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「おこげを食べると癌になる!」はどこまで本当なのか?

Toast

 

おこげを食べると癌になる?

おこげと発がん性に関するご質問をいただきました。

 

おこげで癌になるという話についてはどうお考えでしょうか?トーストを焼いた時のコゲで癌がデキやすくなるというのですが。ネットで調べても、「バケツ一杯のコゲを食べないと癌にはならない」や「ポテトチップスは危険」などのページが出てきてよくわからなくなりました。

 

とのこと。昔から「焼き魚のコゲは癌になる!」とか言われてきましたけど、この説は正しいのか、と。

 

 

で、結論から言いますと、質問者さんがおっしゃる「よくわからなくなりました」って感想が正しいです。なにせ現段階のデータでは、誰もハッキリとしたことは言えないはずなんですよ。

 

 



噂の出本はマウス実験

そもそも「おこげで癌になる!」って説は、でんぷんを高温で調理したときにアクリルアミドって物質が発生するから。こいつは神経毒性がある物質なんで、体に悪いのは間違いないんですよ。

 

 

最初に「おこげはヤバい!」と言い出したのはスウェーデンの2002年論文(1)で、マウスにポテチを食べさせたところ、発がんリスクが急上昇したんだそうな。

 

 

が、これはあくまで大量のアクリルアミドを使った実験なので、どこまでヒトに当てはまるのかは全く不明。おそらく、ネットで見かける「バケツ一杯のコゲを食べないと癌にはならない」って話も、マウス実験のデータをベースにしてるのではないかと(ここは未確認)。

 

 

系統的レビューでは「意外と安全っぽい」

では、ヒトを対象にした研究はどうかといえば、幸いにも2014年に系統的レビュー(2)が出ております。これは過去に出た10件の観察研究をまとめたもので、科学的な信頼性はそこそこ。その結論をざっくり並べていくと、

 

  • 多くの研究では、食事によるアクリルアミドの摂取と発がん性にはハッキリした関係がない
  • アクリルアミドと発がん性を示したデータのほうが格段に少ない
  • ただし、多くの研究はアクリルアミドの摂取量の基準があいまいなんだよなぁ…。困っちゃうなぁ…。

 

みたいな感じです。全体的にみれば「アクリルアミドは安全!」って説のほうが優勢なんだけど、そもそもデータの採取基準がゆるいからハッキリ言えない感じなんですよね。

 

 

以上の結果をふまえて、国際がん研究機関 (IARC) は、アクリルアミドの発がん性を「グループ2A」に分類しております(3)。これは「証拠はハッキリしないけど、とりあえず摂取量は少なめにしといたほうがいいよ」ぐらいの意味で、同じグループには紫外線やホットドリンク(65℃以上)なんかもふくまれてたり。

 

 

まとめ

そんなわけで、あとはご自分のリスク評価とライフスタイルの問題でしょうね。「少しでもリスクは嫌だ!」って方は完全に遠ざければいいでしょうし、「トーストが大好きで…」という方は焼きすぎに気をつけて食べればいいでしょうし。

 

 

ちなみに私の場合、基本は低温調理がメインなので、あんまコゲは摂取しない生活を送っております。が、実はコーヒーにもアクリルアミドは入ってますんで、完全には食事から排除できない感じ。まぁこれぐらいなら何の問題もないかなー、と。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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