糖質を制限しまくると頭が良くなる!という話はどこまで正しいのか?問題
世の中には「スーパー糖質制限が脳にいい!」みたいな主張があるわけです。代表的なのは「HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術」などで、ざっくりどんな話かと言いますと、
- 糖質を限界までひかえると体内にケトン体ができる
- ケトン体は脳のエネルギーとして優秀である
- ゆえに、スーパー糖質制限で頭が良くなる!
みたいな流れです。わりと日本でもよく聞く話で、一部のお医者さんなんかが主張してますね。
では、この話って正しいの?ということで、そのへんを調べてくれた研究(R)が出ておりました。
これは11人の健康な男女(うち女性が10人)を対象にしたもので、参加者の年齢は30 ± 9歳でBMIが24 ± 3って感じになってます。どんなデザインだったかと言いますと、
- 全体を「スーパー糖質制限食」と「普通食」の2グループに分けて、3週間ほど続けてもらう
- 1週間お休みの期間を作る
- 前回に「スーパー糖質制限食」をした人は「普通食」にチェンジ、前回に「普通食」をした人は「スーパー糖質制限食」にチェンジして再び3週間ほど続けてもらう
って感じです。ランダム化のクロスオーバー試験ですな。
それぞれの食事法の三大栄養素は、以下のようなバランスになってます。
- スーパー糖質制限=糖質15%, 脂質60% , タンパク質 25%
- 普通食=糖質55%, 脂質20% , タンパク質 25%
もちろん両グループのカロリーは統一するように指導(自己申告制なんでデータの質はゆるいですが)。ケトン体レベルは1日おきにチェックして、β-ヒドロキシ酪酸が 0.4 mmol/L以上をキープするようにチェックしたとのこと。一部にゆるいとこはありつつも、悪くない実験じゃないでしょうか。
で、それぞれの期間中に参加者のワーキングメモリ、長期記憶、視覚的注意、実行機能といった脳の大事な働きをチェックしたところ、結果はこうなりました。
- スーパー糖質制限をやっても脳機能にはなんの違いもなし!
- というか、スーパー糖質制限で視覚的注意の処理スピードが下がる傾向が見られた (p=0.03)
だったそうで、どうもケトン体が増えたからといって脳の働きがよくなるわけじゃないみたい。
また、この研究では同時に「日中の気分」や「朝の集中力」といった能力の変化も測ってるんですけど、やはりこちらも変化なしとのこと。一部には「スーパー糖質制限でメンタルが改善する!」みたいな主張もあるものの、これまた不利な結果になってますね。
もっとも、このデータにはケチをつけやすいとこも多くて、
- サンプル数が少なしほとんと女性だ!
- 糖質15%ではまだ糖質量が多い!
- 3週間の介入は短い!
といったあたりは不確定要素として押さえておきたいところです。その点でまだ「ケトン体で頭が良くなるの?」問題に決着がついたわけじゃないんですが、個人的には「別に無理してやんなくてもいいかな……」ぐらいの気持ちでおります。