牛乳でがんになるってホント?#3 男性編
基礎編、女性編と見てきた「牛乳はがんになるのか?」シリーズ、今回は男性編です。
#1 前立腺がんと牛乳
「牛乳を飲むと前立腺がんになる!」って話もよく聞くところ。牛乳タンパク質には、がんの成長を促進する成分(IGF-1)を分泌させる働きがあるんだって説ですね。
IGF-1は成長ホルモンの働きに関わってるんで、こいつが無いと細胞の代謝や筋肉の成長が止まっちゃう。その意味ではアンチエイジングに欠かせない要素なんですが、細胞の活動を刺激する作用が大きいため、がん細胞の成長を促進するかもしんないんですね。悩ましいですなぁ。
で、前立腺がんに関しては、牛乳はかなりクロです。
- 3,612名の男性を10年にわたって追跡調査したところ、週に21杯の牛乳を飲む人は、週5杯の牛乳を飲む人よりも前立腺がんの発症リスクが2.2倍になった。(2005年,1)
- 13件の症例研究をメタ解析したところ、牛乳を飲む量が多い人は前立腺がんリスクが1.68倍になった。(2007年,2)
- 32件の観察研究をメタ解析したところ、牛乳を1日に200gの牛乳を飲む人は前立腺がんの確率が上がった。(2015年,3)
って感じで、信頼性の高い研究のほとんどが「牛乳は前立腺リスクを高める!」って結論になってるんですね。
しかも、2007年にアイスランドで行われた研究(4)だと、10代のころに牛乳をよく飲んでいた人は、大人になってから前立腺がんにかかる確率が3.2倍になるとか。小学生のころに大量の牛乳を飲んでたわたしは涙目です。今後は気をつけないと…。
こういった影響が出る理由としては、
- カルシウム:昔からカルシウムと前立腺がんを結びつけた研究は多め(5)。ただし否定意見も多い。
- IGF-1:成長ホルモンに関わる物質で、いまのところ一番有力な説。ただし「IGF-1が増えてがんになるんじゃなくて、がんのせいでIGF-1が増えるんじゃない?」って説(6,7)もあったり。
- エストロゲン:一部の研究者からは「女性ホルモンこそがんの原因!」って説も(8)。
あたりが有力視されております。といっても、それぞれに反対意見もあるんで、まだ確定じゃないのが難しいところ。なんせ牛乳は活性が高い成分が多い飲み物なんで、原因を特定するのが超難しいんですよね。
いずれにせよ、牛乳が前立腺がんの原因になる確率は高め。まだ「どれだけ飲むとヤバいの?」って疑問については明らかじゃありませんが、男性は1日に1杯ぐらいにしとくのが無難っぽい。
まとめ
そんなわけで、牛乳とがんの関係をまとめておくと、
- 大腸がんには予防の効果がある
- 胃がんも問題なし。予防の効果もややあり
- 乳がんも問題なし。予防の効果もありそう
- 子宮がんのリスクは高まる可能性あり
- 前立腺がんのリスクには要注意
みたいな感じ。どうも牛乳にはがんを予防する成分と促進する成分の両方が入っていて、つねに綱引きをしてる状態のよなんですな。
このデータをもとに「もう牛乳は飲まない!」と判断するのもひとつの見識ではありましょう。もっとも、いっぽうでは乳製品にはメリットが多いのも確かなんで、完全に捨て去るのももったいないかも。なかでもヨーグルトは全体的にがんリスクが低めなんで、そんなに心配しなくてよいかと思われます。
乳製品が好きでしかたない人に関しては、野菜やフルーツをたくさん摂って、がんのリスクを低める対策をしとくのが基本でしょうねぇ。