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男らしさを重視していると寿命が6.7年も短くなるんじゃないか説



ここんとこよく見かけるのが「男らしさはオワコン説」であります。「弱ところを隠す」「何にも恐れず勇敢に戦う」みたいな、昔ながらのマッチョイズムに囚われてると、メンタルを病みやすいみたいなんですよね。

 

ということで、過去には、このブログでも以下のようなエントリを書いてたりします。

 

 

ざっくりまとめると、「男らしさ」は基本的に不安定なものなので、こいつを目指そうと思うと「つねに弱いところを隠さねば!」「勇敢さを示さねば!」みたいな気持ちが強くなり、そのせいでリスクが高い行動を取る確率が上がってしまい、結果としてメンタルを病んでいくんだそうな。

 

ってことで、新しい研究(R)もまた「男らしさ」のヤバさを示したもので、まず結論から言ってしまいますと、

 

  • 「男らしさ」を重んじるレベルが高い国ほど、男性が危険な行動をとり、健康を崩す可能性が高くなる。
  • 「男らしさ」の信念が蔓延している国では、「男らしさ」を重んじない国よりも、男性の寿命が6.7年短い

 

みたいになります。ここでいう「男らしさを重んじる」がどのようなものかと言うと、「男らしさ」って概念を「強さ」「攻撃的」「たくましさ」「勇気」と結びつける考え方のことです。「男なら勇気を持って戦わねば!」みたいな発想のことでして、いかにも人生が辛くなりそうな考え方ですね。

 

なぜ研究チームがこんなことを調べようかと思ったのかと言いますと、

 

  • 過去の研究では、男性が女性よりも短命であることが繰り返し示されている。
  • 男の方が寿命が短いのは、体の作りが違うのだけが原因なのではなく、「男らしさ」に対する社会的な信念も関わっているのではないか?

 

みたいな仮説があったからです。たいていの国では男性のほうが女性よりも寿命が短いものなんですが、これは「男らしさ」を重んじるメンタリティが一役買っているんじゃんないかってことですね。

 

研究チームいわく、

 

男らしさをより重んじる国々は、定期的なリスクテイク活動、危険な職業の追求、予防的行動や健康増進行動の割合の低下などを通じて、男性の役割規範を維持するように、男性から強い圧力をかけている可能性が高い。

 

とのこと。「男らしさ」が重要とされる文化のなかでは、男たちの間で「酒を一気飲みじゃ!」「健康なんて気にする奴はダサい!」「ルールを破ってこそ男!」みたいな同調圧力が発生しやすく、それによっていろんな健康問題が起きちゃうんじゃないか、と。これはありそうですなぁ。

 

ってことで、研究チームは、世界の62カ国から33,417人の大学生を対象に、ジェンダーの信念と態度について調査を実施。学生たちが「男らしさ」についてどう思っているのかを調べるために、

 

  1. 「他人が "本当の男 "かどうかが、しばしば気になってしまう」
  2. 「何歳になっても、本当の男になれない人もいると思う」
  3. 「男としての地位は、少しの失敗で簡単に失われてしまう」
  4. 「男らしさは保証されたものではなく、守り続けねばならない」

 

という4つの文章にどれだけ賛成するかをチェックしてます。いやー、見るからに生きづらそうな信念ですな。

 

で、このデータをもとに、62カ国それぞれの男らしさレベルを算出したところ、

 

  • 男らしさレベルが高い国:アルバニア、イラン、コソボ、ナイジェリア、ウクライナなど。
  • 男らしさレベルが低い国:フィンランド、スペイン、ドイツ、スウェーデン、スイスなど。

 

って感じに分類されたらしい。ちなみに、日本も割と男らしさレベルでは高い数値が出てまして、アメリカなどよりも上にランクされてたりします。各国でサンプル数がだいぶ違うので、妥当性を判断するのは難しいんだけど、「自分も同じ問題を抱えているのではないか……」と自問してみるのは良いことでしょうな。

 

さらに、各国のデータを詳しく見てみると、

 

  • 男らしさレベルが高い国ほど、喫煙や飲酒をする確率が上がり、交通事故やCOVID感染などの問題が起きる傾向があった(中程度に高い)。

 

  • 男らしさレベルが高い国の男性は、男らしさレベルが低い国の男性に比べて寿命が6.7年短かった。この結果は、医療機関の充実さや国の豊かさといった変数をコントロールしても変わらなかった。

 

ということで、男らしさが問題行動の引き金になり、それによって寿命が縮む可能性が示されたらしい。うーん、これはかっこ悪い。

 

まー、この調査は大学生しか対象にしていないのが難点ながら、規模は非常に大きいので、一聴に値する結論になってるんじゃないでしょうか。私のようなアラフィフは、「男らしさ」についてはわりと過渡期の世代だと思いますんで、自分がとらわれていないかどうかをモニタリングしとくのがオススメ。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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