女性が筋トレをする際に最も注意すべきポイントはどこか?を調べたメタ分析の話
「女性は体が違うのだから、男性と違う筋トレをすべき!」みたいな考え方があるわけです。女性には月経周期、更年期、妊娠、体組成やホルモンバランス、水分補給の必要性などが男性と異なるので、その違いを考慮した筋トレメニューを使ったほうが良いよーって考え方です。
事実、ホルモンバランスによってトレーニングの効果が変わる傾向はありまして、確かに女性なりの違いがあるのは間違いないところです。ただし、「どの違いが最も重要なのか?」「具体的にどこまでトレーニングを変えるべきなのか?」みたいなポイントについては、まだよくわかってなかったりします。なにせ筋トレの研究ってのは、大半が男性を中心に行われているので、女性の身体を考慮したデータってめっちゃ少ないんですよ。
ってことで、この問題を考えるべく、リオグランデ連邦大学などのチームが良いメタ分析(R)をしてくれておりました。
これは、健康な若い女性を対象にした筋トレ系の研究をまとめたもので、「女性は筋トレにどのように反応するか?「女性が筋力と筋肉量をちゃんと増やすためには、何が一番大事なのか?」ってのを調べた内容になっております。具体的に、どんな調査をしたのかと言いますと、
- 18歳から35歳までの女性1,312人を含む40の筋トレ研究をピックアップ(参加者のほとんどは、トレーニングを受けていないか、座っていることが多い人)
- 選ばれた研究の実験期間は平均10週間で、通常1週間に2~3回のトレーニングを行うように指示が出ていた。
- 1週間の総セット数の中央値は72で、標準的な重量は1RMの80%だった(1RMの意味については、「自分の筋トレ限界(1RM)を簡単に知る方法はないのか?という実験のお話」をどうぞ)
みたいになります。女性だけの筋トレデータを集めまくって、何が一番大事な要素なのかをチェックしたわけですな。
その結果は、こんな感じになりました。
- どんな女性でも、筋トレをすれば筋力と筋肉は普通に発達する。標準化差で見てみると、全体として筋肉量は1.2SMD増加した。これは、女性の大多数が、筋トレをやれば何らかの効果を得られることを意味する。ただし、一方で筋力は0.4SMDしか増加しておらず、これは女性の約3分の1が、筋力は改善しづらかったことを意味する。
- どのような女性でも、1週間のトレーニング回数が多い研究ほど筋肉量の増加が大きく、1週間のセット数の合計が多い研究ほど筋力の増加が大きくなる。
ってことで、結局は「やればやるほど女性の筋肉は増える」という当たり前の結論で、これは男性と変わらないですね。
もっとも、「週72セットの筋トレをする」ってのが中央値だったことを考えると、セット数が最大になるほど筋肉と筋力も増えやすくなるってのは驚きで、この数字を日常に換算すると、
- 女性の場合は、筋トレのペースを週3回にして、全身の筋肉を鍛える8種類のエクササイズを、それぞれ1日に3セットずつ行うと良い。
みたいになるでしょうね。米国スポーツ医学会などは、「筋トレの初心者は、1RM70~85%の重量で1セット8~12回を1~3セットやるといいよー」と言ってるんですが、今回のメタ分析によれば、一般的に推奨される筋トレの最低基準値よりもかなりハードなトレーニングをやったほうが良いことになりますな。
このような数字が出た理由はまだよくわからないものの、先行研究を見てみると、
- 女性は男性よりも疲労耐性が高い(つまり、1回の筋トレのなかでパフォーマンスが落ちるのが男性より遅い)
- 女性は男性よりも筋トレ後の回復能力が速い。
といった傾向が確認されているので、女性は男性よりも大量のトレーニングを行った方が効果があるのかもしれませんね。
まぁ、この研究は、同じ条件下で同じ運動ルーチンを行った男女を直に比較しているわけじゃないので、女性向けにデザインされた筋トレでより多くのメリットを得られるかどうかは判断できません。そこらへんは注意いただきたいですが、男性の筋トレでさえ、各エクササイズを何セット行うべきかといった問題に答えが出てるわけじゃないので、本当の答えが出るのはまだまだ先の話になるでしょうなぁ。
ただし、今のところ、新しいメタ分析を見る限りは、男性がよく使っている一般的な筋トレが女性にも有効であると考えてよさげ。なので、まずは女性も一般的な筋トレのメソッドを徹底したうえで、「エストレマドゥーラ式プロトコル」のような、女性向けのプロトコルも考えてみたら良いんじゃないでしょうか。