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太ってる方が長生き?長寿と体型のホントの話を調べた研究の話

 

長生きできる体型ってどんな感じなの?」って疑問は昔からよくある話。もちろん、痩せ過ぎや太り過ぎが良くないって点で専門家の意見は一致しているんですが、

 

  • 完全な標準体型よりも、ちょっと太っていた方が長生きするのでは?

 

って意見がかなりあるんですよ。これはいくつかの先行研究でも示されている話で、実はBMIが22.5〜23.5ぐらいの人(いわゆる普通体型)よりも、BMIが≥27.5の人(いわゆる肥満体型)のほうが寿命が長いって傾向が確認されているんですよね。

 

これは「肥満パラドックス」と呼ばれてまして、簡単に言えば「太ると病気にかかりやすくなるのは間違いないのに、なんで肥満の人の方が長生きなんだろう?」みたいな話です。この問題については解釈が複数あって、「単純にデータに偏りがあるのでは?」「変数の処理を間違ってないか?」みたいな意見がありつつも、これといった結論はまだ出ていない状況だったりします。難しいですねぇ。

 

といったところで、早稲田大学の先生方が行った研究(R)は、日本人を対象に『肥満のパラドックス』を深掘りしてくれていて勉強になりました。

 

この研究は、日本の65歳以上の高齢者10,000人以上を対象にしたもので、みんなのBMIと健康寿命を調べて両者のデータを比べ、これに“フレイル”の問題を組み込んだ上で「長生きできる体型とは?」ってポイントを調べてくれております。

 

「フレイル」ってのは、高齢者が直面する「身体的・精神的・社会的な活力の低下」のことで、「健康で暮らせる状態」と「介護をしないと暮らせない状態」の中間ぐらいの健康レベルっすね。フレイルの特徴としては、以下のようなものがあります。

 

  • 筋力や体力が低下して日常生活がしんどい(身体的フレイル)

  • 気分が落ち込んだり、認知機能が下がったりする(精神的フレイル)

  • 社会から孤立したり、友人関係が薄くなったりする(社会的フレイル)

 

この状態をほっとくと、どんどんQOLと寿命が縮まってしまうんですが、幸いにもフレイルは「早めに適切な対策を取っておけば改善できるよ!」って見解が優勢でして、早期発見と対策をしておくのがめっちゃ大事なんですよ。

 

さて、このフレイルを含めて長寿と体型の関係を調べたところ、以下のような結果がわかったんだそうな。

 

  • 健康寿命が最も長いBMIは22.5〜23.5:この範囲のBMIを持つ高齢者は、要介護認定を受けるリスクが最も低かったとのこと。この数値は、「やせ」でも「肥満」でもない普通体型っすね。

 

  • やせすぎ(BMI <18 .5="" strong="">:やせた高齢者は、要介護になる前に死亡する可能性が高かったとのこと。摂取カロリーが少ないせいで、どうしても生命の維持が難しくなっちゃうんでしょうな。

 

  • 肥満(BMI ≥27.5)は障害生存期間が長い:一見矛盾するようなんだけど、肥満の高齢者は、障害を伴う状態で長く生存する傾向があることが分かった(歩行や食事、着替えといった基本的な動作が自力で行えなかったり、関節疾患、心血管疾患、糖尿病などの健康問題に悩まされたり)。特にフレイルを持つ肥満者は、フレイルのない肥満者よりも、さらに障害を持ったまま生存する期間が長かった。

 

ってことで、この結果を見ていると「肥満パラドックス」が起きるのも納得でして、時に太った人のほうが長生きになる理由は以下のようになるかもしれません。

 

  1. 栄養の貯蔵効果:高齢者は病気や体力の低下時に、体内に蓄えた脂肪や筋肉がエネルギー源として働くため、やせ型よりも太った人のほうが、ダメージに強くなるのだと思われる。

  2. 筋肉量の維持:BMIが高い人は、相対的に筋肉量も多いことがあり、これが体力や免疫力の維持に貢献している可能性がある。

 

まぁだからといって「BMIを高くすれば長生きできる!」って話じゃありませんのでご注意ください。何らかの障害を持たずに健康のまま生きられるのは、やはり標準体型の人っぽいですからね。そう考えると、よく食べて筋トレをする標準体型が最強ってことになるんじゃないでしょうか。

 

また、このデータだと、フレイルを持つ肥満者は、フレイルのない肥満者よりも障害を持ったまま生存する期間が大幅に長いって結果も出ております。つまり、フレイルを放置すると「障害を抱えたまま生きる時間」が長くなり、生活の質(QOL)がガッツリ下がっちゃうんですよね。こちらも注意しておきたいところです。

 

ってことで、この研究から得られる教訓をまとめておくと、

 

  • BMIが適正範囲内でも、フレイルの状態では健康寿命は延びない。
  • フレイルを改善しない限り、要介護リスクを完全に取り除くことはできない。

 

みたいになるでしょう。とにかくフレイルの改善がめっちゃ大事ってことなんで、もし歳を取って筋肉が減ってたり、頭がうまく働かないような気がする方は、栄養バランスを今まで以上に整えて、筋肉量を維持・増加させるためにスクワットやウォーキングを行い、孤独感を減らすために家族や地域社会との関わりを深めたりってあたりを徹底していただくと良いでしょう。

 

もちろん、今回の研究は長期間の変化や個人差までは考慮されていないので、この結果だけをもって「やはり標準体型が最強だ!」とまで言えるほど強い結論は得られないんですが、個人的にはやはり22.5〜23.5ぐらいのBMIを保っておこうと思った次第です(その重量の大半は筋肉をメインにして)。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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