失恋の痛みを乗り越える最強テク「セルフコンセプトリカバリー」
失恋の痛みを乗り越えるベストな方法は?
ちょっと珍しいご質問をいただきました。
都内の大学4年生です.いつも面白い記事をありがとうございます.
実は僕,昨日初めてできた彼女に振られてしまいました.1年半くらい付き合っていました.今絶賛ヘコみ中です.
どうやったらこの状態から抜け出せるのか,友達に聞いたりネットで調べたりしているのですが,色々あってどれがベストなんだか分からなくなってしまいます.
とのこと。うーん、心中お察しいたします。
というわけで失恋の話ですが、私も上から目線でアドバイスできるほどの経験値はないので(笑)、ここは科学の力を借りていきましょう。実は、失恋に関する研究って意外と多いんですよ。
別れた相手のことを思い出すほど失恋の痛みはやわらぐ
で、いまんとこ最も参考になるのは、2015年にノースウエスタン大学から出た論文(1)でしょう。失恋したばかりの若い男女210人を対象にした、おもしろい研究であります。
この実験では、参加者を以下の2グループにわけたんですね。
- 定期的に実験室を訪れて、「元カノ(元カレ)とどんな別れ方をしたのか」「なにが原因だったのか」などを細かく研究者に説明する
- 数回の心理テストを受けるだけ
そして9週間後に全員のメンタルヘルスをチェックしたところ、
- 元カノ(元カレ)について詳しく説明した参加者のほうが、格段に失恋の痛みから復帰しやすかった!
って結果だったんですな。つまり、失恋の痛みから目をそらして気晴らしをするよりも、あえて別れた相手のことを考え抜いたほうがいいんだ、と。おもしろいですねぇ。
失恋はアイデンティティの問題である
研究者いわく、
普通に考えれば、失恋した参加者に対して、元カノ(元カレ)のことを何度も思い出させるのは良くないことのように思える。しかし、実際は逆なのだ。
とのこと。さらに、失恋の痛みが起きる原因については、
恋愛関係が終わると、たいていの人は「自分が何者なのか」の感覚が揺らいでしまう。「あいつの彼氏(彼女)ではない自分とは何者なのか?」という問いかけが生まれるのだ。
ってことだそうな。どういうことかというと、
- 恋愛中は「彼女(彼氏)がいる自分」として自己を設定している
- 相手と別れると、自己の設定が崩れ去る
- 自己が崩壊してパニック!
みたいな話です。簡単に失恋といっても、実際はアイデンティティに関わる問題なわけですな。
新たなセルフイメージを作り出すのが失恋克服のポイント
では、なぜ失恋の説明をした参加者ほどメンタルが安定したかというと、
おそらく、実験室でさまざまな質問に答えるうちに、参加者たちのなかに新たな自己が構築されたのだろう。
とのこと。失恋の状況を細かく詰めていくことで、逆に「独り者」としての新たなセルフイメージが作られたわけですね。
これは専門的には「セルフコンセプトリカバリー」って概念でして、2011年の研究(2)でも「失恋後は自己の概念を作り変えるのが大事!」って結果が出ております。現時点では、このへんが科学のコンセンサスでしょうね。
まとめ
最後に、セルフコンセプトリカバリーの具体的な取り組みとしては、
- 信頼できる友だちに協力を頼む
- 友だちから「別れたときの状況」「別れた理由」「そのときの自分の心理」などをガンガンに質問してもらう
って感じになると思います。自問自答しても構いませんけど、他人に話したほうがリカバリーの効率は上がるはず。ぜひお試しください。
ちなみに、 2008年のノースウエスタン大学論文(3)によれば、
- たいていの人は失恋の痛みがやわらぐまで20週間はかかると予測した
- しかし、実際はほとんどが10週間でメンタルが回復した
とのこと。どうやら人間の心には、失恋の痛みを過剰に見積もるバイアスがありそうですね。
このあたりの知識も頭に入れておくと、さらに現状をしのぎやすくなるんじゃないでしょうか。健闘をお祈りしています。