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現代の男性の孤独を救う方法はこれだ!という本を読んだ話


 

理由ある反抗( Rebels With a Cause,)」って本を読みました。著者のナイオビ・ウェイ博士は、ニューヨーク大学で応用心理学の教授を務める発達心理学者で、特に青年期の社会的および感情的発達に関する研究で知られる先生らしい。

 

当然、本書も「現代の若い男性が抱える問題」にフォーカスしていて、

 

  • ここ十数年で、世界の男性はかつてないほど友人が少なくなっており、「親友がいる」と答えた男性は、1990年には55%だったのに対し、2021年には27%しかいなくなった。

 

  • 孤独な男性ほど幸福や人間関係が損なわれ、自殺や暴力につながりやすくなる。

 

といった問題を掘り下げております。最近このブログでもよく出てくる「男らしさはオワコン説」にも近い問題意識ですね。

 

ウェイ先生は、数十年にわたって若い男性の社会性を研究して、米国と中国で何千人もの男性に調査を実施。これによって、若い男性が抱く思考が、どんな問題を引き起こしているのかを明確にしてきたんだそうな。男性性をめぐる問題は日本人にも重要なんで、大事な知見が書かれた一冊じゃないでしょうか。

 

ってことで、いつもどおり、本書から勉強になったポイントを見てみましょうー。

 

 

  • 博士が若者たちを調べたところ、「ボーイズカルチャー」という概念が、いかに“男らしさ”の問題につながっているかがわかった。「ボーイズカルチャー」とは、よりワイルドでマッチョな考え方を重んじる文化のこと。たとえば、ボーイズカルチャーが大きなコミュニティでは「思考は男性的」「感情は女性的」といったステレオタイプを抱く人が多い。

    この他にも、ボーイズカルチャーでは、感情よりも思考を、弱さよりもストイックさを、他者よりも自己を、“私たち”よりも“私”を、相互依存よりも自立を重んじる。しかし、人間の社会では、相互に依存する人間関係を築く能力も欠かせないため、自給自足、自律性、一人暮らし、経済的自立などを重視する文化では、どうしてもひずみが生まれてしまう。 

 

 

  • ボーイズカルチャーでは、「ハード」な能力や資質を「ソフト」なものより優遇する。この影響は科学の世界にも及んでおり、たとえば心理学では、伝統的に「感情を感じる力」よりも「感情をコントロールする力」に重きが置かれてきた。これは典型的なボーイズカルチャーの反映だと言える。

 

 

  • また、教育の面でもボーイズカルチャーの影響が見られ、たいていの親はSTEM分野(「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」の頭文字をとった言葉)に焦点を当てることが多い。自分の子どもにはSTEMを勧める親は多く、一方でアートや援助職には厳しい視線を向ける。人よりもお金を大切にする態度も、ボーイズカルチャーの反映だと言える。

 

 

  • しかし、人間は生まれながらにして社会的な存在なので、生来的にお互いの存在を必要としている。そのため、人類は互いの感情を読み取る能力を発達させ、豊かな人間関係を築くように進化してきた。

    それなのに、知性、ストイックさ、自立心といったハードな面ばかりを重視し、よりソフトな側面を評価しない文化の中で育った人は、 自分の感情を覆い隠し、あまり敏感にならず、細かいことを気にせず、自分自身に集中しなければならないと思い込まされる。その結果、孤立した人間になってしまう。

    その意味で、もしあなたに親密な人間関係がないのであれば、それはあなたのせいではなく、ソフトな資質を軽視するカルチャーが原因なのかもしれない。にも関わらず、この問題を個人の問題や、メンタルヘルスの問題に矮小化してしまうと、自分自身を傷つけるだけに終わってしまう。

 

 

  • 博士の研究によれば、ボーイズカルチャーで育った若い男性も、感情や人間関係に対する豊かな能力を持っていることがわかっている。もしソフトな資質を軽視するカルチャーで育ったとしても、たいていの若者は社会的な知性を持っており、ただそれを覆い隠しているだけのケースが多い。

 

 

  • この問題を解決するには、まずは親が子供の体験を“普通のもの”として認めてあげるのが重要となる。 男の子が友情を求めるのは普通のことだし、ボーイズカルチャーの中で親友探しに苦労するのも当然のことだと言える。複数の感情を持つことは弱さではなく、ただ人間であることの一部なのだという点を、伝えることが重要となる。

 

 

  • それと同時に、現代の男性が、みんな激しい孤独に苦労している点を教えるのも重要である。多くの場合、現代の男性は、自分が悩んでいることを「こんなことに苦しむのはダメだ」とか「こんな悩みを持つのは哀れだ」などと思っている。博士の調査によれば、 男子学生80%以上は孤独と闘っていたが、その事実を知っている人はほとんどいなかった。そのため、「みなが孤独に悩んでいる」という事実を知るだけでも、認識は大きく変わる。

 

 

  • 博士は、数十年におよぶ研究を通して、ボーイズカルチャーに苦しむ男性を救うプラクティスを開発している。これらのプラクティスは、質問やフォローアップの質問をすること、相手の話をよく聞くこと、相手に興味を持つ大事さを教えることなどが含まれている。

    このようなプラクティスは、あらゆる種類のコミュニケーションの向上につながる。中でも大事なのは「好奇心」で、他人の価値観、信頼、愛、友情について、「何を学べるのだろう?」というマインドのスイッチが入ると、たいていの人は固定観念から解き放たれ、他者との帰属意識が生まれる。

 

 

  • このような“相互支援”こそが、現代における「人間としての成熟」の定義であるべきだと言える。相手に興味を持って質問をし、それに答えるというギブ・アンド・テイクの関係性こそが、ボーイズカルチャーの悪弊から抜け出すカギだと言える。

    これは、決して「文化を変えよう」という大げさな試みではなく、人間が本来持っている知性を使ってお互いに関わる方法を、具体的に再構築しようという話である。そのためには、現代人の足を引っ張る固定観念や慣習を解きほぐす作業を意図的に行うしかない。

 


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