瞑想で「タフな心」を育てるまでには何時間かかるの?
ウェルビーイングを育てるには?
「ウェルビーイングは作れる!」って動画(1)がおもしろかったんでメモ。瞑想の脳研究で有名なリチャード・デビッドソン博士の、短いスピーチであります。
ウェルビーイングってのは「幸せな状態」のことなんですが、日本語でいう「幸福」よりもニュアンスの幅が広い概念だったりします。「人生満足尺度」でおなじみなエド・ディーナー博士の定義(2)でいうと、
長期にわたる快感情、不快感情のなさ、人生満足感のレベルから構成される
みたいな感じ。当然、肉体の健康もここにはふくまれております。
瞑想エキスパートの脳はどうなってる?
で、ここでデビッドソン博士が強調するポイントは、
- レジリエンス(柔軟性のある心)
- ポジティブな態度
- 注意力
- 親切心
の4つ。これらの改善法についてはデビッドソン博士の著書(「心を整えれば、シンプルに生きられる」)を参考にしていただくとして、個人的にビビったのは、博士がレジリエンスついて調査した2013年の論文(2)であります。このなかで博士は、通算10,000時間以上の瞑想トレーニングを積んできた達人を集めて、全員の脳をfMRIにかけたんだそうな。
いちおうおさらいしておくと、レジリエンスは「ストレスから復帰する能力」みたいな概念です。レジリエンスが強い人ほど逆境に強く、ツラいことがあってもすぐベースラインに復帰できるんですな。
瞑想エキスパートは痛みを味わっている
さて、実験でわかったことは、
- 瞑想の初心者もエキスパートも、「痛み」の強さは同じように感じている
- ただし瞑想のエキスパートは、同じ痛みを「不快」に感じるレベルが低い
- この違いは、瞑想により脳の顕著性ネットワークと扁桃体が変化したことが大きいっぽい
みたいな感じ。瞑想のプロでも痛みを感じないわけではなく、その痛みを「不快なもの」として処理してないんだ、と。
ちなみに、顕著性ネットワークは「注意をどこに向けるか?」に関わるエリアで、扁桃体はおもに感情に関わるエリア。つまり、瞑想の達人は「痛み」にはハッキリと注意を向けているんだけど、その刺激に反応してネガティブな感情が起きにくいわけですな。よくマインドフルネス瞑想で「不快な感情を避けずにじっくり味わう」みたいな表現をしますけど、このシステムにかなり近い印象っすね。
瞑想でレジリエンスが育つには6,000時間が必要?
では、瞑想で脳のレジリエンス機能が変わるには、どれぐらいかかるかというと、
現時点でのデータによれば、瞑想がレジリエンスに影響を与えるにはかなりの時間が必要だ。おそらく、レジリエンスに変化を起こすためには、6,000〜7,000時間の継続的なトレーニングが必要だろう。
つまり、レジリエンスの変化はすぐに起きるようなものではない。しかし、この事実は、瞑想トレーニングを続けるためのモチベーションになるだろう。
とのこと。6,000時間ってのはなかなか果てしないですねー。もし1日1時間ずつの瞑想をしたとしても、レジリエンスが変わるまで16年ちょい!うわー。
もっとも、デビッドソン博士の実験はまだ初歩的なものなので、この数値がどれだけ信頼できるかは不明。もっと長い可能性もあるかもです。
まとめ
というわけで、瞑想でタフな心を作るのは思いのほか大変なのかも。ただし、現時点で最新のメタ分析だと、とりあえず8週間のトレーニングで不安や鬱は減る可能性が高いんで、ネガティブ思考な人にはオススメできそうに思います。