やっぱ健康の秘訣って「いっぱい食べていっぱい動く」ことじゃない?という日本の研究
その昔、エネルギー流束って考え方を紹介したことがありました。簡単におさらいすると、
- エネルギー流束が低い=1,500kcalを食べて、運動や代謝で1,500kcal消費する
- エネルギー流束が高い=3,000kcalを食べて、運動や代謝で3,000kcal消費する
といった考え方です。要するに、いっぱい食べていっぱい動けばエネルギー流束は高く、少しだけ食べて少しだけ動く人はエネルギー流束が低いと言えます。どちらも摂取カロリーはトントンなんだけど、エネルギー流束が高いほうが病気にかかりにくく、健康に暮らせるんじゃないか?って説があるんですよ。
これは、狩猟採取民の研究データから出てきた話で、昔ながらの伝統的な暮らしを送る人たちは「よく食べてよく動く人ほど元気!」って傾向があるんですよ。つまり、いっぱい食べていっぱい動く暮らしこそが、人類の遺伝子にとって最もフィットしているんじゃないか、みたいな話です。
で、新しいデータ(R)では、早稲田大学などの先生方が、日本人のエネルギー流束について調べてくれていて勉強になりました。まずは大きな結論から言ってしまうと、
- いっぱい食べていっぱい動く日本の高齢者ほど健康!
みたいな感じです。これは日本に住む65歳以上の男女4,159名を対象にした研究で、みんなの歩数と食べる量を調べて、それぞれが死亡リスクにどんな影響を与えるかを分析したものです。もうちょい細かく言いますと、
- 加速度計を使って、参加者の1日当たりの歩数を測定。
- 食物摂取頻度調査法(FFQ)を使ってみんなの食事の内容を調査。ただし、これだとカロリー摂取量が実際よりも少なめに出がちなので、二重標識水法によるエネルギー消費量のデータを基に補正。
- 参加者を中央値で3.38年間追跡し、その期間中にお亡くなりになった人たちを記録。上記のデータと照らし合わせる。
みたいになります。みんなが普段からどれだけ体を動かしているのかと、どれだけ食べているかを調べたわけですね。
その結果を、めっちゃシンプルにまとめると、以下のようになります。
- カロリーの摂取量が多くて歩数も多い人たち(男性2,400kcal/日以上、女性1,900kcal/日以上で、さらに1日5,000歩以上を歩いている人)は、最も死亡リスクが低かった。
- 歩数が1日4,000歩未満の高齢者は、歩数を増やすことでカロリーの摂取量が増加したため、よく動いてよく食べるようにすることで、死亡リスクの低下が見込めるかも?って気がする。ただし、歩数とカロリー摂取量の相互作用効果はみられなかった。
- 高齢者の死亡リスクが最も低くなる最適なカロー摂取量は、1日の歩数が100歩増えるごとに35~42kcalの増量が望ましい感じだった。
- 1日6,000歩の高齢者の場合、最適なエネルギー摂取量は1日2,100~2,520kcalになる。
ということで、従来から言われていたとおり、エネルギー流束が高くなるほど、日本の高齢者は健康でいられるような感じっすね。あくまで65歳以上を対象にしたデータなので、果たして若者でも同じようなことが言えるのかは謎ですが、個人的は「たいていの人はエネルギー流束が高いほうが良いのでは?」って気がしております。
なので、若い人に向けた数値はよくわからないものの、毎日よく体を動かしつつ、上記のデータを参考にしつつ適したカロリーを摂取していただくのがよさげ。「とりあえずエネルギー流束を増やすぞ!」ぐらいの、ざっくりした考え方でも良いかもしれませんが。
ちなみに、この研究で言う「身体活動」は、別にスポーツやエクササイズじゃなくても構いません。ガーデニングやDIY、ペットの散歩、サイクリングなど、楽しみながら体を使えるアクティビティを見つけるだけで、自然にエネルギー流束が高くなりますんで。
また、仕事中に座りっぱなしを避けるために、スタンディングデスクや机の下に置くタイプのエクササイズマシンを導入してみるのも、エネルギー流束を高める良い方法のひとつです。これにより、自然と姿勢が改善され、筋肉の使用が増え、エネルギー流束が高まりますんで。サイクリング系のワークステーションとか、自分が会社員だったころに欲しかったなぁ……。