人間の性格は変えられるのか?問題についての最大級の調査を見てみましょう。
人間の性格はなかなか変わらない!ってのはよく耳にする話。人間の性格はわりと固定していて、子どもの時の性質は、大人になってからも変わらないって見解が多いんですよね。
事実、思春期から中年期にかけての性格の変化を調べた過去の研究によれば、私たちの性格は中ぐらいのレベルで安定しており、中年期から老年期にかけての変化を調べた研究でも似たような結果が出てたりします。これらのデータを見てみると、私たちの性格は生涯にわたって安定していると言えそうな気がするわけです。
では、この考え方はどこまで正しいのかってことで、「性格の変化」に関する最大級のデータ(R)をチェックしてみましょう。
この研究は、なんと63年間にわたって男女の性格の変化を調べたもので、パーソナリティ研究としては過去最長。1950年の時点でスコットランドで14歳だった男女の性格を評価してまして、
- 自信
- 忍耐力
- 気分の安定
- 良心的
- 独創性
- 学習意欲
という6つの要素をチェックしたとのこと。もちろん、これだけで人間のパーソナリティをすべてカバーできているとは言えないでしょうけど、まぁ普通に重要な要素がピックアップされてるんじゃないでしょうか。
そして2012年、研究チームは、2015年に調査に参加した男女のうち635人を探し当てまして、そのうちの174人(当時77歳)に、新たなテストに参加してもらったらしい(そのうち92人が女性)。もちろん、全員には上記と同じ6つの項目でパーソナリティを評価してもらい、それに加えて知能テストや一般的な健康状態の測定も行ったそうです。
その結果を簡単にまとめると、
- 参加者の14歳時の性格スコアと、77歳時の同じ項目のスコアとの間に有意な相関はなかった(つまり、10代の性格は、高齢になったら激変するかもしれない)。63年後に実施された2回目のテストは、まったく別人に行われたもののように感じられた。
って感じだったみたい。多くのデータが示す結果とは異なり、ヒトの性格は63年のあいだに大きく変わっているんじゃないか?って結論ですね。
研究チームいわく、
高齢期のパーソナリティは、子供時代のパーソナリティとはかなり異なる可能性がある。
2つの性格評価の間隔が長ければ長いほど、両者の関係は弱くなる。われわれの結果は、間隔を63年まで広げると、ほとんど関係がないことを示唆している。
とのこと。青年期後期と成人期初期は、人格の発達と変化が激しいので、確かにこれぐらいの違いが出ても不思議じゃないのかもですな。
まー、ただしこの研究にはいろいろと難しいポイントがありまして、
- 現在では、人間の性格をビッグファイブで判断するのがコンセンサスとなっているが、1950年には同じ考え方がなかったのが、ちょっともったいない。もしビッグファイブで評価していたら、77歳の再テストで何らかの相関が見られた可能性は高い気がする。
- 10代の時点での評価は担当教師が行っているので、そこにバイアスがかかっていた可能性も高い。
- 2012年に選ばれた参加者は、信頼性と知能の平均スコアが全体的に高い。そのため、サンプルに偏りが出ている点は否定できない。
といったあたりは、結果の判断をかなり難しくしております。これはいかんともしがたいところですが。
もっとも、過去のビッグファイブ研究を見てみると、個人的には「それなりに人間の性格は変わるんだろうなぁ」とか思ってたりします。代表的なところをピックアップすると、
- 人間の性格は、いま人生のどの時期にいるかによって大きく変わる。また、特定の役割についた人は、その役割にふさわしい人間になる(例えば、より高い誠実性を必要とする仕事についた人は、その役割を離れるまで誠実性が高くなりやすい)(R)。
- 同じように、職場環境や文化が性格を変えるという研究は結構ある(R)。
- 目標設定と努力によって、自分の性格を意図的に変えることができるという研究結果もそれなりに出ている(例えば、もっと几帳面な性格になりたければ、整理整頓を習慣にしてみるとよい)(R)。
- 性格を変えるためにデザインされたセラピーを行うことで、2週間ぐらいで、ある程度の変化をもたらすことができるって報告も少なくない(R)。
といったあたりが参考になります。人間の性格はそれなりにフィックスされてはいるんだけど、意図して行動を変えていけば、自分が望む方向にパーソナリティを変えていけるっぽいんですよね。
ってことで、いまの自分の性格が気に入らない人は、あきらめずに目標設定と努力を続けてみることをおすすめします。どうぞよしなに。