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今週の小ネタ:チーズを食べると脳の働きが上がる? SNSをよく使う男はダサい? 体罰は子どもに悪い影響しかない


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

チーズを食べると脳の働きが上がるかも?

チーズで脳機能が上がるのでは?」みたいなデータ(R)が出ておりました。もともと乳製品(なかでもチーズ)は、以前から「脳の劣化を保護するのでは?」と言われてきたんですが、まだ一貫した証拠がなかったんですよ。

 

ということで、研究チームは、65歳以上の男女1,516人のデータを分析。このデータは、東京に住む人たちを対照にしたもので、普段からチーズをどれぐらい消費しているのかをチェックしたうえで、その結果を、みんなの脳の機能と比較したんだそうな(MMSEってテストを使用)。

 

そこで、分析の結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • チーズをよく食べている人は、MMSEで23点以下を記録する確率が低い(23点以下だと、認知機能が低下していると見なされる)。
  • さらにデータを分析すると、一貫してチーズを消費している人々は、より多様な食生活を送っていることもわかった。

 

といったところです。研究チームいわく、

 

本研究は、日本の高齢者を対象とした横断的データの解析であるが、複数の交絡因子を調整した後でも、チーズの摂取が認知機能の低下と逆相関することを示唆している。今後、因果関係を明らかにするためには、大規模な縦断的解析が必要である。

 

なぜかは分からないものの、とにかくチーズをよく食べる人ほど脳の働きが良かったわけっすね。果たして、チーズ自体が脳に良いのか、チーズを食べる人は健康的な食事をしているのが原因なのかは不明ながら、チーズ好きにはちょっとうれしいデータですね。

 

もちろん、この研究は、あくまで特定の時点のデータしか取得できていないし、因果関係も推論できないしで、これだけだと「チーズは健康食品だ!ガンガンチーズを食べようぜ!」とは言えない段階ではあります。しかし、2020年には、「毎日約40グラムのチーズで心疾患のリスクが下がる!」ってメタ分析も出てますんで、「脳にも良かったらいいなぁ……」ぐらいのノリで定期的に食べてみると良いんじゃないでしょうか。

 

 

 

SNSをよく使う男はダサいと思われる

SNSをよく使う男はダサいと思われる!」みたいなデータ(R)が出ておりました。こちらはデイトン大学の調査で、アメリカとイギリスに住む1,300人以上を対象に、4つの実験を行ったものです。

 

どんな実験だったかをざっくり説明すると、

 

  • 実験の参加者に、「SNSにめちゃくちゃ投稿する男」「SNSにほとんど投稿しない男」「SNSを平均的に使う男」という3パターンを評価してもらう。この男性のペルソナは、「楽しみのためにオンラインを使い、適度な数のフォロワーを持つ人物」として設定されている。

 

みたいになります。SNSの使用頻度により、ユーザーの印象がどう変わるかをチェックしたわけですね。

 

すると、SNSの使い方と男性のイメージには相関がありまして、

 

  • めちゃくちゃSNSを使う男は、一貫してより「男らしさがない」と評価された。これは、男性の年齢、学歴、裕福さに関係なく当てはまった。
  • 女性がSNSを使いまくっていても、「女性らしい」と思われる度合いには影響がなかった。
  • 性別に関係なく、頻繁にSNSを使う人は、「承認欲求が凄すぎる人」だと思われる(そりゃそうでしょうな)。

 

って感じだったらしい。まぁSNSをよく使う人が目立ちたがりに見られるのは当然でしょうが、ここに男女のジェンダーバイアスが関わってくるのが、今回の研究のポイントですね。

 

研究チームいわく、

 

広告、テレビ番組、映画、音楽は、男性は断固としてストイックで自己充足的であるべきだという考えを強化し続けている。私たちの結果は、ネットに頻繁に投稿することで、男性が正反対の人物に見えることを示している。

 

とのこと。いまだに欧米では「男はストイックで寡黙であるべきだ!」みたいなステレオタイプがあるので、SNSを頻繁に使うだけでも「ダサいヤツだ!」と思われがちなんだってことですな。日本でも同じような結果が出るのかは不明ですけど、本邦でもジェンダーバイアスは似たようなもんでしょうから、近いデータが得られそうな気がしますね。

 

ちなみに、この研究では「SNSのジェンダーバイアスを抑制できないか?」って実験もしてるんですけど、結果から言えば「バイアスを抑制するのは無理」だったそうです。投稿する内容をいろいろ変えたりしてみても、SNSを使いまくる男は、どうしてもダサさがにじみ出てしまうらしい。

 

さらに研究チームいわく、

 

良くも悪くも、生活の多くはジェンダーの線に沿って分類されている。たとえば、衣料品店には男性用と女性用のコーナーがありし、ある種の食べ物はより男らしく、あるいはより女らしいものだと考えられている。

私たちが新たに発表した調査によれば、ソーシャルメディアでさえも、厳格なジェンダー・ステレオタイプのキャンバスになっている。

 

とのこと。まぁ現代では「伝統的な男らしさはオワコン」ってのが常識なので、いまさらSNSのジェンダーバイアスにこだわっても仕方ない気がしますが、SNSの使い方と印象の変化については、知っておいてもいいかもですね。

 

 

 

体罰は子どもに悪い影響しかない

体罰には百害あって一利なし!」ってデータは昔からありますが、新たな分析(R)もまた、体罰のデメリットを強調する内容になっておりました。

 

こちらは、1950年から2017年までに世界97カ国から集めたデータを分析したもので、まずは結果から申し上げますと、

 

  • 家庭、学校、保育所などのどんな場面でも、体罰を容認しているところでは、15歳から19歳の女性の自殺者がほぼ2倍になっている。10歳から14歳の男子の自殺率は68%高かった。
  • 体罰を禁止した学校では、禁止が決まってから約12~13年で、15~19歳の男女ともに自殺率が低下していた。

 

って感じになります。個人的には、思ったよりもすごい違いが出たなーって印象でして、やはり体罰は悪だと言えましょう。特に自殺は青少年の死因の第一位ですから、体罰が思春期の自殺の危険因子のひとつとして明確になったのは良いことですね。

 

ちなみに、ここでは体罰を以下のように定義しておられます。

 

行動の矯正やコントロールの手段として、物理的な力を使って意図的に子供に苦痛を与えること(怪我はさせない)。一般的な方法には、スパンキング、平手打ち、叩くなどがある。

 

私が学生の時代はだいぶマシになった気がしますけど、それでも体罰は普通に行われてましたからねぇ。こういった指導は自殺率を上げるだけでなく、子どもの攻撃性をアップさせ、メンタルヘルスを損ない、親子の絆を壊すって証拠もあるんだそうな。とにかく幅広い面で悪い影響があるわけっすね。現時点までのデータはすべてロブストなので、とりあえず「体罰はオワコン!」と思っておくと良い感じです。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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