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甘いお菓子が体に良いかも? 砂糖との上手なつきあい方を調べたぞ!という研究の話


 

「砂糖は体に良くない!」と言われまくるようになって久しい昨今。砂糖の摂りすぎが良くないのは間違いないんですが、新しい研究(R)では、砂糖の「量」だけでなく「どんな形で食べるか?」や「どれぐらいの頻度で食べるか?」によって健康への影響が変わるぞーって結論を出していて勉強になりました。

 

では、この研究をふまえて、日常生活でどのように砂糖と向き合えばよいのかを考えてみましょうー。

 

この研究は、スウェーデン国内の2つの大規模データセットを使って、約7万人のデータを解析したもの。研究の流れを簡単にまとめると、

 

  1. 砂糖をどれぐらい摂取しているかを調べる:1997年と2009年に収集された食事アンケートを基に、砂糖を摂取する方法を「飲み物」「お菓子」「砂糖を含むトッピング」の3種類に分類し、いつもどれぐらいの砂糖を摂っているのかを調べる。

  2. 心血管疾患のリスクを調べる:7つの主要な心血管疾患(心房細動、大動脈瘤、大動脈弁狭窄症、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、心筋梗塞、心不全)の発症リスクを調査。

  3. 追跡調査:2019年まで参加者を追跡して、心疾患を発症したかどうかを調べ、これを砂糖の摂取パターンとの関連性を分析する。

 

みたいになります。すると、調査期間のあいだに約26,000人が心血管疾患を発症しまして、この人たちがどんな感じで砂糖を摂取しているのかを調べたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 砂糖が入っている飲み物は、虚血性脳卒中、心不全、心房細動、大動脈瘤のリスクを高める。
  • 一方で、たまに甘いお菓子を食べている人は、心血管疾患リスクが上がるどころか、むしろ低下する傾向が見られた

 

ということで、砂糖が入った飲み物は心疾患リスクをガッツリと高める一方で、砂糖入りのお菓子は逆に心疾患リスクを下げることすらあるんじゃないかって結論であります。こりゃあちょっと驚きですな。

 

では、砂糖入り飲み物と甘いお菓子の間で、なんでこんなに健康リスクが違うのか?ってことですが、おそらく以下のような問題が関わっているんじゃないかと思うわけです。

 

  • 急激な血糖値の上昇と下降:飲み物の砂糖は液体なので、固形物に比べて消化吸収が速い特徴がある。そのせいで血糖値が急上昇し、それに応じてインスリン(血糖値を下げるホルモン)も急激に分泌されちゃう。これが繰り返されると、体がインスリンに対して反応しにくくなり、インスリン抵抗性が引き起こされる。

 

  • 慢性的なインスリン抵抗性のリスク:インスリン抵抗性が続くと、体内の糖代謝が乱れ、脂肪が蓄積しやすくなってしまう。これにより、炎症や血管へのダメージが進み、最終的に心血管疾患のリスクを高める。

 

要するに、同じ砂糖でも液体の方が体内にガンガン吸収されるので、そのぶんだけ体へのダメージが大。一方、たまのお菓子は吸収スピードが緩やかで、頻度も少ないため体への負担が少ないと考えられるんですよね。

 

ただし、この研究では、「甘いお菓子を全く食べない人」よりも「たまに食べる人」の方が心血管リスクが低いって傾向も見られてまして、ここがかなりの謎ポイントだったりします。お菓子を完全に絶つよりもたまに食べる方が体に良いかも?ってのは、ちょっと不思議ですもんね。

 

この理由についてはまだ議論の余地があるんだけど、おそらく以下のようなメカニズムが働いてるんじゃないかなーと思っております。

 

  • 極端な食事制限がストレスになる:完全に砂糖を排除するような食生活は、多くの人にとってストレスになりがち。心理的ストレスは心血管疾患のリスクを高める要因の一つなので、たまに甘いものを食べることで、このストレスをやわらげるのは良いことなのだと思われる。

 

  • 健康問題を抱える人が砂糖を避けている:砂糖を全く摂らない人には、すでに何らかの健康問題を抱えている場合が多め。そのため、砂糖を排除している人ほど心疾患リスクが上がるケースもあり、こうした背景がデータに影響を与えている。

 

このうちどちらの影響が大きいのかはわからんので、まだ「たまのお菓子は逆に体に良い!」とは言いづらいところです。とはいえ、たまの砂糖菓子でストレス解消するぐらいなら、少なくとも健康リスクに問題はないとは言えそうであります。

 

ってことで、今回のデータをもとに、砂糖と上手くつきあうためのガイドラインを考えてみましょう。もちろん、どれぐらいの砂糖を摂るべきかって問題には個人差があるんだけど、だいたい以下のようなことは言えるんじゃないでしょうか。

 

  • 砂糖の摂取量を10%以下に抑える:砂糖は1日の総カロリーの10%以下が目安。たとえば、2,000kcalを摂取する人であれば、1日あたり50g(約12小さじ)の砂糖までなら問題ないでしょう。市販の砂糖入り飲料には、350mlで約35~50gの砂糖が含まれているんで、これだけで1日の上限を超える可能性が大っすね。特に清涼飲料水や甘いコーヒー、スポーツドリンクなどは「隠れた砂糖」の温床なので、購入時には成分表示を確認しとくと良いでしょう。

 

  • 「たまに」の定義を守る:この研究では「たまの砂糖菓子ならOK!」と表現されてますが、ここで言う「たまに」ってのは週に1~2回ぐらいの頻度を意味します。例えば、クッキー1枚(砂糖約15g)や小さめのケーキ1切れなら、総摂取量を管理しながら楽しむことができるでしょう。その際は、市販の大きなスイーツよりも、手作りや少量で満足できるものを選んでくださいませ。

 

  • タイミングを選ぶ:運動後など代謝が高まっているタイミングで摂ると、体への負担が軽減されますんで。

 

ということで、今回の研究からわかるのは「砂糖の摂取量だけでなく、どこから摂るかが重要!」ってことなんで、ぜひ摂取源も気にしてくださいませー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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