実は意志力って無限のリソースなのかもしれないぞ |「意志力3.0」 #2
結局、意志力ってなんなの?
「これからの意志力について考える」シリーズの続きです。前回は「意志力を使うと消耗するって説は間違いかもよ」って話でしたが、そこで気になるのが「じゃあ意志力ってなんなのよ?」って問題であります。
かの有名な「マシュマロ実験」でも「自制心が強いほうが人生は上手くいく」って結果が出ているように、セルフコントロールが重要な要素なのは間違いないところ。もし意志力を使っても消耗しないなら、自制心がある人とない人の違いはどこにあるのか、と。
ってことで、まず参考になるのは2013年の論文(1)でしょう。これは「マインドセット」で有名なキャロル・ドゥエック博士が手がけた実験で、「意志力の消耗説」に正面から物を申す内容になっております。
意志力低減=プラシーボ仮説
ここでは3パターンの実験が行われてまして、
- いったん参加者(87人)に食事をガマンしてもらったうえで、全員のセルフコントロール度をチェック。その後で、半分には砂糖入りのドリンクをわたし、残り半分に人工甘味料が入ったドリンクをわたして、脳の活動と意志力の変化をみる。
- 参加者の半分に「意志力は使うほどすり減っていく」と教えたうえで、上と同じ実験をくり返す。
- 基本的には1番めの実験と同じだが、ドリンクが「砂糖入り」か「人工甘味料入り」かを隠す。
みたいな感じ。要するに、この実験で何を調べたかというと、
- 「意志力を使うと消耗する」って説を知らない人が、意志力を使ったらどうなるか?
- 糖分を追加すると意志力は復活するのか?
の2点であります。ドゥエック博士は、「意志力の消耗ってプラシーボ効果なんじゃないの?」と考えたわけですね。
意志力の消耗ってたんなる思い込み?
で、結果はドゥエック博士の読み通り。
- 「意志力は使うと消耗する」と思っていた人は意志力が低下し、砂糖水を飲んだら復活した
- 「意志力は使うと消耗する」と思っていない人は意志力に変化なし。糖分を飲もうが意志力に変化はなかった
みたいな結果だったんですね。つまり「意志力を使うと減る」ってのは、たんなる思い込みである可能性が出てきたわけですな。
このあたりは過去の実験とも呼応するとこで、2014年にも「実は糖分を摂らなくても、砂糖で口をゆすぐだけでも意志力が復帰した」なんて報告があったり、2015年には「血糖値と意志力は無関係」ってメタ分析が出てたり。
意志力は無限のリソースかも
もちろん、これだけで「意志力の消耗は思い込みだ!」とは言えないものの、傍証にはなりましょう。とりあえず、ここでは「意志力は限りある資源だ!」って考え方が、意外とモチベーションの足かせになってるかもしんないよーってとこを押さえておけば十分です。
また、この説は、裏を返せば「やっぱり意志力は無限のリソースだった!(のかも)」ってことでもありますからね。「自分は自制心がなくて…」とお悩みの方には、希望がある話じゃないでしょうか。
そして、まだまだ話は続く…
さて、もし意志力が無限だったとしても、私たちが日常的に自制心の変動を実感しているのは確かでしょう。たんに「意志力は減らない!」と自分に言い聞かせたところで、すぐにセルフコントロールが上手くなるとは思えないはず。
というわけで、 次回では「意志力ってなんなの?」問題に関する別のモデルについて考えてみます。で、そこから「何が最強のセルフコントロール術なのか?」ってとこまで行ければ行きたい(希望)。