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「プチ断食(4:3)」は本当に効くのか?──1年追跡のランダム化試験でわかった“現実的な減量効果”

  
 

相変わらず「プチ断食」が流行ってまして、私も「リーンゲインズ」をやりはじめてもう12年ぐらいになります。これぐらい習慣になると、もはや日常でメリットを実感することも無いですが、空腹状態が長いほうが明らかに集中力は上がるので、おそらく今後も続けるでしょう。

 

ということで今回は、最新のRCT(ランダム化比較試験)で1年間かけて「4:3断食」と「毎日カロリー制限(DCR)」を比べた研究(R)の内容を、詳しく見てみましょうー。

 

 

断食 vs 毎日ダイエット

この研究に参加したのは、BMIが高めの成人165名。全員が12か月間の減量プログラムに参加して、

 

  • 栄養カウンセリング
  • グループセッション
  • 運動のアドバイス(中程度の活動を週150分)

 

といった行動療法込みのダイエット指導を受けてもらったんだそうな。さらに、そこに食事制限も加えてまして、

 

  • カロリー制限グループ:毎日34%のエネルギー制限
  • 4:3断食グループ:週3日だけ80%の制限、それ以外の日は自由

 

って感じで日々の食事をしてもらったらしい。その上で1年の経過をチェックしたんですね。この手の研究としては参加者も多いし、

 

 

結果、4:3断食の勝ちだった

で、結果はというと、4:3断食の勝ちでした。

 

 

指標4:3断食カロリー制限
体重減少量−7.7kg−4.8kg
脂肪量減少−6.0kg−3.9kg
筋肉量減少−1.8kg−0.6kg

 

ということで、確かに「断食すごいじゃん」と思える結果ですよねぇ。

 

とはいえ、プチ断食グループは、筋肉もわりと減ってるところがちょっと気になる感じっすね。特に4:3断食では筋肉量も多めに減っており、これは「筋トレを併用していなかった」ことが大きいのかなーという印象ですね。やはり食事制限だけでは筋肉は守れないという当たり前の教訓が、ここでも再確認された感じじゃないかと。

 

 

運動量に差はないので、食事が勝負を決めたっぽい

もう一つ興味深いのは、両グループで運動量に差がなかった点ですね。すべての参加者がアクティビティトラッカーを装着していたんですが、中~高強度の運動量に有意差はなかったんですよ。

 

ということは、「どれだけ動いたか」ではなく、「どれだけ食事制限を守れたか」の違いが、ダイエット効果の勝敗を分けたってことになりましょう。実際、脱落率のデータを見てみますと、

 

  • 4:3断食:19%
  • カロリー制限:30%

 

って感じになってまして、断食グループの方がダイエットを続けやすかったことが示されているわけです。

 

プチ断食のほうが有利だった理由は、おそらく以下のような“心理的コストの分散”にあるのだと考えられております。

 

  • 毎日制限する必要がない(週3日だけ頑張ればOK)
  • カロリーカウントが週3日だけで済む
  • 自分で制限日を選べる(柔軟性が高い)

 

つまり、「ちょっときつい日」と「何を食べてもいい日」が混在していることで、リズムのある生活設計が可能になるってことですな。

 

一方、カロリー制限のように「毎日ちょっとだけ我慢する」スタイルは、一見マイルドに見えて、実は地味にストレスが蓄積しやすいので、結果として長期的に見て脱落率が高くなる傾向があるんでしょう。

 

 

他の研究とどう違うの?

というと、少し詳しい方だと「でも、プチ断食が微妙だって話もなかったっけ?」と思うかもしれません。実はそれも事実でして、たとえば、

 

  • 5:2ダイエット(週2日制限)を調べた長期研究では、カロリー制限とほとんど差が出なかった(R)

 

  • ADF(1日おき断食)の研究では、むしろ断食の方が脱落率が高かった(R)

 

  • 腎臓病患者を対象とした別研究では、カロリー制限の方が効果的で、空腹感も少なかった(R)

 

みたいな結果も報告されてたりするんですよ。こうしたバラつきの理由としては、

 

  • 断食スタイルの自由度(柔軟性)が違う

 

  • 研究参加者の健康状態や性格特性が違う

 

  • 食事日にも厳密な制限が課されていたケースがある

 

などが挙げられまして、つまり「断食は一枚岩ではない」ってことになるでしょうな。自由に調整できる断食ほど成功率が高く、固定された断食ルールは破綻しやすいって印象でしょうか。

 

なので、この研究から得られる教訓はいつもどおりでして、

 

  • 自分が一番ストレスなく続けられる方法こそが“正解”

 

ってことになりましょう。今回の研究は、4:3断食がハマる人にとってはかなり有効だって事実を示したにすぎず、逆に空腹感が苦手な人や、日程のコントロールが難しい人には、カロリー制限の方が安心かもしれませんしね。

 

そこでざっくりガイドラインを考えてみると、

 

  • 計画性はあるが面倒くさがりなら「4:3断食」がよさげ
  • 空腹がつらいタイプなら、常に少しずつ食べられるカロリー制限のほうが良いかもしれない
  • 食事制限を短期間に集中したいなら、なんらかの断食系を使うほうがメリハリが効いて続けやすいはず

 

みたいになるんじゃないでしょうか。「断食」って聞くと修行のような印象を持つかもしれませんが、うまく設計すればむしろラクになる習慣なんじゃないかと思う次第です。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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