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今週の小ネタ:集中力がある人とない人は何が違うのか? なんで自然の中だと時間がゆっくり流れるの?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

集中力がある人とない人は何が違うのか?

集中力がある人とない人は何が違うの?って疑問を考えるのに役立つメタ分析(R)が出ておりました。

 

この研究は、過去に行われた68の「集中力研究」をまとめたもので、およそ1万人以上のデータを分析して、精度が高い結論を出してくれてます。ここで何を調べたのかと言うと、

 

  • 人間の集中力を乱す最大の原因はなにか?

 

ってポイントです。スマホの通知、タスクの難易度、休憩の有無など、集中力を乱す原因はいくつも考えられますが、その中でも最悪なものはなにか?ってことですね。

 

でもって、細かいことはさておき、分析の結論を引用しておくと以下のようになります。

 

私たちはしばしば、注意散漫になる理由を、携帯電話やソーシャルメディアのせいにする。

 

しかし、私たちの心は、このような外的な要因があろうがなかろうが、目の前のタスクから意識が外れてしまう。

 

この結果は、注意力を維持するのが難しいのは、マインド・ワンダリングが原因であることを示唆している。

 

ひとつの仕事を長く続ければ続けるほど、私たちの心はさまよう。

 

ということで、要するにどんな結論が出たのかと言いますと、

 

  • 人間の集中力は、そもそも途切れるようにできている。
  • 集中力がある人だろうが、ひとつの作業をずっとやってればガンガンに意識は乱れる。
  • タスクの難易度やタスクの種類は、集中力の維持とは関係がない。どんな種類の作業でも、終盤になると、たいていの人の頭の中は50%以上さまよう。

 

って感じです。どんな人でも集中力は維持できないのがデフォルトであり、タスクが簡単だろうが難しかろうが、好きな作業をしてようが嫌いな作業をしてようが、どんな場合でも集中力は乱れるものなんだってことですね。

 

研究チームいわく、

 

私たちは、難易度の高い仕事ほど注意を払うのが難しくなるとか、簡単な仕事ほど退屈に感じ、心が彷徨うようになるなどと思いがちだ。しかし、これらのタスクの間に、一貫した違いは見られなかった。

 

私たちの心は、何をしているかに関係なく、どんどんさまよっていく。

 

とのこと。そもそも人間の集中力がめっちゃ脆弱なので、この点を認識するのが集中力アップの第一歩なわけですな。

 

それでは、一般に「集中力が高い」と言われる人が何をやってるのかと言いますと、

 

  • 集中力の低下に抗うのではなく、あらかじめそれを予期し、それに応じた計画を立てている。

 

みたいなことらしい。そもそも集中力なんて弱いものなんだから、パフォーマンスが下がったら潔くあきらめて、前もって「集中力が切れたら運動」とか「集中力がいらない作業に切り替える」とか「とにかくいったん休憩する」とか、集中力が切れた際のリカバリープランをいくつか持っておくほうがいいんだってことですね。これはかなり重要な考え方なので、「自分は集中力がない……」とお悩みの方は、ぜひ頭に入れておいてくださいませー。

 

 

 

なんで自然の中だと時間がゆっくり流れるの?

「自然の中に身を置くと時間や記憶に対する認識が変わる!」って分析(R)が出ておりました。自然に囲まれていると、なぜか都会よりも時間がゆったりと流れているような気分になりますが、この現象には、ちゃんと認知心理にもとづいた根拠があるんだよーって話ですな。

 

この結論は、「時間の感覚」に関する過去の研究をレビューして得られたもので、これまでの研究を見てると、都会と自然では明らかに時間の流れが変わるというんですな。では、なんでこのような現象が起きるのかと言いますと、著者のリカルド・コレイア先生いわく、

 

人間の時間知覚は非常に主観的で、注意力、記憶力、感情、身体状態に関連する要因の複雑な相互作用によって制御されている。

 

よく言われることだが、渋滞に巻き込まれている間は時間が止まっているように感じられるし、友人と遊んでいる間は時間があっという間に過ぎてしまう。

 

「自然環境」が時間の知覚にどう影響するかについての心理学論文を調査したところ、都市環境と自然環境の間には、はっきりしたコントラストがあることがわかった。

 

都市での生活と、それに伴うあらゆる事態は、私たちの時間の感じ方に負担をかける

 

対照的に、自然は人間に回復効果をもたらすことが知られており、よりバランスの取れた時間感覚を取り戻す手助けをしてくれる。

 

とのこと。都市の生活で時間のスピードが速くなる理由はいくつかありまして、

 

  • 都市の生活は時計の表示によって、正確に進んでいく。これにより、つねに「残り時間」を意識せねばならなくなるため、常に時間に追われているような感覚が生まれ、「時間が足りない!」「時間が駆け足で過ぎていく!」といった感覚が生まれる。

 

  • また、都市の環境は、人間の記憶を刺激する要素が多いため、都会に住む人ほど過去についてより深く考える傾向がある。これは多くの場合(常にではない)、過去の失敗や間違いを思い起こし、ネガティブな体験を何度も思い起こす現象を引き起こす。これによって「過去に囚われた状態」が生まれやすくなり、結果として「現在」を楽しめなくなり、時間がめっちゃ速く過ぎたように感じられる。

 

って原因が大きいっぽい。このあたりは「YOUR TIME ユア・タイム」でも指摘した心理ですね。

 

一方で、自然の中では何が起きるのかと言いますと、

 

  • 自然の中にいると、人はより広く、よりバランスの取れた視点を持ち、過去、現在、未来について考える傾向がある。

 

  • ナチュラルに人間の意識をひくものが多いので、自然の中にいると、今この瞬間をより意識するようになる傾向がある。そのおかげで「現在」を楽しめるようになり、時間の流れが遅くなったように感じられる。

 

ということで、自然環境がヒトの記憶の使い方に影響を与えて、そのおかげで時間の流れが変わるっぽい。

 

さらに研究チームいわく、

 

過去を回想しすぎたり、将来の計画にこだわり続けるのは、精神的に健康でない証拠だ。しかし、自然の中にいることで、過去、現在、未来をバランスよく見ることができるようになる。

 

既存の証拠を総合すると、自然体験が健全な時間感覚の調整と維持に重要な役割を果たしていることが強く示唆される。

 

とのことですんで、私も最近あんまり行けてないキャンプにまた行こうかと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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