今週半ばの小ネタ:好きな悪役、恋愛関係とハグ、わがままな性格が治らない理由
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
好きな悪役を聞けばその人がわかるかもよーという実験
「好きな悪役を聞けばその人がわかるかも!」みたいなデータ(R)が出ておりました。ジョーカーとかダースベイダーみたいにフィクションに出てくる悪役の好みは、当人のセルフイメージを反映してるんじゃないか?という話であります。
これはノースウエスタン大学などの研究で、キャラクツアーっていう有名なエンタメサイト(R)に登録している約232,500人のデータを使ったものです。このサイトは映画やアニメのキャラクターを中心にしたサイトで、ユーザーは性格テストを受けた上で「自分によく似たキャラは誰?」ってのを教えてくれるんですよ。自分でもやってみたら、「恋人たちの予感」のメグ・ライアンに一番似ていると言われて、全然ピンと来ませんでしたが。
で、このサイトでは「ユーザーの性格がどの悪役に似てるか?」も判定してくれまして、マレフィセントやヴォルデモートと自分の類似レベルを%で表示してくれたりします。このデータを使って研究チームが何を調べたかというと、
- 多くの人は自分によく似ている悪役を好きになるのでは?
ってポイントです。人間が自分に似た相手を好むのは世界中で認められる現象ですが、それはフィクションの悪役にも当てはまるのではないかと考えたわけですね。
すると、分析の結果はチームの読みどおりでして、
- たいていのユーザーは、自分に似ている(と自分で思っている)キャラクターを好んだ
- 悪役ほど自分に似たキャラを好む傾向は強くなった
だったらしい。ヒーローだろうが悪役だろうが、とにかく人間は自分に似ているキャラを好きになるみたいっすな。
チームいわく、
例えば、自分のことをトリッキーでカオスな性格だと考える人は、バットマンのジョーカーに惹かれるかもしれないし、自分を知性的で野心家だと思う人はヴォルデモート卿を好きになるかもしれない。
今回の研究によると、フィクションの世界は、私たちに似た悪役と自分自身を比べるための 『安全な避難所』を提供しているのだろう。
とのこと。要するに、人間は自分の性格のダークサイドも知りたいと思っているんだけど、例えば現実に存在する殺人鬼などと比べちゃうとセルフイメージを損なう可能性があるから、フィクションの悪役に対して安心して自己を投影するんだ、と。
人間は誰しも自分自身を肯定的に見たいと思っているため、自分の性格が悪人に似ていると不愉快になってしまうことがある。しかし、架空の悪人であればその不快感は発生しない。
人が自分に似た悪役を好むのは、安全に自らのダークサイドを掘り下げられるからじゃないの?ってことですね。なので、相手に「好きな悪役とかいる?」と尋ねてみると、その人が持つセルフイメージを理解しやすくなるかもしれませんねー。ちなみに、私が好きな悪役は「レオン」のゲイリー・オールドマンです(笑
恋愛関係を改善したきゃハグしとけ!という実験
「恋愛関係を改善したきゃハグだ!」って研究(R)が出ておりました。こちらは184組のカップルを対象にしたテストで、「ふたりの関係性はいいですかー?」や「どれだけスキンシップしてますかー?」みたいな質問を投げかけまくったうえで、「パートナーと仲が良い男女はなにが違うのか?」ってのを調べたんだそうな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 性的でないスキンシップ(特にハグ)の回数が多いカップルほど、自分たちの関係に満足していた
- 男性は日常的なスキンシップの多さが、人間関係の満足感の上昇と強く相関していた
- 女性は日常的なスキンシップ少なさが、人間関係の満足感の低下と強く相関していた
みたいになってます。男性はスキンシップの存在に強く反応し、女性はスキンシップの不在に強く反応するってあたりがちょっとおもしろいですね。
研究チームいわく、
興味深いことに、口論の最中にパートナーの手を握ると、議論がエスカレートせず生産的になるというエビデンスもある。ストレスを減らす方法としてスキンシップが有効な証拠は非常に多い。
とのこと。もちろん人によっては触覚が鋭敏なケースもあるので万人に当てはまるもんではないですが(自閉症の方とかね)、基本的な人間関係の改善法として覚えておくと良いのではないでしょうか。
わがままな人のわがままが治らない理由とは?
「わがままな人は自分を正しく認識できない!」って研究(R)が出ておりました。チューリッヒ大学などのチームによるもので、3,190人を対象に5つの実験を行い、「つねに『わがままな人』は他の人とどう違うのか?」を確かめてくれております。
どんな実験だったかというと、
- 参加者にお金をわして「この中からボランティアに寄付する額を決めてください。残ったお金は自分のものにしてOKです」と伝える
- その後、みんなに「いくら寄付したかを思い出してください。正確な金額を思い出せたら追加でお金をあげますよ」と指示する
みたいになってます。すると、事前の正確テストで「利己的だ」と判断された人ほど、実際の金額よりも「俺はたくさんお金を寄付した!」と答えたんだそうな。金銭的なインセンティブがあったにもかかわらず、わがままな人は自分の行動をゆがめて報告したわけですね。
その他の実験も似たようなもので、参加者に「みんなでお金を公平に分けてください」と指示した場合も、やはり利己的な人ほど「俺は寛大な行動をとった!」と思い込んでいたそうな。要するに、わがままな人たちは自分のわがままな行動をすぐに忘れちゃうってことっすね。
チームいわく、
本当は良くないと自分でも思っているような行動をするとき、道徳的なセルフイメージを守るためには自己の行動を忘れてしまうのが手っ取り早い。
ほとんどの人は倫理的に行動しようと努力するため、間違った行動を取ってしまうと、道徳的なセルフイメージを保存したい欲求が強くなる。この欲求が私たちの非倫理的な行動を合理化するだけでなく、記憶すら修正するモチベーションとして働くのだ。
ってことで、わがままな人ってのは、セルフイメージを守るために記憶を改ざんしちゃってるんだ、と。こりゃあ自分が利己的な行動をしてないかどうか、定期的に他人に尋ねてみるしかなさそうですな‥…。