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数字に強くなりたいなら「数学っぽく」学ぶのが大事なのだ!って本を読んだ話。

 

 

数学っぽい(Math-ish)』ってタイトルの本を読みました。タイトルのとおり、数学への取り組み方をまとめた内容で、数学をより創造的で、多様性に富んだものとして捉えたうえで、いかに数字に強くなっていくかを教えてくれております。著者のジョー・ボーラー先生はスタンフォード大学の教授で、数学教育の専門家だそうな。

 

数学の本というと、ゴリゴリに論理を詰めるような印象があるかもですが、この本は、問題を完璧に解くことよりも、試行錯誤を通じて学ぶことの重要性を強調しているのがナイス。問題を解く前に「ish(おおよその)」答えを考えることを推奨しているし、視覚的なアプローチを重視しているあたりもめっちゃ共感できました。

 

では、いつもどおり、本書から勉強になったところをピックアップしてみましょうー。

 

 

 

  • スタンフォード大学などの研究によれば、「悩んだり間違えたりすること」は、最も脳の学習を促進する状態だということがわかっている。神経科学の世界では、「苦しみを感じていないなら、それは学んでいない証拠だ」という専門家もいるほどである。

    そのためボーラー博士は、スタンフォード大学の学部生や博士課程の学生を教えるときに、「間違いや苦闘の時間は称賛されるべきだ!」と何度も伝えている。間違いや苦闘のときこそ、私たちの脳がつながり、成長し、強化され、燃えているときだからである

    このメッセージは、学校の生徒だけでなく、私たち全員の人生にとって、非常に重要な事実だと言える。何かを学ぶときは、理解するギリギリのところにいる必要があり、そのギリギリのところでこそ、最大の知識開発と創造性が生まれる。

 

 

  • 多くの人は、数学の問題を前にすると、「知識があるかないかが重要だ」と考えがちである。しかし、私たちの脳の中ではもっと多くのことが起こっており、数学に成功する人というのは、通常は知識が豊富な人ではなく、特別な作業のやり方を身につけている。

    そこで最も重要なのがメタ認知である。メタ認知とは、自分の思考について考えることだと思われているが、実はメタ認知には4つの異なる側面がある。この4つの側面を知っておくことで、たいていの人は問題の解決がうまくなるし、モチベーションも上がり、仕事の成功率もアップする。というのも、メタ認知的なアプローチを学んだ人は、探究心や好奇心が旺盛で、多様な視点を認めるのがうまいからである。

 

 

  • メタ認知の第一の側面は「自己信頼」で、言い換えれば、「私は努力と工夫によって問題を解決できる」という事実を知っていることを意味する。この意味で、マインドセットもメタ認知の一部だと言える。

 

 

  • メタ認知の第二の側面は、「さまざまな戦略の使用」である。これらの戦略には、問題を声に出して読んだり、問題を絵に描いてみたり、問題を単純化したり、より小さな問題に分割してみたりといったことが含まれる。数学の授業では、このような戦略を教わることは少ないが、実際には、問題の解決ができるかどうかを左右する重要な要素である。

 

 

  • メタ認知の第三の側面は、「進歩の追跡」である。メタ認知がうまい人は、自分が何を達成し、何を達成すべきかを考えるのがうまい。そのために、日記を書いたり、スケッチノートを書いたりして、メタ認知を促す習慣を持っている人も多い。

 

 

  • メタ認知の第四の側面は、「自己反省」である。メタ認知がうまい人は、「なぜこれがうまくいくのか?」「なぜこのような結果になったのか?」を、定期的に自問している。この側面は、メタ認知のなかで最も重要なものだと言える。これらのメタ認知は、すべて練習で鍛えることが可能である。学習や人生において問題に直面したとき、これらのアプローチを取れば、より成功することができるのは間違いない。

 

 

  • 数字は世界のどこにでもあり、私たちは皆、毎日何らかの形で数字を使っている。空港までの所要時間は?あなたは何歳ですか?昨夜降った雨の量は?といった具合である。

    しかし、これらの問題について、私たちが正確な答えを出すことはほとんどない。私たちが世の中で答える問題の約80パーセントは、「数学っぽい」答えであり、それでうまく回している。しかし、私たちが学校で習う数学の約99パーセントは正確性を重んじており、これはバランスが取れていない。

 

 

  • 実際には、正確さを追求した解法を学ぶ前に、「それっぽい答え」を求める能力を鍛えたほうがよい(「7/8+12/13」を見て、「だいたい2だなー」ぐらいにわかる能力)。この作業をしておかないと数の感覚が身につかず、たんに数を操作するのが上手くなるだけに終わる。

 

 

  • 事実、ボーラー博士も、計算や数学の問題に取り組む前に、「それっぽい答え」を考えてみるように指導している。これは数の問題に限ったことではなく、グラフを描く前にどのように見えるかを想像してみることも含まれる。この作業をはさむことで、脳が細部への集中から引き戻され、「概念的に考える」という別のモードに移行するようになる。

 

 

  • 私たちは誰でも、学習の際にメンタルモデルを作っている。例えば、ホッチキスのことを考えるときには、ホッチキスの形、ホッチキスが発する音、ホッチキスを手にしたときの感触、ホッチキスの動きなどを考えることができる。これは、私たちの脳が、ホッチキスのモデルを構築し、それを大脳新皮質に保存しているからである。

 

 

  • 私たちが学習するときには、メンタルモデルが非常に重要となる。数学のように抽象的な問題でも、私たちが見たり、感じたり、動き回ったり、対話したりできる視覚的、物理的なモデルとして学ぶほうが、頭に入りやすいからである。

    たとえば、平方数や平方根について学ぶ際に、正方形を描いたり作ったりして、その感触をイメージしてみたり、手の中で動かしてみたり、正方形の対角線を視覚的に見つけてみる。立方数について学ぶ際に立方体をイメージしたり、その立方体を触った感じをイメージして見る。これらの作業により、平方根や立方体のメンタルモデルを構築することができる。代数学も含めて、すべてのことは視覚的、物理的に経験できる。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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