筋トレの小ネタ:速筋と遅筋の疲れやすさ、ロイシン増量で筋肉は増える?、睡眠不足と筋肉ダメージ
筋トレに役立ちそうな細かいデータがいろいろ出てたんで、ひとつのエントリとしてまとめておきます。
速筋と遅筋はどれぐらい疲れの回復しやすさが違うのか?問題
筋肉には2つの種類があって、
- 遅筋=パワーはないが疲労に強い
- 速筋=パワーはあるが疲れやすい
みたいに分かれるのはご存じのとおり。当然マラソンなどでは遅筋が多いほうが有利なわけですが、まだよくわかってなかったのが「具体的な2つの筋肉の回復どの違いは?」みたいな疑問です。速筋をたくさん持ってる人は、遅筋が多い人と比べたら、どんぐらい回復に時間がかかるの?という観点ですね。
というわけで新たな研究(R)では、20人の若い男性を対象に、速筋と遅筋の割合がトレーニングの回復度にあたえる影響について調べてくれておりました。参加者を集めるにあたっては、半数が速筋の割合が平均以上で、残り半数は遅筋の割合が平均以上になるように調整したとのこと。
その上で、どんなチェックをしたかと言いますと、
- みんなに30秒の全力サイクリングを3セットやってもらう
- 10, 20, 30, 50, 80, 120, 300分ごとに太ももの筋肉の疲れをチェック
みたいになってます。無酸素性で負荷が高い運動をしたあと、速筋と遅筋でどれぐらい回復に違いがあるかを調べたわけっすな。
すると、結果はおもしろい違いが出てまして、
- 全力サイクリングの成績そのものは両グループで変わりがない
- が、遅筋が多い人はサイクリングから20分でパワーが回復したのに対して、速筋が多い人は5時間後もパワーの低下がみられた
だったそうです。速筋が多い人は出だしの爆発力こそ大きいものの、その代わりに疲労がかなり回復しづらいみたい。20分と5時間ってのは結構な違いでして、これを見ると速筋が多い人ほど回復には気を配った方がいいのかもですねぇ。
ちなみに、現時点でちゃんと自分の筋肉の割合を知ろうと思ったら結構大変なんですけど、いちおう1989年に「ざっくりと速筋と遅筋の量を推定する方法」を筑波大学などの先生方が示してくださってますんで、気になる方はお試しください(R)。
実践の方法としては、以下のようになります。
- 50m走を全力で走ってタイムを測る
- 12分間走をやって走れた距離を測る
- ステップ1と2の平均速度を出す。50m走の平均速度は「50÷50m走のタイム」で求め、12分走の平均速度は「走れた距離(m)÷720」で求める
- 「1の平均速度÷2の平均速度」を出す
- 結果を下の表と照らし合わせる
数値 速筋の割合
1.2 24%
1.3 30%
1.4 38%
1.5 45%
1.6 52%
1.7 59%
1.8 66%
1.9 73%
2.0 80%
2.1 87%
2.2 94%
ちなみに私はそこそこ速筋が多い人間でして、66%が速筋みたい。確かに回復まで時間がかかるもんなぁ……。
筋肉に必須のアミノ酸「ロイシン」を増量したら筋トレの効果は上がるか?
筋肉を育てるのにもっとも大事なアミノ酸と言われるのが「ロイシン」。もちろん他のアミノ酸も大事なんだけど、ロイシンの量が足りないとなかなか筋肉のタンパク質合成は進まないと考えられております。
となると、「普段の暮らしにロイシンを増量したら筋肉がもっと増えるんじゃないの?」思うのは自然な話で、そこらへんを調べたデータ(R)が出ておりました。
これは、筋トレが好きな25人の男性を対象にしたテストで、どんな実験だったかと言いますと、
- みんなには体重1kgあたり1.8gのタンパク質を取ってもらう
- ロイシンを1日10g飲むグループと、1日10gのアラニンを飲むグループに分ける
- そのまま週2の筋トレ(下半身中心)をしてもらい、12週間後の違いを見る
って感じです。ロイシンについて調べて研究は1日に1〜5gを使うケースが多いんで、1日10gってのはかなりの量ですね。
そこでどのような違いが出たのかと言いますと、
- 特に両グループで筋肉量や筋力の上昇に違いはなし!
だったそうです。まぁ十分なレベルのタンパク質(体重1kgあたり1.8g)を取ってる限りは、いくら追加でロイシンを飲んでも意味がないのかもしれませんね。とりあえず、現時点では普通にプロテインを飲んでれば良さそうであります。
寝不足で筋肉は落ちる!しかし運動で食い止められる!……かも
寝不足が良くないのは言わずもがなで、「睡眠が足りないと18日で1kg太る」なんて報告もあるぐらい。でもってさらに新しい研究(R)では、「寝不足でどれぐらい筋肉は減るのか?」って問題を調べてくれておりました。
こちらはどんな実験だったのかと言いますと、24人の男性を集めて以下の3つの状況に置いたらしい。
- いつもどおり1日8時間眠る
- 1日4時間しか眠れない
- 1日4時間しか眠れない+高負荷のエクササイズをする
実験期間は4日間で、どれぐらい参加者の筋肉のタンパク質合成(基本的にはこれが多ければ多いほど筋肉は増える)が変わったかをチェックしたそうな。もちろんみんなの摂取カロリーやタンパク質量は同じレベルに備えております(1日に体重1kgあたり1.5g)。
また、ここで使われた高負荷のエクササイズがどんなものだったかというと、
- 60秒だけピークパワーの90%でサイクリング
- 75秒のアクティブリカバリー
- 1〜2のステップを10セット行う
みたいになっていて結構ツラそうな感じですね。睡眠不足の状態でこのトレーニングをするのは嫌だなぁ……。
でもって、結果はこんな感じになりました。
- 4時間睡眠のグループは、他のグループに比べて19%もタンパク質合成が減っていた!
- 8時間睡眠のグループと4時間睡眠+エクササイズグループには、特に違いがなかった
というわけで、やはり睡眠薬不足はかなり筋肉に良くないみたい。いちおう高負荷エクササイズをしてれば食い止められそうな感じもしますが、まぁ個人的には寝不足で運動するのはごめんこうむりたいっすね。
もちろん4日だけの実験じゃ長期的な筋肉量の違いはわからないし、できれば「普通の睡眠+高負荷エクササイズ」のグループも作ってくれるとさらにハッキリした違いが分かったのになーってのもあります。そこらへんがこの研究の限界ではあるものの、とりあえず睡眠不足が筋肉に良くないのは間違いないので、心がけておきたいところですね。