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【質問】電動歯ブラシの方が、手動の歯ブラシよりも歯に良いですか?

 


こんなご質問をいただきました。

 

電動ブラシって買うべきでしょうか? 手で磨くのでも十分だという歯科医もいて、どうしたら良いか困ってしまいます。鈴木さんは電動ブラシを使っていると思いますが、効果はどう思われていますか?

 

ってことで、電動ブラシの効果はいかほどか?という疑問であります。この問題については、過去に「電動歯ブラシって本当に使う意味あるの?」ってエントリを書いてまして、個人的にも「ブラウン オーラルB iO10」を愛用していたりするわけです。が、近年はより精度の高いものも出てきたので、そこらへんもふくめて内容をチェックしておきましょう。

 

 

疑問1.電動歯ブラシの方が、手動の歯ブラシよりもきれいになる?

まずは「電動歯ブラシの方が手動の歯ブラシよりもきれいになるか?」って問題を見てみましょう。これについては、近年もいくつかまとまったデータが出てますんで、そこらへんをチェックしておきましょう。

 

  • みんな大好きコクラン共同計画による2014年の研究(R)によれば、「電動歯ブラシは歯垢を除去するのにちょっとだけ優勢!」って結論が出ている。研究者らは、5,000人以上の大人と子供による監視なしの歯ブラシに関する56の臨床試験を調査し、電動歯ブラシを使用した被験者は、手動歯ブラシを使用した被験者と比較して、1~3ヵ月後に歯垢が11%減少し、3ヵ月以上後には21%減少することを発見した。

 

  • アムステルダム大学が2021年に行った28の研究のメタ分析(R)でも、歯垢除去に関しては、手動歯ブラシよりも電動歯ブラシの方がわずかに優れているようだと結論している。ただし、この知見の確実性は中程度なので、今後の調査で結論が変わる可能性もなくはない。

 

  • 2014年の大規模なレビュー(R)でも、電動歯ブラシを使っている人たちは、1〜3ヶ月で歯肉炎(歯周病)が6%減少し、3ヶ月以上経過すると11%減少すると結論づけている。また、振動式の電動歯ブラシ(ブラシが一方向に素早く回転し、次にもう一方に回転する)は、音波式の電動歯ブラシ(ブラシが左右に素早く動くか振動する)よりも歯垢を減らすのにわずかに優れているとも報告している。

 

ということで、全体としてみれば、電動歯ブラシは、手動に比べて“ちょっとだけ”優れているってのが結論じゃないでしょうか。まぁここらへんを見ていると、手動の歯ブラシでも十分なレベルで歯はきれいにできるので、コストの差を埋めるだけのメリットがあるかどうかは微妙かもしれませんが(もちろん、手動でちゃんと磨けている人は少ないので、そこらへんの判断は難しいんだけど)。

 

 

 

疑問2.電動歯ブラシって歯が傷ついたりしない?

続いて、電動歯ブラシのデメリットを考えてみましょう。電動歯ブラシは威力が凄いので、歯のエナメル質を削ったり、歯茎に悪かったりするんじゃないかって結論ですね。

 

この問題についてはヴィッテン・ヘァデッケ大学による2017年の研究(R)が有名で、72本の歯を使って電動歯ブラシは手動歯ブラシを比べたところ、「電動歯ブラシのほうが象牙質(歯のエナメル質の真下にある組織)を削っちゃうかも?」って結論になってました。なかでも音波系の歯ブラシによるダメージが大きく、続いて振動歯ブラシ、手動歯ブラシの順だったとのこと。象牙質が削られると歯の知覚過敏が増えるんで、これは気になるとこっすね。

 

ただし、これについては異なる報告もありまして、2013年の研究(R)では、こちらでは摩耗したエナメル質に対して、手動歯ブラシの方が電動歯ブラシのほうがダメージが大きいって結論であります。

 

ここらへんは判断が難しいんですけど、実際の実験デザインを見てみると、どちらの研究においてもかなり強い力でブラッシングをしているのが気になるところです。どのような歯ブラシを使っても、強い力でブラッシングをすれば歯にはダメージが出るので、実際にはそこまで心配する必要はないんじゃないかなぁ………と思うわけです。

 

なので、個人的にはあんま心配していないものの、電動歯ブラシは力が入りがちな傾向もあるので、「ブラウン オーラルB iO10」みたいに「歯への圧力を検知するセンサー」がついたものを使うと良いかもしれません。

 

 

 

ざっくりまとめ

ってことで、いろいろ書いてきましたけど、私としては「電動歯ブラシのほうがちょっと効果っぽいし、力の入り具合も教えてくれるから楽でいいなー」ぐらいの気持ちで使ってます。言い換えれば、そこまで電動歯ブラシに優位性があるわけじゃないので、手動の歯ブラシで十分だと思っていれば、それでもまったく問題はないんじゃないでしょうか。

 

いずれにせよ、歯ブラシを選ぶ際は、

 

  • 先細りや角度のついたブラシを選ぶ(そっちの方が、平らなブラシよりも歯垢を減らす効果が少し高い)

 

  • 手動歯ブラシでも電動歯ブラシでも、毛先が柔らかいものを選ぶのが吉。毛先が硬いと、歯茎やエナメル質のダメージリスクが上がる

 

  • ほとんどの人は平均45秒しか磨いていないため、タイマーがついているような歯ブラシもなおよし

 

といったあたりを押さえておきつつ、お好きなものを選んでいただければ良いのではないかと。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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