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今週末の小ネタ:人生の悲しみと時間、メンタルヘルスと気温、ソーシャル・ディスタンス無視問題

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

人生の悲しみは時が癒すのか?問題

人生にもっともインパクトがあるライフイベントとは?」って疑問を調べた調査(R)がおもしろかったんでメモ。ライフイベントってのは、「病気になった!」とか「貧乏になった!」とか「結婚した!」とかそういった人生の出来事ですな。

 

 

これはオーストラリアで暮らす約14,000人を12年間にわたって追跡調査したもので、定期的に「どのようなライフイベントが起きたか?」と「そのあとで幸福度はどう変わったか?」ってのをチェックし続けて、2つのデータの相関をみたんだそうな。なかなか壮大な研究でよろしいですなー。

 

 

では、まずここでわかったことをざっと並べてみると、

 

  • 人生の幸福度を下げまくるのは、健康問題、大事な人との死別、大きな経済的損失などだった
  • 人生の幸福度を上げまくるのは、結婚、出産、大きな経済的利益などだった
  • 仕事をクビになったり、逆に仕事で昇進したり、引越ししたりといったイベントは幸福感にあまり影響を与えなかった

 

だったそうです。解雇が幸福度にあんな影響がないってのは意外でしたけど、あとは納得のラインナップって感じじゃないでしょうか。

 

 

ただし、この研究ではもうひとつ興味深い傾向も確認されてまして、

 

  • どんなに悲しい体験をしても、およそ4年で幸福度はもとにもどる
  • どんなに嬉しい体験をしても、およそ2年で幸福度はもとにもどる

 

だったそうな。もともと人間の感情が長続きしないって話は先行研究でも確認されてましたが、良い体験も悪い体験も数年すればベースラインに戻っちゃうみたいっすね。まさに喜びも悲しみも幾歳月と申しますか。

 

 

研究チームいわく、

 

この結果からわかるのは、幸福感を高めるためには、幸福を追うよりもネガティブなショックから身を守ることのほうが大事かもしれないということだ。例えば、良好な人間関係を確立しておいたり、健康に投資したり、金融リスクを管理するといったことだ。

 

また、どんなに最悪の状況からでも私たちの幸福度は回復できるという事実は、多くの人にとって慰めになるだろう。

 

とのこと。「悪は善より強い」ってのは「科学的な適職」にも書いたポイントですけど、やっぱネガティブの方を意識して対処しといたほうが良さげっすねー。

 

 

 

メンタルヘルスを悪化させる天候とは?

気温がメンタルヘルスを左右する!って結論のデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは300万人以上のアメリカ人を対象にした調査で、1993年と2010 年の間に、定期的に「メンタルはどんな感じですか?」と尋ねたうえで、これを気温データの変化と比べたんだそうな。

 

 

そこで何がわかったかと言いますと、

 

  • 気温が15℃より下だと、メンタルが悪化する人は減る
  • 気温が21℃より上だと、メンタルが悪化する人は増える
  • なかでも気温が暑い日が約10 日間以上ぐらい続くと、メンタルは悪化しやすくなる

 

だったそうな。一般的には寒いほうが暗い気持ちになりそうなイメージがありますけど、実際は暑さのほうがメンタルに悪影響をおよぼすのではないか、と。21℃って個人的にはかなり快適な印象なので、これよりちょっと暑いレベルからメンタルヘルスの悪化が増えるってのは驚きですねぇ。

 

 

では、なんでこういうことが起きるのかと言いますと、

 

熱によるストレスは、中枢神経系、循環系、および多くの臓器システムへ広い影響をおよぼす。(中略)気温の上昇にともない、メンタルヘルスの悪化、ネガティブな感情や自殺の増加が報告されている。

 

と推測されておりました。寒さよりも熱のほうがネガティブな反応を引き出しやすいんじゃないか、と。ちなみに、アメリカでは月の平均気温が1℃上昇すると自殺率が0.7%ほど増加する傾向があったそうで、そんなもんなのかなーって感じですね。

 

 

逆に、低い気温がメンタルヘルスと相関する理由としては、

 

気温の低さがメンタルの改善につながるメカニズムは、睡眠の質の向上が原因なのかもしれない。気温が低いと睡眠の質が悪い日が減る可能性があるからだ。

 

みたいな仮説が提唱されてました。あくまで仮説ではありますが、これから暑い季節になりますんで、ちょっと頭の隅に入れておくといいかもしれません。

 

 

 

ソーシャル・ディスタンスを無視する人の特徴とは?

新型コロナを避けるにはソーシャル・ディスタンスが必要なのは間違いないものの、なかにはまったく守らないひともいるわけです。そこで、果たしてソーシャル・ディスタンスを守らない人はどんな性格の持ち主なのか?ってのを調べたデータ(R)が出ておりました。

 

 

これはウィットマン大学などの調査で、3月の下旬ごろに、アメリカに住む502人の男女を調査したもの。全員のパーソナリティを評価したうえで、どのくらいソーシャル・ディスタンスを守ってたかを測定したんだそうな。

 

 

そこでどんな違いが見られたかと言いますと、

 

  • ソーシャル・ディスタンスをガン無視する人は、サイコパスの特徴を持つ率が高かった(神経症傾向、リスクテイクの高さ、意地悪さなど)

 

だったそうな。サイコパスがソーシャル・ディスタンスを守らないのはわかりやすい話ですが、特にこれらの人たちは、他人を威嚇するために公共の場で咳をしたり、つばを吐いたりするんだそうな。うーん、最悪。

 

 

研究チームいわく、

 

サイコパス傾向の点数が高い人たちは、「もし自分がCOVID-19を持っていたら、わざと他人も広めるかもしれない」と主張する傾向もあった。このような人たちはウイルスをことさらに広めており、パンデミックに大きな影響を与えている。

 

ってことで、ソーシャル・ディスタンスを守らないような人との付き合いは、新型コロナがおさまった後も考えた方がいいのかもっすね。

 

 

もっとも、チームはこうも言ってまして、

 

この結果は、無責任で思いやりのない人だけによってウイルスが広まっているという意味ではない。相関関係は小さいことが多いし、科学における性格の定義は日常的な判断に必ず当てはまるわけでもない。

 

とのことなんで、そこらへんはくれぐれもご注意ください。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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