、簡単に言えば、人間ってのは自分の能力を最大限に発揮しているときに最高の幸福感を感じられて、難しいタスクをこなすモチベーションもわきまくるぞ!みたいな考え方ですね。受け身のタスクだとフロー体験は得られず、必然的に長期の幸福度は低下しちゃうわけです。
で、このカリフォルニア州立大学などの実験も、幸福のパラドックスを検証したものでして、参加者に難易度の異なるタスクを指示し、その後の幸福度を測定したんですよ。その際には、参加者のスキルレベルも考慮していて、各自が持つ技能のレベルをチェックしたうえで、タスクの難易度を設定したそうな。
これによってどんなことが分かったのかと言いますと、
- どのよう人でも、やっぱり適度にチャレンジングなアクティビティのほうが幸福度は高まった。
- ただし、チャレンジングなアクティビティは、実際に楽しめるようになるまで著しく大きな努力を必要とする。
みたいな感じです。まぁ従来の考え方をなぞるような結論ではありますが、やはり私たちは「幸福のパラドックス」を強く意識しないと、長期的に幸福になるのは難しいのかもですな。
研究チームいわく、
ある活動から最大の楽しみを得るためには、ある程度の専門レベルに達するために、前もって時間を投資しなければならない。
その気分を高めるために必要なエネルギーを準備するための唯一の方法は、「長い目で見れば、そこからより多くの意味を得ることができる」と考えることだ。
大きなプロジェクトはいかにも大変そうで、それゆえに快楽的には思えない。そのため、将来を見据えたうえで、「このアクティビティが終わって、自分の仕事を振り返って賞賛できるようになったとき、どんなに気分がいいだろうか?」と考えてみることで、目の前の有益でない選択から自分を引き離すことができる。
とのこと。幸福のパラドックスってのは、現在の自分を基準に考えてしまうところから発生するため、この問題をクリアするには「将来の自分がどう思うか?」を考えてみるしかないんだ、と。なかなかめんどうな話ではありますが、「唯一の方法」と言われちゃうと、やるしかないかぁ……って気分になりますね。
ちなみに、この方法を実践する際は、
- 積極的なアクティビティを行なうことでスキルレベルが上がったら、自分へのご褒美を少しずつ増やしていく。
- 大きなアクティビティに取り組みやすくなるように、より管理しやすいレベルまで分解する(YourTimeで説明したアンパッキングのやり方ですな)。
といった考え方も組み込んでみると、さらに「幸福のパラドックス」を抜け出しやすくなって良い感じです。私の本で言うと「YourTime」の内容は、全体的に「未来や過去の自分との時間差をどうするか?」って視点で書いているので、この幸福のパラドックスをクリアするための参考になるかもしれません。
もっとも、今回の研究結果は、「あまった時間を使うときはつねに難しい選択をしようぜ!」って話ではないので、そこはご注意ください。どちらかといえば、この研究は、「ともすれば人間は受け身のアクティビティに惹かれがちだから、『幸福のパラドックス』って考え方をもとに選択の幅を広げようぜ!」みたいな主張ですんで。