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【質問】運動が楽しくありません。運動を続ければ楽しめるようになりますか?



こんなご質問をいただきました。

 

エクササイズをはじめたのですが、辛くてしかたありません。運動が好きな人は、運動は気持ちがよいとか言いますが、何を言ってるのかよくわかりません。

 

この状態は改善するんでしょうか? それとも、いつまでもこのまま運動が楽しくないままなんでしょうか?

 

ということで、まずは運動をスタートされたとのことで、まことにおめでとうございます。

 

さて、運動をはじめたのに「まったく楽しくない!」って気持ちになるのは、非常によくある話でしょう。私も35歳でようやく運動をはじめたときは、「辛いだけやんけ!」としばらく思ってましたからね。知人から同じようなことを相談されたことも、何度かありましたし。

 

では、「運動っていつか楽しくなるの?」って聞かれた際に、私がどう答えているかと言いますと、

 

  • とりあえず3週間はガマンして、毎日なんらかの運動をしてみて!

 

みたいな感じです。エクササイズをはじめたばかりの人は、誰でも最初の3週間ほどが一番つらくて、そのあとで少しずつ改善していくケースが多いんですよね。

 

 

 

筋トレが楽しくなるのは3週間

その原因はいくつかありますが、まずたいていの場合、私たちの筋肉は、トレーニングをはじめてから3週間ぐらいで適応してくるのが一般的だからです。

 

筋トレを始めると、あなたの筋肉には微細な裂け目ができ、これが遅発性筋肉痛(DOMS)という強い痛みを、トレーニングの翌日に引き起こします(筋肉痛の原因はそれだけじゃないですが)。この小さな傷を修復するために、人体はアミノ酸からタンパク質を合成し、これが筋肉の発達につながっていくわけですね。

 

ただし、このような筋肉の修復期間は永遠に続くわけではなく、通常、私たちの身体は2、3回ストレスを受けただけで、筋肉の修復から筋肥大へ移行するんですな。このシフトが起きると、私たちの身体は、筋トレのダメージに対処するのがうまくなり、トレーニングはどんどん簡単になっていくんですな。こういった変化は、だいたい3週間目くらい発生することが多いんですよ。簡単に言えば、あなたの身体は筋トレを続けて3週間目で、めっちゃ強くなるわけです。

 

 

 

有酸素運動が楽しくなるのも3週間

続いて、有酸素運動によって起きる身体の変化についても見てみましょう。

 

ご存じのように、ランニングやスプリントなどのトレーニングをしていると、私たちの心臓は、ポンプ機能がどんどん強くなり、全身に血液を送り出すことができるようになります。一回の拍動でより多くの血液を送り出すことができれば、より多くの酸素を筋肉に送り込むことができまして、体もどんどん楽になっていくんですね(いわゆる最大酸素消費量(VO2 max)の改善)。

 

このような変化は、より多くの血漿を受け入れるために心臓が物理的に伸びる、収縮の機能がより強くなるために発生します。血漿量が増えることで、より多くの血液を送り出すことができるわけです。

 

でもって、この心臓の強化が起きるのも、有酸素運動をはじめてからだいたい2〜3週間ぐらい。例えば、「あれ?階段を上っても息が切れないぞ?」とか、「通勤で急いで歩いても疲れにくくなったぞ?」「買い物で重い荷物を持っても体が楽だぞ?」「子供と遊ぶときに息切れしなくなったぞ!」みたいに、良い変化を実感できるはずなんですな。こうなってくれば、有酸素運動も楽しめるようになるはずであります。

 

 

運動が楽しくなるためには、週にどれぐらい運動すればいいのか?

というわけで、筋肉も心臓も3週間ぐらいで改善すると思われるわけですが、このような良い変化を得るためには、定期的にちゃんと体を動かさねばならないわけです。このポイントについては、米国スポーツ医学会のガイドライン(R)を見てみると、

 

  • 有酸素運動で血液ポンプの効率を改善するには、少なくとも1回20分程度の適度な有酸素運動を週に5日ぐらいは行う必要がある!
  • 筋トレの場合は、1セット8~12回を2~4セット、少なくとも週に2回のペースで行わないと、すべての筋群を鍛えられない!

 

といった感んじなので、ここらへんは注意しておきたいところです。もちろん、少しの運動でも、やらないよりはましなんですけど、「運動を好きになりたい!」ってのが目的なら、米国スポーツ医学会のガイドラインを守ってみると良いでしょう。

 

ちなみに、運動を楽しむためには心理的な準備も大切なので、そのあたりにもぜひ注意しておいてください。新たにエクササイズをはじめる時は誰でも心理的な抵抗があるので、できるだけメンタルのハードルが低くなるように設定しておくのが吉であります。例えば、

 

  • 大きな目標を設定するのではなく、最初は小さな目標から始めることで達成感を得やすくする。例えば、「1日10分のウォーキングから始める」など、無理なく取り組めるものにする。

 

  • 運動仲間を見つけて、共に励まし合うことができる環境を作る。

 

  • 自然の中で散歩やジョギングをすることでリフレッシュできる環境を選ぶ。

 

  • 運動日誌やアプリを使って、自分の進捗を記録。過去の記録を見ることで、自分の成長を実感しやくする。

 

  • 目標を達成した際に自分にご褒美を設定することで、達成感を高める。例えば、お気に入りの映画を見る、特別な食事を楽しむなど。

 

こういった対策をしておかないと、たとえ運動が終わった瞬間は気持ちがよかったとしても、やはりエクササイズが習慣づかずに挫折する確率が上がっちゃいますんで。なんだかんだ言っても、やはり運動ってのはストレスなので、いろんな手段を講じないと、嫌になってしまいがちなんですよね。

 

とはいえ、くり返しになりますが、最初の3週間を乗り越えて、体がエクササイズになれてしまえば、「運動が辛すぎる!」みたいな気分はだいぶやわらぐはず。継続さえしていれば、数週間で体は順応するので、ぜひ目安にしてくださいませ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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